第19話

とりあえず今日も俺はお金を稼ぐ為、いつもの行動をした。毎日同じ人、同じ会話、同じ光景…不思議を通り越して俺は飽き飽きしていた。電車で隣の人の会話で次に言う言葉を先に独り言のように呟いてビックリさせるようなイタズラもした。何で?と驚きの表情をされても俺はノーリアクション「毎日聞いてたら覚えるよ。」とでも言えば納得してくれるのだろうか。そんなことを思いつつ、俺は次の行動に移った。同僚の内山への電話だ。内山は競馬が好きで、よく俺とも予想の話をしていた仲だ。「どしたの山下。急に。何か用?」

「なあ、内山、今日の競馬で俺の予想、100円でも200円でもいいから買わないか?絶対当たるから」

「えっ?そんな銀行レースあったっけ?今日」

「銀行レースじゃないけど、俺には銀行レースかも。自信は100%」

「お前の言い方だと変な馬だろ。何レース?」俺は自信満々にレース名と3連単の買目を告げた。

「はあ?お前、俺に夢を買えと?何の怪しいサイトからの情報?何を根拠に100%?いくら穴党の人間でも、こんな馬券買わないよ。お前、競馬歴長いのにどうしたの?怪しい勧誘でもされた?」内山は呆れを通り越して大爆笑している。

「いや、来るから。来なかったら、缶コーヒー奢るから。100円買ってみてよ」

「お前本気?缶コーヒー奢れよ、絶対」

「絶対って…外れたらね」

「外れるから」

「じゃあ、当たったら半分、半分じゃなくてもいいけど、3割とかちょうだい」

「何それ」

「いいやん、当たったら数百万円だし、こんな馬券一人じゃ買わないだろ?手数料、手数料」

「まあ…本当に当たるならな」

「これ約束ね。缶コーヒーも外れたら奢るから」

こんな調子で俺は手当たり次第、電話で馬券の購入と缶コーヒーの約束を連絡の取れた競馬好きと交わした。これだけでも数百万円の収入が確定したはずだ。そして、これは俺の中での実験でもあった。連中は数時間後に俺に間違いなく連絡をしてくる。「スゲー」って。だか内容は同じではないはず。俺の言った通りに買い、本当に儲けたやつ。儲けたが儲けたと言えば手数料を払わないといけないから買ってないというやつ。馬券を買わずに文句だけ言ってくるやつ等。俺は連中の中で俺に手数料を払うと連絡してきたやつだけをピックアップして、次の日…どうせまた日曜日なんだから…そいつらに連絡を同じようにする。この実験を数日繰り返して手数料を払ってくれる人間を増やしていけば連絡のみで大金を確保できるのだ。そして、その間に違うことに時間を使える。次は何をしようか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リピート アリエス @yukie1224

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ