異世界転生のテンプレで始まるかのように見えたこの物語ですが、転生した主人公は、あっ、と驚くような、絶望的な境遇の幼少期を過ごします。
まだ幼児(記憶や性格はおっさん)の主人公の前に立ちふさがる悪役は、本当に胸糞の悪い悪役で、やりたい放題。
魔物の娘とはいえ、女の子がひどい目にあわされる、えぐい描写も出てきます。
勇者として、スカッと冒険して、魔王を倒して。その為に転生したんじゃなかったの?
どうして、異世界に来てまで、こんなに世界は辛く、主人公は惨めな思いをするの……?
そんなパートが長く続きます。
前世で報われず、自分に自信のない主人公は、この異世界で、もう一人の勇者の劣化扱いされても、歯を食いしばり、頑張ります。
幼少期の「ママと言える存在」との出会い。
少年期の「武器屋の頑固親父(ドワーフ)とその孫娘」との出会い。
そして、人生の救いとなるヒロインとの出会いを経て。
全て、全て、無駄じゃない。
世界の謎。
キーマンとなる、謎の女性、ベノム。
全て伏線を回収し。
物語の最後のほうでは、ダイナミックなバトルと、カタルシスを味わえます。
だから、読んだら、途中でやめないで、ぜひ、最後まで読んで欲しい。
物語の最後のほうで、主人公は、ダイヤモンドのような眩い輝きを見せてくれるから。
転生ものを舐めてたとしか言えないです。
こんなに面白いとは。星3じゃ足りないよ。
以下、ネタバレ回避しつつ書きます。
35歳、辛酸を舐めながら生き抜いた男性が
心の闇や疲労、自己嫌悪を抱えたまま
ルービックキューブのスキル……異世界では魔法の才能となるものを手に転生します。
転生先の環境もまあ半端なく厳しいです。
俗に言う胸糞、鬱展開かも。
でもその中に確かにある人(?)の優しさを頼りに、希望とチャンスを掴み、前世を越えていく様が強く胸を打ちます。
ルービックキューブの完成面数と秒数が魔法の強さに関係するという設定も好きです。
努力すれば上手くなれるかも、だけどかなり難しい、人によっては無理っていうイメージが容易に出来る絶妙さ。
幼少編まで読んだハイテンションをそのままに書き殴っているので、長文駄文失礼しました。
みんな読んでくれ頼む。頼む。(二度目)
シビアでリアルな話が好きな人、濃厚な心理描写を求めてる人、特にオススメです。
現代で無気力に生きていたオッサンがトラックに轢かれた後、女神からチート能力を授かって異世界へと転生します。
導入こそ、よくある異世界転生モノですが、まずこの作品は俺TUEEE系ではありません。
主人公は生前の暮らしが原因で負け犬根性が染み付きメンタルが弱く、与えられたチート能力も実質他の転生者の下位互換(劣化)のようのもの。
それでも、メンタルが弱い彼だからこそ、彼にしかできない他者への関わり方があります。
そんな彼に不思議と周りも惹き付けられていくのです。
また、本作に登場するベノムというエルフが良いキャラをしています。
損得勘定だけで動くようなキャラに見えて、なんだかんだ面倒見の良いお姉さんなのです。