採用試験
「それで? 彼が今回、君がスカウトしてきた子かい?」
「そうだけど、問題でも?」
「いや、無いよ。君が言うんだ、間違いないだろう」
***
「そういうわけで、お前には取締局の採用試験を受けてもらうし」
「そういうわけで、じゃねぇよ!!」
近衛蒼太は現在、両手両足を縛られた状態で正座させられていた。
反省しろと言う少女に言われるがままさせられている。
拘束を解くのは容易い。手足を縛るのは普通のロープ。
だが、すぐ隣には実力未知数の少女が腕組みをしてこちらを見下ろしている。
(逃げられない)
「試験を受けて管理局に入るんだし」
「勝手に決めるな!!」
「じゃあ、元の世界に帰ればいいし」
「それだけは嫌だ」
「だったら私と一緒に仕事するしかないし」
「誰がお前なんかと……」
「お前じゃないし。ユリだし」
こうして僕こと近衛蒼太は異世界転生・転移管理局の採用試験を受けることとなった。
***
試験は地獄であった。
比喩表現などではなく、文字通りの地獄である。
「死ぬ気で防ぐんだし――か~●~は~●~波ッーーー!!」
どこかで見たモーションと聞き覚えのある技。
間一髪と思った瞬間。
「螺旋●!!」
螺旋するチャクラの威力は強大。修得難度A の大技だ。
なんてことを思っていると、つい先程までいた場所は大きく穿たれていた。
「マジかよ……」
技の豊富さはもちろん、その全てが必殺技。
しかも、どこかで見たことあるヤツばかり。
「なかなかやるな。だが、そろそろ死ぬんだし――ア●パ~ンチ!!」
国民的ヒーローは、そんな怖い前置きして必殺パンチを繰り出さねェよ!??
そしてなぜ、微妙に真似ているのだ。
そうこうしている間にも追撃がくる。
「散れ、千●桜」
おい!? 斬●刀はどうしたッ!!??
もう無茶苦茶が過ぎる。
なんだあの女!?
「技ばかりに目を奪われてたら死んじゃうんだし」
肉弾戦ならッ!
「肉弾戦でも結果は同じだし」
こちらの思考を読んでいるかのように、迅速な対応を取る。
「北斗百●拳!!」
ダシダシダシダシ――!!
本家と比べてしまうと、どうしようもなくダサい絶叫とともにラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。
「お前は既に――」
「死んでねぇよ!?」
回避したつもりだが、実はもう死んでしまっているのか?
色々とこんがらがってきた。
「これで終わりだし」
指でピストルの形を作った少女の顔を被った化け物が笑う。
本当に死んでしまう。
瞬間的にそう思った。
「霊●ーーーッ!!」
――ッ!?
もはや懇願だった。
「何でもいいから助けてくれッ!!」
現れ出たのは暗黒物質。
放たれた喰らえば即死の大技を飲み込んでしまった。
「ふーん。まぁ、合格だし」
からくもユリの攻撃を防いだ蒼太は、無事(?)異世界転生・転移管理局の採用試験に合格したのだった。
異世界転生~第2の人生はスタートと同時に詰んでました~ 小暮悠斗 @romance
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