第4話:狂い人
「だ、誰?」
そう思いあたしは警戒しながらその同い年の少女に声をかける。
「それはこっちのセリフよ。あんた、こんなところで何してんの?」
少女はなぜかイライラしながらあたしにそう言った。
「あの、あたし千歳夕茉っていいます。実は…あ、あたし」
「まぁ、聞かなくてもわかるわ」
「え?」
「あんた、現実世界から来た住人でしょ?制服を見れば一発でわかるわよ」
制服で?一瞬あたしは疑問に思ったけどそれはスルーしておこう。
「あっ、自己紹介がまだだったわね。私は、千葉夕雨(せんば ゆう)。よろしく。夕茉だったわね?もう一度質問するけど何でこんなところにいるの?」
あたしは水瀬学園に纏わる都市伝説、『血鏡様』に好奇心を抱きそれを実行してしまったこと。
動くはずのないも鏡に映った自分に引きずり込まれてしまったこと。黒い影たちに襲われそうになり何とか撒けたこと。その全てを話した。
「成程ね、あんた馬鹿なの?好奇心で実行するって…普通の人ならやらないでしょ」
「ごめんなさい…」
「やってしまったことは仕方ないわね…まず黒い影たちに目をつけられたらたまったもんじゃないわ」
「さっきあんたが追いかけていたあいつらは狂い人っていうのよ」
「くるいびと?」
「幸福な世界に連れてってくれることは知っているわね。一応言っとくけどそもそもそんなものないわよ。そんな都合のいい話」
「え、どういうこと?」
夕雨さんの説明からするとこうだ。
狂い人というのはその名の通りこの世界に来た人達はみんな願いを叶えくれると同時に幸福な世界に連れてってくれるという噂をかぎつけ、みんな血鏡様に血液を差し出したらしい。だがそんなものはただの嘘っぱちで血鏡様に血液を差し出すと最初は気分が良くなり才能を差し出され、何でも叶えられるがそれが過ぎると自我を失い狂いだし、例え同胞だろうが生きた人間だろうが人を殺す恐ろしい都市伝説だった。現代で言うところの麻薬みたいなもの。
「な、何で血鏡様はそんな嘘を」
「さぁね、その血鏡がなぜ嘘までついて人間を狂わせたいのか謎だけど」
「さて、あんたはこれからどうすんの?隠れるのも時間の問題だけど?」
そうだ、あの時は逃げるので必死で考えるてなかった…
「ここから脱出する方法を考える…ここで立ち止まってちゃ何も起きないから」
「そう。じゃあ、私も協力するわ」
「え?」
「あんた、見たところ貧弱だろうし頭では理解できないだろうし、一人じゃ何が起こるかわからないでしょ」
夕雨さんは教室から出ると再びあたしの方へと振り向いた。
「それはありがたいんだけど、迷惑になるよ?それに貧弱じゃないし…」
「迷惑かどうか私が決める。協力するの?しないの?」
「…する」
あたしはおずおずと返答した。
「決まりね」
ふわりと夕雨さんはなんだか綺麗に見えた。
こういう風に笑うんだこの人…
そう思うあたしだった
夕暮ノ雨 白咲りんご @OrangeDrop
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