【こもりうたのうた】
牙の横からだらりと垂れる血
よく見るとお腹のあたりも岩で削られたような傷がある。
狼は虫の息で時折ひゅーっと僅かに呼吸の音が聞こえる。
ミゲルは狼をそっと背負い、先ほどまでの焚き火まで戻る。
沸かしたお湯で狼の体を拭き、
魔道書に習い回復魔法を唱えて見る。
少しではあるが傷が癒えたのか
狼の呼吸は先程より整い、険しい表情も和らいだ。
狼に戦争孤児の自分を重ねたのか
ミゲルは狼をほうっておくことが出来なかった。
それに狼の傷は恐らく自然の岩とは考えにくかった。
そっと焚き火にかけておいたスープを飲み、狼の口元にも葉っぱのお皿に入れおいておいた。
ミゲルはそのまま眠りに落ちてしまった。
しばらくして、むくりと狼が目を開け前足で立ち上がろうとする。
目の前にあるスープと人間を交互に見て助けてもらった事を悟り
ちょびちょびとスープを飲む。
毛並みは美しく
白銀の世界白銀の狼。
青い瞳がキラキラと月明かりに光る。
寒そうにしているミゲルを温めるかのように
寄り添う。
疲れが癒え、この人間にお礼を言わねばと考え顔を埋め眠りにつく。
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パチパチと焚火は踊る
火が人を襲うこともなく
くるくると不定期に揺れ踊る
翌日の朝日を浴びる為に
火が踊る事を誰も止めることができない
人間も獣も
火の前には同じ事
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朝、ミゲルは暖かさで心地よい眠りから目がさめる。
倒れていた狼は、温めてくれるように自分の側にいる。
驚いた刹那、愛おしさも押し寄せる。
そっとひとなでした後、朝食作りを始める。
温めたスープにパンを入れる
そこに少しのラクレットチーズをかけ、火に掛け直す。
ゆっくりと目を覚ます狼に気付き、
ミゲルは直ぐに声をかける。
「おはよう、君のおかげでよく眠れたよ。傷は良くなった?」
その優しい声に反応した狼はぐるると喉を震わせながら立ち上がりミゲルを見つめた。
「ありがとう人間。おかげで回復した。」
そうか、と微笑みミゲルは再びスープに目線を落とし狼にまた少し分ける。
「僕はミゲル。さぁこれを食べてもっと元気になって、狼さん」
「私は狼さんではない。エタンセルだ。なぜお前は私を助けた」
「お前じゃないよ、ミゲルだ。助けた理由は自分でもあんまりわからない。ただ、ほっとけなかった。それが理由じゃダメかい?」
その言葉を聞いてエタンセルは目をまん丸くし、よくわからないと言いたげな顔をしてスープに口を付けた。
間も無くしてシトリンたちが数匹、ミゲルとエタンセルを目掛けて槍を投げてきた。
「危ないぞ、ミゲル。しっかりよけろ」
ミゲルはエタンセルの素早さになかなかついていけず、間一髪で相手の攻撃を避けている。
魔道書を開き、呪文を唱えようとするも、シトリンたちに勘付かれ一斉に囲まれてしまった。
ミゲルは腰の短剣を抜き、構えるも
相手はフロゾ族。
岩に短剣を刺すようなものだ。
ジリジリと距離を詰めるシトリンたちに
剣を構えるミゲル。
ガラドルの鎧 こけもも @koke_momo
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