読者は視点人物と同じ視野を持っているわけではない、というのは物語を楽しむ上での大きな要素であることを、この作品を読んで思い出しました。
自分より慌てている人がいると落ち着くことができる、と言うのと似たような話で、自分より偏った視点を持つ人間がいると、どうしても自分が公平中立な視点を持っていると感じてしまうものですが、それと同じくのっけからヒロの話を疑ってかかるハルを見て、さも自分がヒロの理解者であるというような感覚で話を読み進めていました。
思い返すと完全に作者の掌の上ですね。主人公のハルともども、読者の死角にまで回り込むような種明かしがとても良かったです。