第4話白黒

ああ、世界に一人なんだなって。

別に自分自身に特別な何かがあったわけでもない。

それでも一人なんだって。

学校に行って、普通に友達と話して、普通に帰って。

お気に入りの音楽を聴いて、ふと空を見上げると夕焼けで、それが当たり前で、それがなぜか虚無感で。

特別な思いなんてなくて、ただ虚無感につつまれる日々で。


そのうち世界に色がなくなっていくのが見えた気がした。

いじめにあったわけでもない。

それほど疲れているわけでもない。

それでも、誰が何と言おうと白と黒に見えてきた。

だんだん薄くなっていく。

昨日の夕焼けも、あんなに楽しく話していた放課後の教室も、晩御飯も、全部。



あれから5年、社会人として働き始めた。モノクロ生活はもう慣れた。

一つ絶対的は事実としてモノクロになってから本気で、夢中で、物事に取り組めなくなった。

欲しいもの。食べたいもの。やりたいこと。全部。

でも痛いのは、疲れるのは、怒られるのはいやだった。

それが嫌で逃げてばかり、特にやりたいこともないけど、ふとみた映像をおもいだしてこれがやりたいから、とか。

言い訳つけて太くて安全な褪せた人たちしか通ってない道をひたすら。

笑うこともそのうち忘れてこのむこうに消えていくのかなって。

それを仕方ないことだと思って。

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ひとりごと @0818iceA

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