エピローグとプロローグ

 今年こそは、君の手を掴むから。


 今年も花束をあの場所に残してきた私は、小さな願いをペンダントに込め走り出した。

 湿った空気が漂う森を駆け抜け、街を目指す。

 私は君の未来を必ず掴むから。今年こそ、今日こそ。


 たぶん、夏芽くんは私の事恨んでいるだろう。

 それでも私は君を想い、君の願った明日を生き続ける。いつか再会の約束を果たせる奇跡を信じて。

 これは私の贖罪。

 私の自己満足。


 もし会えたなら、いつまでも変わらないこの空を一緒に見上げよう。

 幸せを願い泡になった人魚姫を思い出し、立ち止まってゆっくりと空を仰ぐ。

 虚しいほど寂しい青。冷たい蒼。

 開いた手の隙間から見える空は今日も青かった。

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泡沫の記憶ー泡沫編ー すぐり @cassis_shino

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