24hours
とさか@再開
未来的配達ドローン
ピー。ピピーッ。配達アラート。
《 20分後、配送予定商品入荷です》
《25分後の7:30までにA-1倉庫へ戻ってください》
――――――――――――――――――
はっ?嘘だろ...。
今、配達中だよ!!
絶対間に合わねえよ!!
ここは、ロボットと人間が共存する街。
そして、週休二日制のドローン配達を
ロボットの僕が担当している。
俗に言う、[社畜]だ。
2日の休みはあるものの、あからさまにブラックだ。
ちなみに給料は飛んだ距離に比例する。だからと言って適当に寄り道はできない...。
もし寄り道すると絶対に配送期限に間に合わなくなる。
これは会社の会議によって誕生した、"半日到着プラン"のおかげだ。
ほんとに消えちまえクソ野郎。
このプランは名前の通り、一定の額を払うと半日で到着するシステムだ。
可動範囲は..........ほぼ日本全域。
まったく、この会社は社員を物としか思ってないんだろうな...。
ピー。ピピーッ。
《配送目的地到着しました》
《呼び出します》
ふぅ。やっと目的地についた。
ピンポーン。
「はぁい~」
ガチャ。
「あらありがとうねぇ。こんな所まで」
どうやら80近いおばあちゃんのようだ。
お礼を言われたら、やっぱりこの仕事でよかったんだなぁとも思ったりする。
これが、僕の仕事辞めない理由なのかもなぁ~。
余韻に浸っていた所でまたアラームが鳴る。
ピーッ。ピピーッ。
《あと5分で商品受け取り目安です》
《A-1倉庫に戻ってください》
はいはい。わかってますよ。
うるさいなぁ~。
A-1倉庫に戻るとしますか!
今日は忙しくなりそうだなぁ......。
――――――――――――――――――
7:25
ピー。ピピーッ。
《A-1倉庫に到着しました》
《商品受け取り 2番カウンターです》
急いでA-1倉庫に戻った。
ちなみに倉庫の種類は3種類で
A,B,C倉庫が並んでいる。
Aが長距離配送
Bが中距離配送
Cが短距離配送の倉庫となっている。
おかげさまで僕は今日はAに選ばれました!!
当選詐欺もビックリだね!!
今日だけクーリング・オフさせてくれ...
仕方ないか......。まあ給料上がるし。
話がそれるけど、ロボットも電池が必要だから道路の脇のガソリンスタンドに、電池スタンドがあって、電池に直接充電出来る。
これもハイテクながら、かかった費用が会社へ送信され、すべて会社の費用から引き落とされる。
これもまた1つの......ピー! ピピーッ!!
《商品受け取り急いでください》
ガチャッ。
《到着目安は2時間後、9:30です。》
............。
配達するか....。
――――――――――――――――――
8:30
よし。よしよし!!
もう半分まで来たぞ!!
このまま行けば間に合うぞ!!
あぁ。長距離配送で間に合ったのは
いつぶりだろうか...。間に合わなかったら給料が5分ごとに減り始める。
このシステムにはさすがに笑う......。どうしようもないだろこれ。
しかし今日は間に合いそうだ!
別に給料が減らないのが嬉しい訳ではなく、達成感を味わいたいだけなのだ。
この達成感は、この会社の社員か同様にブラック企業にしか味わえないものであろう。
ブラック企業のメリット発見!!!
ってとこかな。
ピー。ピピーッ。
《この先、航空トラブルのため、一部規制されています。迂回ルート検索中。》
はっ???
いやおいおいおいおい??
ん??
ピー。ピピーッ。
《迂回ルート検索完了、到着予定時間1時間30分です》
――――――――――――――――――
10:00
あはは。
時間通りに間に合わなかったようだ。
あはははははは。
会社へ報告すれば、こういう予期しない事故などの給料減少を止められるが、
達成感というものが、パッと光ってどこかに飛んでいった。
達成感:「じゃあのノシ」
もうすぐ着きそうだし、さっさと渡すか...。
ピー。ピピーッ。
《配送目的地到着しました》
《呼び出します 》
ピンポーン。
ガチャ。
「遅いわよ!!!まったくもう!!!」
「何時間待ったと思ってるのよっ!」
でた...。ガミガミおばさんの登場だ...。
時間より分がいいと思うよ。
0.5時間遅れただけからね。
ピー。ピー。
《大変申し訳ございません。航空トラブルで30分遅れました》
この音声案内はAIが搭載されており、
めんどくさい客の対応などもしてくれる。
これはすごい...。
このBBAとも話す必要は無さそうだな。
「ドローンのレビュー☆1にしとくからねっ!!!まったくもう!!」
勝手にしてなさい...。
あとで消しときます。
......さて、倉庫へ帰るか。
――――――――――――――――――
12:00
ピー。ピピーッ。
《昼休憩30分です。》
《12:35までにC-2倉庫に戻ってください》
ふぅ...。
心休まる時がやってきた。
「一緒にどうか?」
仲のいい同僚が声をかけてきた。
もちろん。
公園でも行こうか。
ちなみにさっきのレビューは綺麗に消した。
僕のレビューが☆5だらけなのは、今回みたいな対処のおかげだったりね...
会社に見つかったら配達謹慎警告もらいそうだからここらへんにしておく。
――――――――――――――――――
12:05
やっと公園についた。
みなさんお気付きであろう。
もう6分の1、休憩が終わった。
休憩時間が短いのがブラックあるある。
こんなことで文句言ってたら、この会社でおこりうる全ての事象に対して首を突っ込んでいるだろう。
「俺、今日長距離1ヶ月振りに間に合ったんだぜ!!」
すげぇ。
まず、1ヶ月前に間に合ったことがすごい。
自分なんか半年近く間に合っていないのに......!!!
ピー。ピピーッ。
《只今12:10分です。残り時間は...》
ブチッ。
休憩時間は黙ろうなぁ??AI君。
「お前も長距離だったんだろ。お疲れさん」
おう。ありがとう。
こいつほんとに優しいよな。
ロボットのあたたかみに触れられた。
おいそこ。
ロボットは元から発熱してるだろとか言わない。
――――――――――――――――――
12:30
ピー。ピピーッ、
《休憩終了です。》
どうやらこれは勝手に起動するらしい。
「じゃあ。また夕方ね」
じゃあね!!
――――――――――――――――――
12:35
C-2倉庫にきた。
今回はCだから、短距離だ!
やったあぁぁ!
ピー。ピピーッ。
《商品受け取り1番カウンターです》
ガチャ
《到着目安は35分後の13:00です。》
よっしゃあ、すぐそこだあ!!
がんばるぞ!!!
――――――――――――――――――
13:00
ピー。ピピーッ。
《配送目的地到着しました》
《呼び出します》
おっ、まあ短距離だから間に合うか...。
ピンポーン
......。
ピンポーン
......。
なんだ、いないのか...。
ピー。ピー。
《ポストに投函お願いします》
はいはい。了解しやした。
――――――――――――――――――
14:00
それにしても美しいな、この街は。
道路は汚いが 地面から10mも離れると
未来的なビルが立ち並ぶオシャレな街。
と思う。
なおこれは地面を見ないことを前提としている。
地面ってほんとに汚いよな。ゲロとか、タバコとか。
生活用水を道路に流してるようなものじゃないかまったく......。
これだから人間は......。はぁ......。
僕は人間があまり好きではない。
人間は、すべて自分がよければ良いと思っている。
ほんとう......進化しすぎたんだよな......。
かといって人間をこれ以上悪くは言えない。
だって僕らを作ってくれたから。
ピー。ピピーッ。
《急いでB-1倉庫に戻ってください》
《今日はこの配送で終わりです》
まったく、良い話をしてたのに......。
まあ今日ラストだから最後にひと仕事、がんばりますか!!!
――――――――――――――――――
14:20
ピー。ピピーッ。
《B-1倉庫に到着しました》
《商品受け取り1番カウンターです》
お、重い......。
ガチャ
《配送目安時間は1時間後の15:20です》
――――――――――――――――――
15:00
お......お......重い......!
何キロあるんだこれは??
まったく、ドローンにこんな重いの持たせるのかい....。
ちょっくら休憩。
もう時間遅れてもいい。
ここで休憩しなかったらアーム取れてしまいます......。
はぁ......。
これまた郊外の綺麗な田舎だなぁ...。
田舎ってなんか住民が温厚な人が多い気がするけど、本当にそうかもしれないね。
この田舎で、青春を送るのも面白そうだなぁ......。
周りは山に囲まれていて、ヒグラシの鳴く声、小さな川が流れる音。
あっ。学校があるじゃないか...。
部活で外周してるのかな??
練習きつそうだけど、頑張れ!!!
僕もそろそろ届けに行こうか。
――――――――――――――――――
15:30
ピー。ピピーッ。
《配送目的地到着しました》
《呼び出します》
ピンポーン
「はいはい!」
出てきたのは60ぐらいのやさしそうなおじいさん。
「ごめんよぉ。わざわざこんなに重いの持たせて。
一人で行くのは無理があったからなぁ」
ドローンへの配慮は満点だ。
やはり田舎の人は温厚だった。
「おっ。少しアームが外れかけてるじゃないか。
ちょっとだけ修理してやろう。」
うわぁ...!ありがたい!!
どうやらおじいさんは機械職人らしい!
早速失礼します!!
――――――――――――――――――
16:30
「......みたいなことだな。生きるって難しいよな」
修理してくれてる間、おじいさんが自分の嫁のことを話してくれた。
内容は少し重く、嫁が病気を患ったらしい。
それで何もできないことがとても悲しかったらしいね。
だから、サラリーマンから機械技師になったらしい。
何かしてあげたかったんだね......。
こういう話も聞けるのが、この仕事のいい所だ。
そして僕もこんなことで弱音言ってたらいけないな!
よし、会社に戻ろう。
「またなんかあったら修理するからね。また来てね。」
――――――――――――――――――
17:30
ピー。ピピーッ。
《本日の仕事終了です》
《お疲れ様でした》
はぁ......!
やっと終わったぞ......!
あとは会社に事故の報告をして、給料を元に戻す手続きをしよう。
――――――――――――――――――
17:40
あの、すみません。失礼します。
「はい。どうぞ。」
部長室で届け出を出さないといけない。
事故はデータとして自動的に会社に送られないのだ......。
会社も給料を元に戻すのがよっぽど嫌なのだろう。
よく考えたら最悪な会社だなこれ......。
「なんのようだね?」
あ、これ公認事故届出です。
「ほう?うんうん....」
「了解した。預かっておく。」
分かりました。ありがとうございます。
今日はすんなり通った。
この前はなんか証拠がないとか言われて、届出通らなかったのに。
だから会社のレビュー☆1にしてやったわ!!コノヤロー!!!
「よっ。今日飲みに行こうぜ」
昼の時の同僚だ。
おう!朝まで飲み明かそうじゃないか。
明日は昼からの仕事だからな!!
――――――――――――――――――
19:00
「いらっしゃいっ!!!!」
あぁ。天国の時間だ。
今日も一日頑張ったなぁっ!!!
「カンパーイ!!!」
コンッ!とグラスで乾杯する。
「グビグビグビ......」
「うまいっ!!!」
今日も一日頑張れたなぁ!!
そして、この唐揚げがまた合うんだよなぁ!!
カリッ。ジュワァ。ゴクゴクゴク....
カリッ。ジュワァ。ゴクゴクゴク....
そういえば、今日も色々良い体験ができたな。
まだまだこれからの人生の方が長いから、今のうちに好きなこと見つけようと思う。
この仕事を置いて何か新しいことを見つけたら、みんなともお別れか...。
まあ、どうなるか分からないけどね。
今は一生懸命頑張ろうと思う!!
案外この会社の"社畜"で良かったりするのかなぁ......。
なんやかんや、今も幸せです。
――――――――――――――――――
0:00
グワハハハ!!
だろ?だろ?そうだよな!!
ハハハハ............。
――――――――――――――――――
24hours とさか@再開 @tosaka_tos
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