天使の心臓
@mariko1920
第1話 不時着
少年ジェイドは気がつくと、真っ暗な空間を浮遊していた。いや、浮遊している
のではなくただ重たい重力に逆えずに流されているといったほうがいい。
あたりを見回しても音一つない、真空管のなかに閉じ込められたような窮屈さと
耳は凍えそうに痛い。
(僕はどこに行くの?)
ジェイドは自分の身に何が起きたか、なぜこんなところに一人ぼっちなのか思い出せない。このまま息が途絶えるまでなのだろうか。
その時、すぐ手の届きそうな先に、何かを見つけた。ぼんやりとした意識を覚醒させる鮮やかな色をしている。ジェイドはそれが何かじっと見つめた。
「隕石のかけら・・・?」
それはジェイドが手を伸ばしたと同時に、まるで引き寄せられるように近づいてきた。感覚を無くしかけた指先が触れたとき、それがただの隕石のかけらではないと
すぐにわかった。彼はそれを一度は手の平に収め、再度結んだ手を開くと、きれいなばら色の石だった。温かい波動が肌に伝わり、やがて体中を包んだ。
「ねえ、生きてるみたい」
ばら色の石は一瞬きらめき、彼の手の内に吸い込まれていった。ぬくもりに安心したのか、彼は再び眠りについた。張り詰めた静寂の中で、トクン、トクンと心臓の音だけがやけに大きく感じた。ばら色の石は彼を温め続けた。
そしてある星に近づいたとき、突然そこへ落ちていった。(続く)
天使の心臓 @mariko1920
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