第40話 制服の下
久しぶり過ぎて
鍵を使う手が震えた
カチャっと音を立てたドア
二人を迎えた
あいつは何も言わない
俺の後から階段を上る
不平等な足音を
迎えて開く俺の部屋
クローゼットに
いつしかの制服
ぎこちない手を伸ばす途中
肩をぐっと後ろに引かれる
あまりに突然で
唖然とした右手に渡された
紙?
四つ折りを開く
手紙だった
いつしかの記憶がよみがえる
―――
好きです。ずっと。
―――
これだ
いきなりで迷いのない言葉
俺の体の熱を上げる
あいつの顔を見上げる
俺は裏切った自分と
裏切らなかった目の前の男に
これまでの人生に
あるだけのごめんなさいと
ありがとうをぶちまける
それでチャラだなんて思ってはいない
まぶたの裏に
黒い手が揺らめく
「瓜生泣かないで」
その言葉はまた俺を抱く
何億光年後であろうと
宇宙の塵の俺を見つける
クローゼットに倒れこむ
馬鹿みたいに服が落ちてくる
そんなのは無視して
交わす
「空木」
「瓜生」
「「好きだ」」
高鳴り合う唇の端
愛してるは
いつか
絶対
俺から
と
ひとり誓う
だけど
ひとりじゃない
制服の下
(完)
制服の下(に何があるのか考えてみた結果) @hasegawatomo
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