第10話 野生のおっさんが現れた!
「野生のおっさんが現れた!」
おいおいおい、言っちゃうのかよ。
「はははは、おもしれぇこと言うな嬢ちゃん。俺はトラントって言うんだ。この滅多に人が来ないこの辺境の町エドンできょろきょろしてるたぁ、さては旅の途中で迷ったな?」
「えっと、そうなんですよ。ここって地図でいうとどのあたりですか?」
「ははは、本当に迷ってたのか。いいぜ、兄ちゃんたち、俺の家にきな。地図を見せてやるよ」
「ありがと」
ん?
「ねぇ、
「まぁなんとかなるだろ」
「あと、酒場はどうするの?」
「地図見ればわかるんじゃね?」
「なるほど」
「パパ、お腹すいた」
「あー、たしかにニーナのところで食べたのが最後だっけ」
あれ、出発の日ってそもそも食べたっけ?
「あの、トラントさん」
「お?どうした?トラントでいいぞ」
「んじゃ、トラント、先に飯食えるところ教えてくれないかな。俺らしばらく何も食べてなくてね」
「おぉ、いいぞ。腹が減ったら何もできないからな。ほれ、ついてこい。反対方向だけど」
「おーい、ミューレ、客つれてきたぞー」
「は?客?また飲みに来たのかい」
「いやいや、今日はこの兄ちゃん達だよ」
「ん?おぉっと、これは失礼しましたお客様。えっと、どちらからいらしたのですか?」
気がついてなかったのかな。
「それが俺たちもよくわかってなくて、迷子になっていたらここにたどり着いたんですよ。そして、トラントにここを案内してもらったんですよ」
「それはそれは・・・さぞお疲れでしょう。代金はトラントに払わせますので好きなだけ食べてくださいね」
え、それはなんか悪いな。でもここで使える金を持ってないのは確かだし。
「は!?聞いてないぞ」
「冗談よ冗談。数年ぶりの新規のお客様だもん、タダでいいわ」
数年ぶりなんだ。
「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ」
「何か言った?」
「さ、さあ、空耳なんじゃねぇか」
「あらそう」
「お客様、メニューです。ここは料理屋ではないのでメニューの数が少ないですが何でも注文してください」
「ありがとう」
「ねぇねぇ、おっさん。料理屋じゃないってもしかしてここは酒場とかそういう感じのところだったりする?」
「ん?あぁそうだ。この町にはここしかないからみんなここで飲むんだよ」
「大空!酒場だって!」
「お、よかった。酒場ああったんだな」
「おっさん、この世界についてどこまで知ってる?」
おいおい、ストレートに聞いちゃうのかよ
「はい?おもしれえこというな、嬢ちゃん。俺が知っているのはこの街が辺境の地にあるってことだけだ」
「えー!?そうなの!?」
「いや、そう言われてもなぁ」
「おいおいかれん、ゲームや作品の世界じゃないんだし、ストレートに聞いてもわからないのは当たり前だろ。俺たちが地球で『この世界について教えてくれ』って言われて相手が望むような情報を伝えれるか?」
「あ、そっかぁ」
「そういやさっき言ってた地図、持ってきてやるよ。俺ん家じゃ部屋もごちゃごちゃしてるしここで見たほうが見やすいだろ」
「ありがとうございます」
「トラント、ちょっとまって」
「どうした?」
「あんたの地図ってあのボロいやつのことじゃないでしょうね?」
「それしかないんだし、無いよりはマシだろ」
「なら、私のところにある地図を使えばいいわ。おじいさまが持ってるはずだから持ってくるね」
「ロジャーさんも持ってたのか」
「この街には海賊王がいるのかな」
「んなわけねーだろ。たまたま同じ名前ってだけだろ」
「地図って貴重なものなんですか?」
「いや、貴重ってわけでもねぇが、エドンには地図を作れるやつなんていないし、都会まで買いにかなきゃいけないんだ。で、遠出は何かと危険だから買いに行く機会も少ないから、エドンではまぁ貴重かもな」
「はい、これが地図だよ」
「ここから一番近くの街なら、ブラッドだな。近いって言ってもかなり距離があるけどな。あそこはかなり大きな街だから、こことは大違いな雰囲気だな」
「ほうほうなるほど」
「ここから南東の方角にあるが、まずは南へ向かって行って、そこにある山地を超えて、東向きに行って橋を目指すだろ、そこから、その橋を渡ってから南の海岸まで行って、その後西向きに行くとまた橋が見えてくるからその橋を渡ればブラッドにたどり着けるぞ。あ、山地はこの街から真南に進めば平地繋がりですすめるから、真南に行くことをオススメするぞ」
「なるほどな、かなり距離があるって言ってたが、大体どのくらいなんだ?」
「徒歩で半年かな」
「半年!?」
一番近くてそんなに遠いのか・・・。そういや最初にトラントが辺境の街って言ってたな。それでもそんなにかかるのか・・・。
「ねぇねぇ大空、徒歩で半年って例えるとどれくらいの距離になる?」
「ちょっとまってな、計算してみる。トラント、なにか書くものはないか?」
「ほらよ、って、徒歩で半年なんて情報だけで距離が分かるのか?」
「あぁ、仮に徒歩での移動速度が時速5km程度だと仮定する。そして、1日中歩き続けてるわけじゃないから1日あたり9時間程活動すると考える。どういった仮定をしておけば大体の距離は算出できるよ」
「ほー、兄ちゃん頭いいな」
「すごーい、大空そんな計算できるんだー」
「おいまて、トラントは知らんが、かれんは分かるだろ、ちょっと桁が大きいだけで義務教育の範囲の計算だぞこれ」
「かれんちゃんは算数なんて知りません!」
「え.....数学じゃなくて算数なのか.....」
「割り算以降殆どわかんないよ」
よくそんなので学生できてるなぁ。
「まぁいいや。いや、本当はあまり良くないんだけどもういいや。それで、1日あたり9時間が180日続いて1620時間になり、それを時速の5kmでかけると8000km......」
「8000km!?」
「あぁ」
「ってどのくらい?」
「日本の本州一周強くらいだな。同じ時間を時速60kmの車で移動したとしても14日+7時間程度はかかる。ちなみに、時速320kmの新幹線で同じ時間を走っても2日+7時間はかかるね」
「24時間で計算したら、25時間ってこと?」
「そうだね、新幹線で移動し続けても丸1日以上かかるってことだな。もっと分かりやすく言おうか?」
「お願いします」
「羽田からアメリカのロサンゼルスまでが飛行機で10時間、8000kmを時速900kmの飛行機で計算したら9時間だから、まぁ大体羽田からロサンゼルスまでって感じかな」
「つまり、私達は次の街に行くまでに太平洋を横断するような距離を歩くわけか・・・」
「そうなんだよなぁ、なにか乗り物とかあればいいんだけどね」
「空間操作は?」
「MPの関係上難しいね」
「なぁミューレ、これって計算合ってるのか?」
「んー・・・私も代金の計算程度でそれ以上はそんなに得意じゃないけど、多分計算は合ってると思うよ。所々何故か数が大きくなっていたり小さくなっていたりする所はどんな考え方なのかわからないけど・・・」
四捨五入の考え方はここには無かったか・・・。別にかっちりとした数値がほしいわけじゃないから四捨五入しまくって計算しやすいようにしたんだよなぁ。
「トラント、なにか乗り物って無いのか?」
「無いな。エドンからブラッドに行くときは皆徒歩だ」
「そっかぁ」
「こういう時、作品の中だったら都合よく乗り物があったり、乗り物を作れる人が居たりするんだけどなぁ」
「まぁ無いなら仕方ない。地道に歩くしかなさそうだね」
「ぶー、歩くのは嫌だけどそれしかないのかなぁ・・・あっ!」
「ん?」
「ふっふっふー、思いつちゃったなー、打開策」
なんだ?乗り物を自作するとかか?
「まずは暫くここに滞在して、レベルと経験を積んで、ギリギリ空間操作が使える程度のMP上限値になれば空間操作で移動するってのはどう?」
「ほほう・・・」
確かに、空間操作を移動手段として使う程度なら、そこまで膨大なMPが持っていかれるわけじゃない。勿論、距離が遠くなればなるほど消費量はいくら移動手段程度とはいえ大きくなるが。空間操作の名の通り、空間を創り出すこととかもできるらしく、そういったことは超膨大なMPがいるらしい。が、今回はそんなことはせず、ただ特定の位置と位置をつなげるだけだし、アリかもしれない。ただ、
「いい案だとは思うけど、移動距離が長くなればなるほど消費量も多くなるから、このへんで鍛えたとしてもせいぜい10km先が関の山かな」
「それでも無いよりはマシなんじゃない?」
「まぁ、そうだな」
魔王(の子ども)育成記録 諏訪野ヒロ @suwano-hiro
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