第26話 俺、パーティ結成

「あららら、皆さん……ああどうしましょう」


 女神のおっぱいが悲しげに揺れている。

 俺にはそう思えた。


 もう少し積極的に、そのおっぱいで事態の収拾に努めてくれてたら、何とかなったかもしれんがなあ……。


 そもそも、八つ裂きするときのパーソナリティ選択ミスってるだろ。


 『知性』『勇敢』『誠実』『温厚』『冷静』『多感』『無私』『統率』とかにしとけば、まとまるところを……


 『知性』『中二』『真面目』『冷酷』『凶気』『ナイーブ』『無念無想』『残り物』だもんな。


 無いわ、無いぞっ!

 どうしてこうなったんだ、と俺はお前に問い詰めたい!

 特に最後の……俺ぇええ!


 だが、後悔先に立たず、覆水盆に返らずだ。

 こういうときは……。

 

「女神、すまないが、こうなってしまってはもうどうしようも無い。一応、魔王と世界についての理解はどの俺も問題ないはずだから、効率は悪くなるかもしれんが、世界は救えるだろう」

「そう……ですか、あなたもお一人で……」

「そういう……ことだ」


 何だってー、セイ先生もソロ活動されるのでありますかっ!?

 ちょっ、先生の信奉者である俺はどうすればっ!?


「だが……その前にやらねばならないことがある」


 悩んでいる俺をよそに、セイは、ポケットから、何やら宝石のようなものを取り出すと宙になげた。宝石はそのまま滞空し、柔らかな輝きを放っている。


「……湖の乙女ニミュエよ。かの者を、永久とこしえの楽園に誘いたまえ……封印シール


 魔戦士の俺、ソウに宝石から光が照射されたかと思うと、その姿がスッと消えた。


 え、消え……た?


 宝石は光を失うと、そのまま床に落下し、コトリと音をたてた。


「な、何を!?」


 これには流石の女神も驚いたようだ。

 わかるぞ、俺はその千倍はびっくりしているからな!


「魔戦士の俺、ソウは危険だ。この俺にも行動が読めない。だから、申し訳ないが宝石に封印させてもらった。その宝石は女神、お前が持っておいてくれ。では、またどこかで会おう」


 ワンドをかざし、窓を開けると、風に乗るように浮かび、軽く手を振りながらセイは出て行った。


 そうか、魔道士も空飛べるんだな……。


 いやいやいやいや、それどころじゃない。

 残り3名になっちまったぞ。


「俺が悪いのかもしれない……とりあえず一人で修行して、鍛え直してから、魔王の城を目指すよ」


 お辞儀をする魔槍のマジック。

 こんなこと言われて止められるわけないだろ……ああ。


 マジックは、扉のところでも、もう一度俺達に向かって軽く手を振り、そして扉を閉じた。

 性格出てるな。扉をちゃんと閉じていくところが、お前らしいよ。


 しかし、残り2名か、しかも主力じゃない系の……俺と召喚のイーブ。こいつも出ていくのかな……。


「女神様、俺……紐の俺、イッキと一緒に戦ってもいいですか?」

「えっ?」


 ちよっ、おま……、何……、言う、の?


「イッキ、俺よりメンタル強そうですからね。魔戦士のソウを止めてたとき、名前を決めたときに、そう思いました」


 なんと、手を叩いたりしてたあれは、真面目に感動していたのか、こいつ。

 ちょっと、というか、かなり、くすぐったいな。

 そうか、ナイーブっていうのは感受性豊かってことか……。


「構いませんよ。元々八人で一緒にと考えていましたので。残念ながらこうなってはしまいましたが、イッキさんがよろしければ」


 選択肢キター!

 だけど、だけどな、これはもう……。


「異論なんてあるはずないだろ!イーブ、一緒に他のやつらを出し抜くぞっ!」

「お願いするよ、イッキ」


 ガシッと握手。

 どのくらい俺が戦力として役に立つかは、まだ自分ですら把握できていないが、メンタル面はまかせろ。少なくとも、マネージャーとしてケアしてやる!


「では、私もご一緒しますね」

「は?」

「え?」


 ど、どういうことだ? 女神?


「あら、気づいてらっしゃらなかったんですか?」

「何をだよ!」

「私……イッキさんに惚れてしまいました」


 なぬ! そういえば俺のチートは……そういうことか!?


 今までの俺への酷い扱いは、小学生男子レベルの、好きな子をいじめちゃう系のアレだったってことか?


 全然わかるわけねーだろが!

 ……むしろ嫌われるぞ、それ。Mなやつ以外には。

 まあ、俺、そのおっぱい相手なら、Mもいけそうな気も、しなくもないがな。


 いや、でもこれは素晴らしいな、女神おっぱいオプション付きか。

 これなら他の俺どもに負ける気しねーな。


 無敵じゃないのか、これは!


「ティアとお呼びください、イッキさん」

「女神の力、期待してるぞ、ティア」

「あーそれ無理です」

「何? 何でだ!?」

「職業『村娘』なんです、私。女神の力で関与すると世界が崩壊しちゃいますからねー。木の陰からでも応援しますよっ。任せてください」

「……」


 イーブと一緒にため息をつく俺。


 だが、何とかするしかあるまい。


 それに、女神の力はそこには無くても、おっぱいの力はあるんだからな。これにすがろう。


 こうして、紐戦士の俺、召喚士のイーブ、村娘のティアのパーティは結成された……前途多難な予感、魔王を倒すまでの道のりは、とっても長そうだ。

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女神に能力のゼイタク言う子は八つ裂きですよ?~そして8人の俺 英知ケイ @hkey

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