第25話 俺、さらにモメる

「うーん、チート性能を単なる強さとしてでは無く、どう考えるか、によるのではないかと私は思うのですが……?」


 ここで女神。

 いい判断だ。全員思考停止中だったからな。助かる。

 お前のそのおっぱいで、俺たちを導いてくれ!


「そうだな、空は無理とはいえ、全員まとまっての移動を考えると、召喚のイーブのチートは最高だと言える」


 俺がずっと訴えていた意見だな、セイ先生。

 イーブのやつの顔、嬉しそうだなあ。


「だが、『ナイーブ』なやつにリーダーはやらせられんだろう」

「テュニス……」


 また雲行きがー。来るぞ、来ちゃうぞ……。


「それ言ったらよ、『中二』なお前にだってリーダーは無理だろ、テュニスさんよ」

「何!? そういうお前みたいな『冷酷』なやつだって同じだろうが!」

「こらこら二人とも、争うんじゃ無い……」


 来ちゃった……。

 絶対レイのやつはリーダーになりたいわけじゃ無いと俺は思うんだがなあ。


 にしても、セイ先生の行為は勇敢すぎるっ。

 実は性格『勇敢』もあるんじゃないのか?

 確実にこいつらの矛先向いて、剣と弓の総受けになるぞ、それ。

 俺には……真似出来ないな。戦闘職じゃないし。


「セイ、お前『知性』だからって、リーダー狙ってるんじゃないだろうな?」

「そんなわけないだろう、テュニス。俺は『真面目』なマジックのほうが適任だと考えているくらいだぞ」


 うおう、矛先そっちに向かせますか、先生!?


 真面目なあいつとしては、さらにプレッシャーで悩みまくりそうな気もするのでありますが……まあ、テュニスに比べれば、マシというのは激しく同意であります!


「俺……か?」

「確かに、槍のマジックのチートは俺のに匹敵する良チートだが、こいつはリーダーに適したタイプではないだろう?セイ」

「リーダーに適したタイプではない、だと? 俺は『真面目』こそ相応しいと考えるのだが、お前はどう考えているんだ。テュニス」

「チートもパーソナリティも重要ではあるが、実際リーダーに必要なのは仕切る力じゃないのか?俺はあるつもりなんだがな」


 こ、こいつ自分から言いやがった。

 言ってること自体はわからなくはないぞ、だがな、それ、お前が言うか?

 仕切りと中二のワガママは違うんだよっ。出直してコイッ!


 それにな、そんなこと言ってると、あいつが絶対にまた来る、来ちゃうぞ~~。


「俺はお前にだけは仕切られたくないと思ってるぞ、テュニス」


 レイ~~~。

 こいつも本当に女神と一緒で期待を裏切らないタイプだな。


「なるほど、他の俺に認められることも大事だということか……」


 セイ~~~先生。

 それ、一見冷静な考察だが、レイの発言のテュニスへのダメージが倍化してるからっ!


「くっ、もういい、俺は好きにやらせてもらう! どうせどのチートも魔王を倒すためのチート、一人でも問題ないだろ!」


 テュニスはそれだけ言うと、真っ直ぐ扉に向かい、いら立ちのこもった乱暴さで扉を開いた。そして、部屋を出た直後、扉が壊れるのではと思われるほどの強い勢いで、扉を閉めた。


 この間、やつは俺達の方を、一度も振り返らなかった……。


 あーあ、こうなると思って俺最初に予防線張ったのに……まあ、結果としては逆効果だったがな。


 しかし、困ったな。収集がつかなくなったぞ。


 レイのやつは、振り上げた矛先、ならぬ弓の標的がいなくなって空振り気味。


 セイ先生は、テュニスの切れっぷりに流石に困惑気味。


 微妙に矢面に立たされたマジックは、自分が悪いのか、といつもどおり悩んでやがる。


 同様のイーブは……お前ひょっとしてずっと泣いてたんか? 目ぇ赤くなってるぞ。ナイーブだもんな仕方ないか……見なかったことにしておいてやる。


 キョウは珍しくチャリチャリしてないな。

 何か考えてるっぽい。空気は読めるンか、こいつ。まあ、俺だもんな。

 何を考えてるのかは、相変わらず分からないがな。


 ソウはいつもどおり……何かうなされていやがる。

 夢の中で伝わってるンか?

 睡眠学習ってやつに近いのかもな。


「うーん、最初にチートNo1って言っちゃったのがいけなかったですかね……」


 女神よ、今更反省しても遅いぞ。

 城はもう崩れかけている、いや、崩れた。

 完全崩壊まであと少しって感じだぞ。

 あ……


「あいつは気に入らないが、俺も、他の俺とつるむ気はしないからな、一人でやらせてもらうぞ」


 レイは、さらりとそう言うと、弓を片手に扉を開けはなった。


 そして一言――


「そうだ……お前ら、俺の前に立つんじゃねえぞ。撃っちまうからな。命が惜しいやつはやめておけ」


 あいつが、レイが出て行った後、なんとも言えない余韻が部屋の中に漂っていたのは間違いない。


 そして、その直後――


「俺も、もう我慢できねえからな、ちょっとそのへんでモンスター殺ってくる。アバヨ」


 キョウの姿がスッと消える。

 開いたままの扉から、出て行ったのだろうか、全く音はしなかった。


 隠密な上に『狂気』だから、そもそも連携プレーには向いていないのはそうだろう。しかし、だからといって、それでいいのか?


 この顛末は、俺たちにとって、良いものだと言えるのだろうか……?。


 8-3で、残りは5人。

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