黒い太陽の下で「私たち」はどこへ向かえばいい?

ジャンルはSF。

星系外惑星への入植を果たす為に集まった個性的な面々が、母星外に新設された訓練所という舞台で変わった日常を繰り広げる様子を、軽快なトークやコミカルな動きで明るく描いた本作。

宇宙(地球外)を舞台にしたお話ではあるけど、読み始めてみるとなぜかそこに砂埃の舞う荒野や鉄や油の匂いが感じ取れる。主人公の頭部にはカウボーイハットをイメージしてしまう。

それは主人公--ブラムの軽快なトークやノリが、「映像劇」として馴染み深い西部開拓時代を想起させるからで、未開拓の土地を切り開くという「フロンティア・スピリッツ」を、ジャンルの違いこそあれイメージとして重ねる事ができるからだ。

さらには、登場人物が持つ「個性」も、現代の小説に親しんできた私たち読者はイメージしやすいのじゃないかと思う。イメージしやすいからこそ、その根底にある「テーマ」がくっきりと浮かび上がり、それが現実の問題としっかり結びつき、私たち読者は「考える」事ができる。

本当、良い作品。

本作を読む前に、いや読みながらでも良いけど一度、作者が前書きに書いているコクトー・ツインズの「Heaven Or Las Vegas」を聞いてみるのも良い。

ヴォーカルであるフレイザーの、エフェクトの強いギター音を纏った幽玄な声は、「宇宙」を感じる事ができるからだ。

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