最終話 愛

 皮が剥けた。後は擦るだけだ。


「「擦るのは私たちに任せてください」」


 ほぅ、解ってるじゃないかブス姉妹。

 姉妹のその言葉を聞いた途端、「俺のか?」とおもむろにズボンを脱ぎ出す男どもが後を絶たなかったのはお約束ということで。

 そんな男の哀しい習性とは裏腹に、タートルネックの横にいた女どももコスラを擦るために前に出た。


 出ろ出ろ。出せ出せ。


 と、一斉に女どもが村おこしで作った巨大ポコチンを擦るギネス記録に挑むかのごとく、コスラのコスラを擦り出した。

 なんて美しい風景なのか、ソファを持ってきて、ヘミングウェイでも読みながら眺めたい光景だ。

 画家のミレーも落穂拾いの横で、コスラの擦りがあったら『コスラの擦り』の方をキャンバスに納めていたであろう。

 それくらい、これはなんか芸術て……


「あんぎゃああああああああああああああああああああああああ」


 なんか凄い声したぞ。と、振り返ると、コスラがあまりの痛さにのたうち回っているではないか!


 何が起きた!


 と、村おこし共に近寄る。すると、女共は手に、大根おろしやら、ヤスリやら、研ぎ石やら、なんか擦るの方向性が全然違うものをみんな手に持っていたのであった。


「お前ら、殺す気か!」


 俺は怒った。これは男として見過ごせない。この女たちの行いは全男を侮辱している。

 その証拠にさっきまでズボンを下ろしていた、コスラの後にお零れを貰おうとしていたすけべ男の行列、別名「勃起夜行」の面々も恐れをなして一斉にズボンを履いてしまったではないか。


 かわいそうに。ふぐりひょん。


 地面には、削れたコスラのポコチンの粉がサラサラと砂のように落ちている。滋養強壮にすごい効きそうだが、可哀想だ。


「ゴスラだ!」


 なに!


 そう言っている暇はない。そうこうしている内にもゴスラがこっちに来る。しかし、!


 ムクムクムク!


 なんと、コスラのポコチンがここにきて、また巨大化したのである。国の予算か、と思うほどスグデカくなりやがる、この野郎は。


 その時、俺のスマホに電話があった。「5すら」と番号が表示されている。


「もしもし」


 電話の向こうのコスラは息が荒い。興奮しているのか、苦しんでいるのか見当がつかない。変態とは絶えず未知数なのだ。


「とりあえず、コスリンハウスの電源を切れ」


 そういうと電話の向こうでまた充電している音が聞こえてきた。電池の減りが早い機械だ。


「なんだ?」

「つ、続けてくれ」

「は?」


 なにを?


「だから、その、ヤスリとかを続けてくれ」

「お前、頭おかしいんじゃねぇのか?」


 電話番号に平仮名使ってんじゃねぇよ。


「ああ、バカなのかもしれないな」

「バカに失礼だ。変態」

「だが、私は人間の愚かさが好きなのだ。この非常時にヤスリでポコチンを削っているとか、お前らアホだろ?」


 褒めてんだか、怒ってだかわからん一文だ。


「お前、このまま削ったら消えるぞ」

「本望だ」


 あっそ。俺は電話を切った。


「続行! 続行!」


 俺は工事現場のトラメガを借りて、女どもに擦りを継続させる命令を出した。


 ブレーキがぶっ壊れたら走るしかない。

 コスラのポコチンはみるみる削られていく。そして、みるみる小さくなるが、それに歯向かうようにコスラは興奮して、またみるみるデカく仕返してくる。


 マジでうっぜぇ!


 俺はコスラに電話し直した。ひらがなはダイヤルできなから、リダイヤル。


「なんだ!」

「大人しく死ね!」


 時間がねぇんだよ! ゴスラが陸に上がってきてんだ! 大見得斬ったくせに粘ってんじゃねぇよ!


「うるせぇ!」


 コスラが怒った。


 村おこしの女どもとコスラの一進一退の攻防は続く。

 こうなったら、作戦しかない。


 俺は一度、女どもを集めて作戦を支持した。まるでNBAのラスト三秒のサインプレーを指示しているようだ。


「GO!」


 俺の掛け声とともに女どもは散っていった。


「なに!」


 電話の向こうからコスラの意表を突かれた声がした。女どもは、擦るのをやめて、その場でゴミ拾いを始めたのである。

 興ざめしたコスラ。まるで掃除機のコードが戻っていくように、コスラはシュルシュルシュルと小さいくなっていく。


「いまだ!」


 電話の向こうから「東野?」と聞こえたが、それがコスラの断末魔だった。一気に擦りにいった女どもにコスラもさすがに追いつかず、ポコチンはみるみる削れていき、そして……消えた。


「玉はどうしますか?」


 村おこしのリーダーが俺に聞きにきた。見れば、コスラの姿はなく、なんか巨大ながんもどきがそこにあった。

 ゴスラはコスラを削り切った人類のおそろした尻尾を巻いて逃げていった。


「おい!」


 俺はゴスラを呼び止め、「これ持ってけ!」とがんもどきを持っていくように命令した。

 ゴスラはがんもどきごと海に帰っていった。


 それから半年、街は元に戻った。

 そして、アケミはコスラの粉末を利用した精力剤を開発し大儲けした。抜かりのない女アケミ。

 アケミの開発したコスラのポコチンの粉を飲むだけで男の力はみるみる上がるのであった。

 妻は、それを大根おろしのように秋刀魚の横にでも置いておけば、なにも知らない旦那はコスラの粉を飲まされるのである。


 そして、悲しいかな旦那は、妻に飲まされたコスラのせいで、今夜もスケべを仕事とするのであった。

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コスラ ポテろんぐ @gahatan

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