ボーナストラック 年下の女の子

 目に痛いほど鮮やかな青葉と穏やかな海のコントラストが眩い五月の某日、旧目白邸を訪れた。


 初公開日には整理券が配られるほどに混雑したと報じられていたものの、私とSさんが訪ねた頃には見学客の数もすっかり落ち着き、ゆったりとした心持ちでそこかしこに粋の精神を活かした数寄屋造の建築美を堪能することができた。

 とはいえ、五月の観光シーズンの折であるから古都の散策に立ち寄ったご婦人達に数寄屋造の構造に興味を示す若き建築家の卵に芸術家を志す学生らしき若者など見学客の数は少なくない。その中に、燃えるような躑躅の咲き誇る庭園にも、檜や屋久杉といった今では到底用意することすら叶わない建材をおしげもなく床柱や梁にも、細かな細工の施された欄間にも、当時の高名な美術家が手がけたという襖や衝立といった調度品にも、現代は華道の免状を持つ学芸員の手によって活けられている床の間に飾られた花と花器の美しさにも目もくれず、足早に各部屋を覗いてはがっかりした面持ちで、順路に沿って庭に出て行く若者の姿を見かけた。

 私とSさんはその騒々しい後ろ姿が廊下の曲がり角の向こうへと消えるのを待ってから囁きを交わす。


 ──彼はきっと私たちと同じものを期待してここに来たんでしょうね。けれども、この別荘を建てた初代目白某の美意識の再現を命題とした市の方針により彼が期待したものは全て跡形もなく浄化された後だった。

 がっかりするのは分かるけれど、今日これだけの建物を目にする機会はそうそう無いのだから、南側の部屋から臨める海の景色だけでも堪能すれば良いのに。

 こうして縁側に腰を下ろし、庭の向こうに広がる水平線を眺めながら、あああの子達もきっと同じ景色を眺めていたこともあったのだろう。そう思いを馳せるだけでもずいぶん違うのに。


 語る私にSさんは同意しながらも、せわしない青年の去った後を見ながら呟いた。


 ──まあね。でも私には彼の気持ちが分からないではない。こんなにも綺麗さっぱり子供達がいた形跡が消されているとは思わなかった。いくら忌まわしい記憶だからって、痕跡一つ残さないというのはいくらなんでも、流石に。


 目白邸公開で最も困難だった箇所は、複数の子供達が一堂に揃う食堂として現代的なリフォームが施された台所を慎重に解体し、残された資料や住人の発言を丹念に調べ専門家を招き建築当時の姿で再現することだったという。

 お陰でかつて目白夫人の指揮により複数の女中がくるくると働いていたであろう昭和初期の上流階級の台所はこのようなものであったのかと思いを馳せるのには最適な姿を現したが、人種も国籍も当時の基準では人ではあらぬとされていた子供達がここに集ってがやがやと賑やかに食卓を囲んでいた様子を想像するのは難しい。


 ──この家であったことは確かに忌まわしいことだけど、ここで暮らしていた子供のことまで綺麗さっぱり消さなくたって。一言でもいい、どこかにその記録を残してくれたって。


 悔しげな調子をその口ぶりに漂わせてから、Sさんは自らとりなすように苦笑した。

 散々に手を焼かされた後輩二人に対する愚痴の混ざった思い出話をお酒の供にすることが多いSさんとしては、二人のことを純粋に想う気持ちをうっかり吐露してしまったのがきまり悪かったのだ。長い付き合いで私はそれを汲み、順路に従って目白邸を後にした。


 子供達が穏やかな日常を過ごした食堂兼台所の有様ですらああなのだから、当然目白小児科医院は跡形すらない。更地にされてからは庭園を拡げ、ちょっとしたカフェスペースが出来ていた。私達はここで抹茶を用いたデザートを頂く。



 目を離すとすぐに騒動を起こす、一学年下の問題児二人。メジロ姓二人への印象は今も変わらない。

 様々なトラブルを引き起こす二人から私たちが迷惑を被ったのは一度や二度のことではない。けれども彼女たちにはどこか憎み嫌うことを躊躇わせる愛嬌やいたいけさがあり、ついつい許してしまわずにいられなくなる。そんな得な気性を持つ二人だったことを思い出す。人懐っこくて裏表の無かったタイガさんはもとより、素直とは程遠かった気性のリリイさんですら、自分の中に絶対譲れない一線をもつ子らしい芯を感じさせる頑なさがいじらしくもあり、どんなに傍若無人な行いに振る舞われても最終的にこちらが上級生として一歩譲ってしまう羽目になる。


 怒り、呆れつつもつい手を差し伸べたくなる彼女らの気質は海を臨む広々としたこの庭園と、人の手によって磨かれた目白邸で育ち醸造されたものなのだろう。

 この家で育った子供達は、どうであれ慈しまれ育まれた──。そう結論づけたくなる気持ちを無視するのはかなり難しく、抹茶の苦味を強く意識して自分を戒める。


 どうであっても二人は「メジロの子供たち」であり、法も倫理も許しはしない手術を施された子である事実は揺るがせない。私はその点はどうしても看過できない。たとえリリイさんがこの手記の中で自分たちに手術を施した人物を恨みはしないし友情めいたものを感じるといった趣旨の発言をしていても。


 現在も収監中であるメジロセンリの思惑通り、メジロ式と呼ばれる理論を用いた後天性のワルキューレを生み出す術式は世界各地に拡散し改良を加えられている。肉体の酷使も薬の副作用もずい分軽いものとなり、特別な女の子でなくても希望すれば誰だって簡単にワルキューレになれる世の中は事実上達成されているとは言わば言える。あの事件が発覚して以降、メジロ式で侵略者を退治する力を得た者を公式にワルキューレであるとは認めないだけで、いまや飴食いワルキューレキャンディーズ達なしには外世界からやってくる侵略者から、あるいは土着化しゲリラと化した侵略者から人類を護れない。

 しかし、正規軍の予備隊として、もしくは民間警備会社の戦闘員として、様々な形で飴食いワルキューレキャンディーズとして働き報酬を得るのは今もそして二人のような境遇の子供たちが殆どだ。そういう状況がおそらくもうしばらくは続く。私達が養成校にいたころと違うのは、男の子のメンバーがいることくらいだ。結局本当の意味で世の中は達成されてはおらず、むしろその階層が固定化しただけとも言える。


 メジロセンリは何手も先を読むのが得意な元天才少女だ。この程度の未来を予測できなかったとはとても思えない。


 確かに二人は堕落した第一世代のワルキューレと出会って、短いながらも充実した一生を過ごしたと言うことはできる。それでも私が二人ほど素直にセンリのことを肯定的に受け止めることが出来ず、現代のヨーゼフ・メンゲレの誹りも当然ではないかと一面的なものの見方をしてしまうのはその点がどうしても引っかかってしまうためだ。ものを読んだり書いたりするのが好きな先輩の一人として、特にフィクションに惹かれてしまうものとしては、どうしてもそこに書かれていないものを読み取ってしまいたくなる悪い習性から逃れられない。――特にリリイさんのような、捻くれて陰険で素直でなかった女の子の書いたものであるなら、猶更。


 まるで自分の死期を悟ったように、死後には自分の体はフリー素材になるのだとなんの拘りもなさそうに明かしてみせたのは、私達にそれを阻止してもらいたかったからではないのか。一人の人間としてちゃんと弔ってもらいたかったからではないのか。

 普段から家父長制を批判する癖に、祖霊崇拝が生活の一部であった東アジア某所の出であることを強く意識せざるを得ない自身の言葉にうんざりしながらも、抹茶のアイスクリームを食べながら私は月並みな推論を披露してみた。

 それを聞いたSさんは、私と同じものを食べながら首を左右に振った。


 ――多分それは無い。二人で同じところに行くのがアイツの希望の筈だから。


 養成校時代、Sさんはメジロ姓の二人とは私などよりよほど濃密な時間を過ごしていた人である。遺言で著作物の管理者としてリリイさん直々に指定されていたくらいには信頼もされていた。

 そんな彼女が言うのだから、私の見立てよりずっと彼女の見立てが真相に近い筈だ。易々と私は自分の月並みな案を取り下げる。

 


 しかし、世間的には無名だったタイガさんの情報が匿名の検体一号としてメジロ式の術式として拡散されたのとは違い、リリイさんは曰くのありすぎる女優兼歌手だった。自分の死後、亡骸は手術を了承した時に交わした契約通りしかるべき医療機関に預けると本人が生前遺していたにも関わらず、メジロ式の拡散を認められない国連がその遺言は無効だと訴え、(私達にはそんな人物がいただなんてとても信じられないが)かつてリリイさんと恋人状態だったという人物から自分にはその亡骸を葬る権利があると主張され、その亡骸の処遇を巡って騒動になったのは記憶に新しい。

 結局は、リリイさんの芸能活動のパートナーであった私達の先輩がその亡骸を預かるという形で決着したが、それが今日黄莉莉リリー・ウォン生存説など怪しい都市伝説を生み出す下地ともなっている。



 リリイさんの手記の中で「変人の先輩」として語られるSさんが手記の執筆を勧めたのは、ちょうど目白児童保護育成会の一件が明るみに出て、世界中が沸き返ったあの頃だという。

 実力と美貌を兼ねそろえた新進気鋭の女優は非道すぎる手術を受けた人造ワルキューレだった――というスキャンダルにより、彼女が干されていた時期に話を持ち込んでみたのだという。

 ストリートチルドレンだった過去まで暴かれ、中には彼女が少女娼婦でインディーズアイドル時代から枕営業でのしあがってきたと見てきたような嘘まで書き立てるマスコミのせいできっとくさくさしているだろうから、一つつまらない冗談で笑わせてやろうと思っただけだ――と、Sさんは嘯く(それにしてもあのリリイさんが少女娼婦で枕営業とは! と私たちはその噂を思い出して何度も噴き出した)。


 話をもちかけたSさん当人すら、本当にリリイさんが手記を書き始めることは期待していなかったという。彼女は一時期私達と同じ文芸部に所属していたにも関わらず、書く・読むといった行為に全く関心を示さなかったのだから(にも拘らず、古い漫画に関する知識は豊富なのが長い間随分不思議だったものだ)。


 あのリリイさんが本当に手記を書いていた、とSさんが知ることになるのはそれから数年ほど経った後だという。ちょうどリリイさんが芸能活動を再開し、スキャンダルをものともしない堂々たるふるまいで再び評価を高めていたころだ。彼女の余命が幾ばくも無いことをその当時知るものがいれば、正に円熟期だと言い表すだろう。

 編集者として、また読むことが習慣になっている人間として、面白い読み物はないかと電脳の世界にある各種書店の棚を検分している時に、Sさんは「早くもミリオンセラー達成! 違法手術を受けたあの女優〇〇の書く驚きの半生! 過酷な状況からサバイブした少女はいかにして芸能界の頂点にのぼりつめたか! 瞠目のノンフィクション! 当ストアにて絶賛販売中」という呆れるほど煽情的な広告を目にしたのだという。

 法の目を掻い潜り違法なテキスト類を売りつける地下本屋の広告である。普段のSさんなら一顧だにしないところだが、「あの女優〇〇」といった見え見えのフックに引っかからずにはいられなかった。


 養成校時代、Sさんはリリイさんからの被害を一番被った上級生だった。その分リリイさんの一癖も二癖もある人となりを熟知している。

 

 ――あいつはこういう嫌がらせを平気でやる!


 そう確信したSさんは即座にその地下本屋を訪れ、本書の元となったテキストを購入した。そして一息に読み上げた後、地下本屋の主との交渉を開始した。その本屋の所在地がどこか、どうやってテキストを得たのかその方法を調べ上げ、どの程度法に触れる行為を行っているのかを調査した上でじっくりじっくり長期戦の交渉を開始する。その店主が誰であるかは語るまでもないので私の口からは伏せておく。

 Sさんの粘り強さが功を奏して、体調不良から芸能活動を休止することになったリリイさんを交え、本手記の販売権を正式に手にすることが出来た。先方も『フィフティシェイズ・オブ・グレイ』には到底及ばずとも、それまでの地下版の手記の売り上げに満足されていたこともあってか、話し合いは幸いスムーズに進んだと聞く。

 完全版では地下版では省略されていた箇所も全て収録する、という契約の為、現在その本屋の主は、現在は休業し百年近くまえの電脳の遺跡の発掘作業に励んでいらっしゃるはずだ。鉱脈の発見を遠くからお祈り申し上げる。


 それにしても呆れるのはこういう形でないとお詫びを形にできないリリイさんの迂遠な性格である。彼女がわざわざ大昔の小説投稿サイトにアクセスして手記を公開したのも、かつて自分の都合で大きな迷惑をかけた地下本屋の店主への謝罪と迷惑料の意味も兼ねているのは明らかだ。

 十年近く経ってこうして謝意を伝えるような彼女の義理堅さや純情さのせいで、どれだけ迷惑を被られても私たちは彼女を見放すことができない。


 全く、この世からいなくなっても人騒がせなんだから――と、養成校時代のように結局彼女への苦情や悪口をつい口にしてしまいながら、寂しがり屋で生意気で意地悪で、完全版ともいえる本書の完成を待たずに一人でひっそりこの世から旅立った彼女のことを気にかけてしまうのだ。



 旧目白邸を後にし、かねてから訪れてみたかった文学者の旧宅を訪れるまでの道中で、歩きながらSさんは懐かしいものを私に見せた。

 ワルキューレならば必ず携帯することになっている指輪型の専用端末だ。

 右利きワルキューレならば右手薬指に嵌めるのが一般的だが、養成校に所属するまだ十代の少女達が指輪というその性質に過剰な意味を見出さずにいるのは難しい。自然発生的に、一等大事な友達や恋人と交換しあい互いの左手薬指に嵌めあう――という風習ができあがるのは自明の理であろう。今の養成校では分からないが、私達が籍を置いていた時代では端末の交換がブームを起こしていた時期だった(不肖ながら私がそのブームを後押ししていた)。


 パートナーのいるSさんは端末を左手薬指、私は右手の薬指に装着している。つまりその時Sさんが私に見せた端末はこの場にいない誰かが所持していたものだ。


 といっても、この流れで元の持ち主が誰なのか分からぬ私ではない。


 著作物の管理の他にそれまで託されていたのかと尋ねると、Sさんは頷いた。


 指輪なんて左手薬指にはめるもの一つあれば十分、という生前の恩人の思想を受け継いだリリイさんの主張どおり、彼女が生涯にわたって嵌め続けた指輪は演出上必要なものをのぞけばこのリングだけだった。それは現在も残された画像で容易に確認できる。生前の彼女の左手薬指にあるということは、つまり、もともとはリリイさん本人のものではない誰かのものだということになる。

 その誰かが誰なのかは、やはり言わずもがな、ということになろう。



 ――初期化して、あの手記に出てきた砂浜から投げ捨ててやろうと思ってたんだけど、無理だった。


 指輪を海に投げ捨てるなんて芝居がかった行動は自分には似合わないと思って萎えた、とSさんは歩きながら端末を真上に放り投げては受け止めるのを何度か繰り返す。彼女の子供じみた行動に私の方がヒヤヒヤしてしまう。もう養成校を卒業して十年は経とうというのに、私はどうしてもこの端末を交換するという少女趣味を神聖視してしまわずにはいられないのだ。


 そんな私をからかってから、指輪を捨てられなかった理由はもう一つあると言いながら、Sさんは今は空になっている右手の薬指に端末を嵌めて軽く手を払ってみせた。

 そうして起動すれば、持ち主がそれぞれ設定した主に手のひらに乗るサイズのコンシェルジュキャラクターが現れるのがふつうだ。しかし、私達の目の前にあらわれたのは小柄な女の子だった。


 私達が知ってる姿よりは数年幼いが、まるで猫のような印象を抱くやや吊り気味でぱっちりと大きい二重瞼の眼をした拡張現実上の女の子はタイガさんをモデルにされているのは明らかだ。ネイビーのピーコート姿なのは彼女たち二人が初めてあった頃を再現してのことだろう。


 白昼堂々、幽霊に遭遇したような心地に襲われて言葉を失う私の前で、タイガさんの姿をしたコンシェルジュキャラクターは生前の彼女がよくそうしていたように目をぱちくりさせた。


 ――あんたリリイじゃないね。このリングはリリイかタイガじゃないと使えねえし。共有したいってんなら設定を変更しな。じゃ。


 いかにも生前のタイガさんらしい口調で、登録者以外の第三者が端末を扱おうとした時に表示される基本の警告メッセージを口にすると拡張現実上の女の子はぱっと消えた。

 

 あとに残された私たちはお互いに顔を見合わせる。Sさんは右手の薬指から端末をぬきとる。

 物語を書くものの性のせいか、私の胸にはじわじわと、タイガさんに先立たれたリリイさんが、形見でもある端末のコンシェルジュキャラクターを変更しているその光景が広がってしまう。それはなんとも物悲しく、いじましく、そして、


 ――重いでしょ。


 私の心を読んだようにSさんは呟いて息を吐き、さっきのような光景をみてしまうと初期化した上に海に捨てるのは、もう一度タイガさんを死に至らしめるようで気が引けてしまい出来なかった、と続けた。私も頷く。たとえそれが虚像であったとしてもあの子と同じ姿をしたものをその手で消すのは単なる上級生でしかなかった私にだって難しい。まして、メジロ姓の二人とは濃密な時間を過ごしていたSさんならば。


 ――そんなことやったって全く意味はないけれど、トラ子一人っていうのはやっぱり寂しいからリリ子も造ってやろうかなって思うんだ。こいつらは二人がそろってないとどうにもしまらないから。


 Sさんだけが口にしていた仇名でメジロ姓二人のことを呼ぶのを懐かしく耳にしながら、私達は次なる目的地を目指した。


 

 二人の形見と言って良い端末を託されたSさんの依頼により、今お読みいただいているリリイさんの手記の解説を私が担当することになった。私は二人に面識があるし昔から女の子がいちゃつく話ばかり書いてるんだから適任だろう、これが彼女の言い分である。


 如何にもSさんらしいその言い様に反感を覚えないこともなかったものの、依頼を持ちかけられたのはリリイさんの訃報に接した後のショックがまだ抜けきらないタイミングだった。

 まだ初々しい初等部の一年生だったメジロチエリさんが涙目でタイガさんに関する報せを伝えてくれた時の養成校高等部三年生だったSさんの呆然とした様子を思い出させ、気がつくと彼女の依頼を引き受けていた。


 先に出版されている地下版や手渡されたや完全版のプルーフに目を通したあの二人にこのような過去が、と驚き、いやいやあのリリイさんが本当に素直に自分の過去を明かしたりするかしら、何かを仕込んでるのではと時に疑いながら、大陸東端の軍港の街で巡り合った二人の少女の出会いと別れに随伴した。


 一読者として気になるのは二人が養成校に入学する春休み、恐ろしい大人達に追われながら日本海側から太平洋側まで帰ってきたその道中である。

 きっとあの二人のことだから散々に暴れに暴れた道中だったのだろう。リリイさんですら映画の脚本にすると面白そうと語るほどだったのだから。


 そのビジョンが浮かんだせいで、私は今新しい物語の構想を練っている。




 ※#8の「――全くあの子とときたら、本当に――」から「あの子は今頃地獄にいる。」にわたる数行を、書籍刊行の際に関しては削除するようにというのが著者生前の願いだった。

 その遺志を無視する形で出版する責任の一切は著作権管理者が負う。

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人豚小戚、厠生活をやめアイドルを目指す。 ピクルズジンジャー @amenotou

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