ラスト日限定! 守護霊さま
若生竜夜
ラスト日限定! 守護霊さま
国語がなんだ理科がなんだ社会科なんて寝る時間だよ。
勉強、きらい!
宿題なんかほろべ!
『問題 この時主人公がどう思ったかを書きなさい』
おれの答え。
「『知・ら・ん・が・な』っと」
とたんに消しゴムが飛んできた。
「こらっ。真面目にやれ、
「てッ」
おれは消しゴムがぶつかった頭をさすりさすり、投げつけた
十才くらいおれを成長させたみたいなイケメンが、イスに座ってこっちを見てる。びみょーに違和感なのは、後ろのカーテンがうっすら透けて見えてるところだ。マジもんてやっぱりお約束なんだなーって、変なとこに感心する。
「だって面倒なんだって。まだこんなに残ってるんだぜ? これ見てよ、これ」
ドリルの束をペシペシたたく。それから、
「お
猫なで声で訴えて。なんまんだー。ついでに拝んでみたりした。
「却下だ。自分で解かないと意味ないんだぞ。俺が見てる間くらいちゃんとやれ」
「ブー」
ブーブーブー。思いっきりブーイングをあげながら、おれはタタミにひっくり返る。ごろん。寝がえりうって、ほお杖ついて。上目づかいに兄きを見上げた。
「っつうかさぁ、
マジで、なんで今ごろなのさ?
「そりゃ盆になんて帰ってきたらいかにも、って感じだろう。火の玉飛ばして現れようか?」
オバケだぞう~どろどろ~ん。
「うへぇ……」
おれは顔をしかめた。
「いまどき、クッソだせぇ……」
「そっちかよ!」
だって全然怖くねえもん。幽霊になって帰ってきても、ほらね、目の前の
寮からさ、バイクで帰ってくる途中でさ、スリップ事故だったんだって。投げ出された先にちょうどトラックが走ってきてって、マヌケすぎる話じゃん。
『
おれは、
それから
しょんぼりしながら学校行って、クラスの友だちにもすんげえ心配されまくって、一年近くたってやっと
なのにさ。
初盆もすっかり終わりまくって、おれが宿題にヒーヒー言ってる八月の三十一日。よりによって夏休み最後の日に、
ただいま、って。
ただいま、って。
どんな冗談だよ、おい。
小四のおれは、マジ、ちびるかと思った。ひギャーッって叫びながら、ぜってー、点目になってたと思うな。
違うよ。怖くねえよ。怖くなかったけど、びっくりしたんだよ。小三はガキんちょだけど、小四は大人だもん。ありえねーことが起こってるってことくらいわかるんだよ。
だって、マジありえねーだろ。幽霊に宿題を監督されるなんて。
おかしいのに、なんで毎年恒例になってるんだよ。なんで今年もおれ監督されてるんだよ。なあ、ちょっとは疑問持とうよ、
ほお杖ついて見上げるおれの前に、なんかふよふよ白いもんが飛んできた。真ん中へんにあったギョロッとした目玉みたいなのが、キロッておれの顔をにらむ。
うわっ。きもっ。
ドン引くおれの目の前で、
「こーら。俺の弟においたはダメだぞー」
「なに、今のなに」
おれが目をまるくしてると、
「
って、言った。
「そ、そういうもんなのか?」
「そう。そういうもんなんだよ」
ぽんぽん。
「
「
おれはげんなりゾンビ顔。
「だからなんで三十一日なんだよ」
どこにも遊びに行けねえじゃん。
「そりゃ
クッソ
「お前が宿題サボらないようにだ」
「だあああああああ」
おれは叫んでタタミにつっぷ。
ああもう、ああもう! 泣いてやるうっ。
「勉強、きらい! 宿題ほろべ!」
笑うなよな、バカ兄き。
ほんとにほんとに、大好きだ。
ラスト日限定! 守護霊さま 若生竜夜 @kusfune
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