Final count... ありがとうのうた

沙樹は逝ってしまった。


あんなにも死ぬのが怖いと怯えていたのに、


あっという間に死んじまった。



人間ってこんなあっけなかったのか?


積み重ねてきたもの全て、

たった一瞬で奪われてしまうのか?


「なぁ。でも、俺、お前のお陰で気付いたことがあるんだぜ」



俺でも優しい涙が流せた。


沙樹が死んだ朝、久しぶりに涙が流れた。


悲しいほどに、涙が溢れた。


俺でもまだ、涙が流せた。



俺は自立に向けて努力するようになった。


沙樹は死んでしまったけど、俺はまだ生きている。


沙樹はこの世からいなくなってしまったけど、沙樹のことを覚えてる俺はまだ存在している。


だから、まだやり直せると思った。


誰もいない家に拗ねて、ウジウジしてるのは簡単だ。


けど、いつまでもそれじゃ何も変わんねぇ。


今を変えたきゃ、俺自身変わらなきゃ駄目なんだ。


そうだ。


沙樹は俺に、人生は一回こっきりしかないことを思い出させてくれた。


俺の生き方、その勿体無さに、気付かせてくれたんだ。



「俺、もっかいしゃんと、胸張って生きてみようと思う」



俺が前を向いて生きている限り、沙樹も俺の中にいるような気がした。


届けるのが遅くなったけど。


ありがとう、沙樹。


俺はお前に会えて、少しは幸せ感じて生きてけそうだよ。



『ありがとうのうた』

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誰でもない 望月 葉琉 @mochihalu

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