count.1 それでも救いは世に転がる
沙樹の意識が戻った。
でも俺は事前に、沙樹の母親からもう後がないことをきかされていた。
奴はそれでも登校を選択し、母親の反対を振り切って俺の誘いに乗ったのだという。
「あのね、とめきちくん」
ベッドの傍らに座った俺に、沙樹が儚げに話しかける。
……コイツ、この期に及んでまだ"とめきち"を改める気にならねぇのか。
「私、最期に貴方に会えて、少しは幸せ感じて死ねるよ。死ぬのは、やっぱり怖いけど。"私"をちゃんと見てくれる人がいてくれたから。病気ってゆーフィルムを通してじゃなくて、私自身を見てくれたから」
「んな縁起でもねぇこと、今言うんじゃねぇよ……」
「だって、今言わなきゃ言い逃しそうだから」
そう言って、奴は良い笑顔を見せた。
次の日の朝、日が昇ったと同時に沙樹は息を引き取った。
『それでも救いは世に転がる』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます