count.1 それでも救いは世に転がる

沙樹の意識が戻った。


でも俺は事前に、沙樹の母親からもう後がないことをきかされていた。


奴はそれでも登校を選択し、母親の反対を振り切って俺の誘いに乗ったのだという。


「あのね、とめきちくん」


ベッドの傍らに座った俺に、沙樹が儚げに話しかける。


……コイツ、この期に及んでまだ"とめきち"を改める気にならねぇのか。


「私、最期に貴方に会えて、少しは幸せ感じて死ねるよ。死ぬのは、やっぱり怖いけど。"私"をちゃんと見てくれる人がいてくれたから。病気ってゆーフィルムを通してじゃなくて、私自身を見てくれたから」


「んな縁起でもねぇこと、今言うんじゃねぇよ……」


「だって、今言わなきゃ言い逃しそうだから」


そう言って、奴は良い笑顔を見せた。


次の日の朝、日が昇ったと同時に沙樹は息を引き取った。


『それでも救いは世に転がる』

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