短編 無防備
@Karakame
無防備
「なんでお前はそう無防備なんだ。」
スカートを履いているにも関わらず、机の上に脚を投げ出す彼女を見て言った。
「みんな見てないよぉ、私のスカートの中なんて。」
まだまばらに人がいる放課後にこんな格好なのだ。スカート云々よりも倫理的に考えて咎めている俺の気持ちを、こいつが理解する日は来るのだろうか?
「第一、見ようとしなきゃ見えないでしょ?この格好でも。」
「…そうだな、俺がしゃがめば確実に見えるぞ。」
前から二列目の彼女が投げ出した脚の直線上、教壇でチョークの粉を集めている俺がチョークを落としたフリでもして盗み見れば、きっと彼女の下着の色はおろか、装飾やデザインまで露だろう。
「見たい?」
彼女はなんでもないような声で言った。周りの人に聞かれたら誤解されるだろう。そう言おうと思ったが、いつの間にか教室には俺と彼女しかいなかった。
「何色でしょうか?」と、彼女が悪戯に笑う。その笑顔は、彼女が俺を信頼しきっている証だった。
もし俺が下世話で、変態だとか、助平だとかその類の性癖の持ち主で、それを周りに、彼女に認知されていたら、きっと今我慢することなく、彼女に注意することもなくチョークを落としたフリでもして盗み見ることができたのだろうか。
「…見ないよ」
彼女の「無防備」は、俺の淡い恋心と自尊心の前では「完全防備」だった。
短編 無防備 @Karakame
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます