バトル終了――今明かされる真実

「ば、馬鹿な……ヒミコ、ヒミコーッ!!」


 既に意識の無い、グッタリしている彼女に、照彦は何度も何度も呼びかけていた。


 護はなんともいえず、その側で立ち尽くしていることしかできない。

 ミナはというと、何の価値も無いものを見るような冷たい視線を照彦に向けている。



 どうして勝利できたのか、については、既にミナに聞いていた。

 さもウザったそうに説明する彼女が言うには、タケミナカタが持つ、隠し効果とのことだった。


 隠し効果とは、特定の戦姫に与えられている、ゲームの画面には表示されない特性のことだ。


 例によって、プラスに働くかマイナスに働くかについては世の中の他のゲームと同様、神人戦姫も、モノによって異なる。


 タケミナカタの隠し効果は、『痛みを怒りに変える』というべきもので、早い話が、HP・MPが減った分攻撃・神攻に上乗せされるというものらしい。


 今回、最初の攻撃で、17500のダメージを受けていたのだから、単純に加算されるとしても、32000+17500で、49500。


 アマテラスの防御が23000であるからHP21000を削り切るにはこれでも十分過ぎるだろう。


 「ヒミコがミナに不意打ちを仕掛けた時点で、実は勝負は決まっていたんじゃないのか?」と護が言うと、ミナはこう言った。


「仕掛けがわかっちまえば防ぐ方法があったかもしれねーだろ。俺の天神必殺の一撃ゴッド・スラッシャーは無駄撃ちじゃねえ。最強の囮ってことだ。そんなこともわかんねえのか?このクズ野郎は」


 護は、何ともいえない深い心の痛みを感じるとともに、粗暴なようでも戦いのエキスパートというべきセンスを持つこの戦姫に感嘆せざるを得なかった。


「まあ、お前が途中でギャアギャアわめいたのが、こちらの真意を悟らせない煙幕にはなったがな……」


 ガシッと頭をつかまれて言われた。

 これは、フォローしてくれていると受け取って良いのだろうか?

 

 そんなこんなで、勝利した側については凸凹ながらも上手く話がまとまっていたのだが……敗北を喫した側は惨めだった。


 照彦は、自身の勝利を疑っていなかったのだろう。

 勝負が決まったあの一瞬、彼は呆然としてしばらく動かなかった。


 武士の情けとでも思ったのか、ミナが彼のすぐ近くにヒミコの体を放ると、思い出したかのように、それにすがりつき、今に至る。


「ヒミコ、目を開けてくれよ、ヒミコ」


 半狂乱というのはこういう状態を言うのだろう。

 手の施しようが無い。


 しかし、いつまでも続くことはこの世にはない。


 ヒミコ、アマテラスの体は、限界を迎えたのか、ボロボロと崩れ落ち、見る間に消えていったのだ。


「テル……」


 照彦は立ち上がると、護のほうを物凄い目で睨んできた。


「マモ、お前、絶対に許さん!」


 そして掴みかかってくる。


「くっ、テル……テルっ!?」


 次に食らうであろう衝撃に顔の前を両手で庇い、目をつむる。

 しかし、不思議なことに何の痛みも無い。


 うっすらと目を開ける。

 

「テル!?」


 目の前に、確かに照彦は存在している。

 しかし、もう、向こうが透けて見えるほどにその存在は薄くなっていた。

 護の体をつかもう、殴ろうとしてはいるようではあるが、まったくかすりもしない、というか、体を全てすり抜けて行く。


「ど、どういうことなんだよ……」


 そして、最後に、護に向かって何か叫んでいるかと思うと、次の瞬間には消えていた。


「やつならゲームオーバーだ……ソウルクリスタルを数えてみろ……くっ、俺も時間のようだな……」


 その声に隣を見ると、そこには、いつもの身長になった可愛らしいミナがいた。首をかしげてこちらを見ている。


「ソウルクリスタル?どういうことだ……」


 スマホの画面を凝視する。

 HPが……10に戻っている。

 クリスタルの数が……2に増えていた――。


「どういうことなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 護の絶叫が、裏庭に木霊した。

 しかし、それに答えるものは誰もいなかった。




……ここで一旦筆を置く……

……ああ、エスエスランカーの神人です、の話はこれで終わりってことな……

……続きは、また、そのうちに、な……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

★6を手に入れたら人生変わりました 英知ケイ @hkey

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ