スキル発動――これで決まるか?
ああ、ちなみに固有スキルっていうのは、他の戦姫に無い、該当戦姫のみのオリジナルスキルってことな。
これに対して汎用スキルってのもあるんだ。
こっちは同じ名前の技を複数の戦姫が使用できると考えてくれていい。
流石に戦姫増えてくるとな、スキルの名前考えるのも大変だしよ。
それに、同じ性能の回復技が全部言い方違ったら、かえってユーザもわけわかんなくなるだろ?だから汎用スキルなんだぜ。開発側だけの都合じゃない。
おっとまた話がそれたか、すまない。
これは、タケミナカタが天の神の攻勢にひとり立ち向かった神であることを評価してのスキルだと言われている。
え?
そんなスキルあるなら、毎ターンそれ使えば無双じゃん?
スキルにはクールタイムってのがあってな、一度使うと、スキルごとに決められたターンが経過するまで使えないようになっているんだ。
だから連射はできない。
もっとも、これは通常の神人戦姫の話だからエスエスモードの仕様だとどうかはわからないがな。
ともかく、32万の攻撃なら、敵のヒミコの防御が高くても、HP全て削っておつりが来るからな、先制攻撃で削りきって勝つために護はこれを選択したんだ……。
ミナの右手がこれまで以上に光り輝く、そして立ち上る青い炎、彼女は目を閉じ、一旦その手を後ろに回す。
「我が父、オオクニヌシよ。今この封印を解くことを許したたまへとかしこみかしこみ申す……全力でいくぞっ!
言うなり目を見開き、右手を前に突き出し、飛ぶ。
その姿は大きな青き光の矢となって、敵に突き刺さる。
大爆発!
ミナは、そのまま通過し敵の背後に回ると、技を解き、右手を上に掲げてポーズを決めて決め台詞を言う。
「せいばいっ!」
しかし……。
「やっぱりそう来ると思ってたぜ。他に選択肢はないもんな」
照彦は不敵に笑っていた。
「何いってるんだよ、照彦。攻撃32万だぞ。お前には悪いけど、何も残らないぞ……何?!」
爆発の埃が徐々に晴れると、そこには無傷のヒミコの姿があった。
「
そうだ。
自分の戦姫がスキルを使えるということは相手の戦姫も使えるということだ。
アマテラスのスキル、
必然的に、使ってくるスキルの分からない初見のストーリーボスや、強力なスキルを持つボス敵との戦いでは必要とされ、初期★5ではあるもののアマテラスの人気は未だ高いのだ。
そうだな、例のゲームの旗振る女子みたいなもんだよ。
ちなみに、こちらは、アマテラスが引きこもった岩戸があまりに固くて、彼女が内側から開けるまでは、天の神全員でかかっても開かなかったという故事に基づく性能である。
「エスエスモードでは、自己に対して影響するスキルの発動はターン開始時に同時なんだ。残念だったな、マモ」
「くっ」
また振り出しに戻ったことになる。
しかし、本当に困った。
それが無傷でかわされた今、他に手立てはない。
「……」
悔しいが今度こそここまでなのだろう。
俺も、ミナも頑張った。全力を尽くした。
ミナ……。
彼はふと傍らに戻ってきたミナの方を見た。
「何みてんだよ。ぶっ殺すぞ」
見た瞬間いきなりである。
彼女はぜんぜん落ち込んだり、事態に怯んだりしていないようだ。
「もう、打つ手がないってのに、お前、どうして普通にしてるんだよ?」
「『もう、打つ手が無い?』……何いってんだ、テメー?」
さっきまでは、彼女の護の扱いは、『お前』だったと思っていたが、とうとう『テメー』にランクアップしている。いや、ランクダウンか?
護は全く嬉しくなく、抵抗じみたことを言おうとしたが、彼女が言わんとすることに気がつき、確認する。
「打つ手……あるのか?」
「あるっていうか、もう勝ってる。敵のアイツは、さっきのスキル、二度は使えないからな。他にあの手の防御技・回避技は無かったはずだ」
「えっ?」
護は狐に包まれたような顔をした。
ミナさん、あなた言ってることわからないんですけどー、と素で言いたいが、それを言ったら真面目に殺されかねない気もする。
「ふん、わかんねえか」
そして、護の心は完全に読まれているようだ。
「まあ、いい。俺を信じろ、お前はただ、俺に攻撃するよう命じればいい。それで……終わりだ。あのクソ女神を血祭りにして、勝利をお前の手にくれてやる」
まだ、納得はいかなかったが、護は、そのミナの勢いに屈して頷いた、いや、頷くしか無かった。
「ようやく観念したか?マモ」
照彦はうんざりとした、待ちくたびれた顔をこちらに向けてくる。
「なあ……テル」
「何だ?命乞いか?」
「ハハッ、そうかもな。どう見ても劣勢な状況の俺から言うのもなんだけどさ。ここでやめるわけにはいかないのかな……」
横にいるミナが、キッと自分を睨んでくる視線を痛いほど感じる。
怖い……それでも、護は負けずにつづけた。
「俺お前のこと、親友だって、ずっと変わらず思ってるんだぜ」
「そうか……それは、俺も、そうだ」
「だったらっ!」
「だからこそだ。まだ、今のお前はまともそうではあるが、きっとそのうち戦姫の狂気に飲まれる。前にもいったが、俺は何人もがそうなるのを見てきた。お前をアイツらみたいにさせるわけにはいかない」
「テル……」
なんということだ。
照彦は、護を友人だと思うがゆえに、戦うというのだ。
これでは止めようがないではないか。
「わかったよ、テル。最後までやろう」
「今度こそわかったか、すぐに楽にしてやるから、安心しろ、マモ」
お前こそ狂気にのまれてるんじゃないのか?
護は友人の、その明らかに自分に向かって今まで口にしたことがないであろう言葉に悲しくなった。
現実への悔しさに右手の拳を痛いほど握る。
そして、言い放つ。
「ミナ、攻撃しろ」
「何っ!?通常攻撃だと?」
その刹那、ミナがぐいっと姿勢を一旦かがめると、反動でジャンプし相手に飛びかかった。
そして、右手を相手の胸に伸ばす……。
「み、ミナ……お前……」
「なん、だと……」
ミナのその右手が、ヒミコの背中から出ていた。
そして、
その手には……
その手には、躍動する心臓に似た、
ミナの指は容赦なくそれに食い込んでゆき、
ヒミコの頭は、その爆発と共に、がくりと崩れる。
ミナはそれを見て、満足げに笑うのだった。
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