眠らせぬ夜の執事
腹筋崩壊参謀
【短編】眠らせぬ夜の執事
満月が輝く夜更け、また私の口から大きなあくびが漏れてしまった。
私は外資系の企業で働いているごく普通の女性会社員。いつも色々な仕事が舞い込んで大変だけど、毎日何とかやりこなしている。だけど最近、私はある悩みを抱えている。毎日朝が早いのに、夜になってもなかなか寝付けない事だ。家に帰ってから夜までテレビやネットを見てばかりいたのも原因だろうけど、そもそもく寝ないと、と思ってもいつも目がぱっちり開いてしまいどうしても眠る事が出来ない。もしかしたら使い古した枕が原因か、と思い、この前通販で買った新しい枕で眠ろうとしたんだけど、やっぱり眠れず、今に至ってしまったという訳だ。
なかなか眠れない人にお勧め、夢の世界にすぐ行く事が出来ます、なん売り文句が書いてあったはずなのに、結局私はいつもと変わらずベッドの上でゴロゴロしてばかり。また明日も寝不足気味で会社に行く事になるのか、って心配になってしまう。でもいけない、今日こそはこの新品の枕でちゃんと眠って生活リズムを整えないと、会社の成績にも影響してしまうかもしれない。本当は会社なんて行かず、ずっとゴロゴロしていたいけれど、そう言っていられないのが辛い所だ。
そんな事を考えていた時、私はある事を思い出した。こういう眠れない時のお約束、あれを数えれば眠れる、という言い伝えだ。
羊が1匹。
『めー』
羊が2匹。
『めー』『めー』
羊が3匹。
『めー』『めー』『めー』
羊が4匹。
『めー』『めー』『めー』『めー』
羊が5匹、羊が6匹、7匹、8匹――。
『めー』『めー』『めー』『めー』『めー』『めー』『めー』『めー』
――やっぱり無理、何匹いるのか気になって、全然眠気がこない。だいたい、どうして羊なんて数えるんだろう、別に他の動物でも問題ないんじゃないかなって思えてきてしまうほどだ。ネズミが1匹でもいいし、イヌが1匹、ネコが1匹でも大丈夫じゃないかな――って、そんな事を考えていたらますます眠れなくなっちゃう。下手すれば一睡もできなくなってしまうかもしれない。こうなったら、動物でも何でもいいから数える事が出来るものを思い浮かべないと、と思ったとき、私の中に素晴らしいアイデアが浮かんだ。
黒い燕尾服をびしっと決めて、手には白い手袋をつけて、足は皮靴を履いて、そして温和さと真剣さを交えた眼差しで私に忠誠を見せる――やっぱりこういう時は羊よりも『執事』が一番。昔からずっと大好きなものを数えればうまく眠れそうな気がしてきた。よし、そうと決まれば、早速数えないわけにはいかない。
えーと、執事が1匹、じゃない1人――。
『お呼びですか、お譲様?』
――良い感じに私の頭の中に理想の執事の姿が思い浮かんできた。黒いタキシードを着込んで、ベッドの上で横になる私の傍で微笑むイケメン執事が1人という光景が、ありありと目に浮かぶようだ。でも、まだまだこれだけじゃ眠れない。
執事が2人
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』
私のベッドの両側にお揃いの執事が笑顔で並んで――いい感じにイメージが膨らんできた。でも、まだ眠気は一行に訪れないから、もっともっと執事を数えないと。
執事が3人。
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』
今度は3人も私を見つめて微笑んでいる。でもまだまだ全然眠くない、更に数えないと。
執事が4人。
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』
あぁ、私の側に美形の執事が4人もいるなんて――そんな事を考えていると、何だか逆に興奮して余計に眠れなくなってきたような気がしてきた。でも、ここで止めちゃうなんて何だかもったいないし、それにもっともっと執事がいた方が楽しい。こうなったら数え疲れて眠くなるまで、どんどん執事を数えちゃおう。
執事が5人。
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』
執事が6人。
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』
執事が7人。
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』
執事が8人、執事が9人、10人――。
『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』『お呼びですか、お譲様』…
~~~~~~~~~~
――執事が165人、執事が166人――。
「お呼びですか、お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」……
――あれ、どこまで数えたっけ。確か164人か165人だったような気がするけど。それよりも、何だかずっと数え続けていたお陰か、ようやく私の体が眠気に包まれてきた。枕の効果なのか、それとも執事たちの癒しの力は分からないけど、これで今日はぐっすり眠れる事が出来るみたい。それじゃ、おやすみなさ――
「「「「「「「「「「お譲様、お止めになるのですか?」」」」」」」」」」
――わわ、びっくりした。一斉に執事たちが私に向けて語り掛けてくるから――って、何がどうなってるんだろう。右を見ても左を見ても、私の周りをたくさんの執事が取り囲んでいる光景が、目の前からずっと消えないなんて。しかも、皆服だけじゃなくて顔も髪型も、ついでに声もみんな同じ――みんな凄い美形で格好いいけど、どれがどの執事だか、分からなくなりそうだ。
「「「「「「「「「「「もっと私を数えて下さい、お譲様」」」」」」」」」」」
うん、そう、これは夢。100人以上も執事をずっと数えている間に、私はぐっすり眠っちゃったに決まっている。そうじゃないと、こんなことなんて有り得ないから。だったら、それなら周りを囲むイケメン執事たちの期待に応えて、もっともっと執事を数えないわけにはいかない。でも今何人なのか忘れちゃったけど――。
「「「「「「「「「「「「現在は166人ですよ、お譲様」」」」」」」」」」」」
――あ、ありがとう。し、執事だから主人を助けるのは当然だよね。でも一斉に声を出されると結構ビビっちゃうのが本音だけど。
えーと、執事が167人――。
「お呼びですか、お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」……
――私の周りに167人の執事が取り囲んでいる――何だか改めて見ると凄い事になってきたような気がしてきた。
「「「「「「「「「「「お嬢様、続きを数えないのですか?」」」」」」」」」」」
あ、ごめん。えーと執事が168人、執事が169人――。
「お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」お譲様」……
~~~~~~~~~~
し、執事が1991人、199、せんきゅうひゃく――。
「1992人ですよ、お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」……
あ、ありがとう――執事が1992人、執事が――いや、これは絶対何かがおかしい。さっきから私が数える度に執事がどんどん増えてばかりなんだけど、本当にこれって夢なの?夢だとしても、どうしてこんな光景を見続けているんだろう、私。確かにあの枕には『夢の世界へ行く事が出来る』って謳い文句があったけれど、だからと言って2000人近くも沢山の同じ執事がいる夢だなんて――。
「どうなさいましたか、お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」お譲様?」……
――そう考えた私は、執事たちに謝りつつこうお願いをした。数も凄い多くなったし、それに私も明日早いから、この辺で眠らせてもらいたい、と。
「そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」そうですか……」
執事たちは一斉に悲しそうな顔を一斉にこちらに向けて来るけど、仕方ない。だ執事は主人の命令を聞かなきゃならないし、それにここは私の夢の中、私の考える事が絶対だから。もう執事を数えるのはやめて、今度こそぐっすり寝て明日に備えないといけない――。
「でしたら、私が代わりに『私』を数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」数えましょう」……
――え、待って、どういう事?
「私が1992人」
私の代わりに執事が執事を数えて、ってまた数が!?
「お呼びですか、お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」お譲様♪」……
そ、そんなに執事は要らない!2000人も必要ないから!
「私が1993人♪」「私が1994人♪」「私が1995人♪」「私が1996人♪」「私が1997人♪」「私が1998人♪「私が1999人♪「私が2000人♪「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が「私が……
や、やめてえええええ!!
~~~~~~~~~~~
気づいた時、汗だくになった私の体はベッドの上に横たわっていた。近くの時計を見ると、既に起床時間を指している。いつの間にか、私はぐっすりと眠りに就いていたようだ。
確かにこの枕にあった、夢の世界へすぐ行くことができると言う売り文句は正しかったのかもしれない。その夢の中身は理想のイケメン執事が無尽蔵に増えるという悪夢そのものだったけれど。幾ら私好みの美男子でも、あまりに数が多すぎるとどうにもならない。あのような怖い夢の中にいるよりは、大変だけど現実世界で仕事に打ち込むほうがましだ。そんな事を考えながら、私は思いっきり部屋のカーテンを開き――。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「おはようございます、お嬢様♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
――そこに広がる光景を目に焼き付けてしまった。私が住んでいるマンションから見える景色という景色を、地平線が見えるほどに覆い尽くしていた、燕尾服が似合うイケメン執事の大群――いや、イケメン執事の海を。
そして、慌てて振り向いた私の部屋の中もまた、一瞬でイケメン執事に埋め尽くされてしまった。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「さあ、これからずっと私を数え続けましょう♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
ここは夢なのだろうか、現実なのだろうか。あの時目覚めた事自体が単なる錯覚なのだろうか。だとしたら、この夢はどうして覚めないのだろうか――。
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「私が43278009人♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
――ねえ、ここはどこなの。私は一体どうなってるの。執事なんでしょ、早く教えてよ、ねえ!
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「私が6943882828人♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「私が87251082109人♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「私が5872374212910531人♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「私が5723857109584282002人♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「私が1930930394392054298620人♪」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」
お願いだから、もう数えなくていいから――!
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――だれか、私を起こしてぇぇぇぇぇぇ!!!
≪おわり≫
眠らせぬ夜の執事 腹筋崩壊参謀 @CheeseCurriedRice
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カクヨムを、もっと楽しもう
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