隻眼のジョニー

昔家にはジョニーという猫が居た。勿論名前は私が勝手につけたものだ。

ジョニーはトラ猫で、不細工だった。

面長で鼻筋も驚くほど太く長い、そして片目が潰れていた。

親が拾って来た時にはすでに潰れていたらしく、恐らくカラス辺りに啄まれて潰されたのではないかと思われる。


私は猫が好きではない。だから見た目が不細工だろうが、頭が壊滅的に悪かろうが特に気にはしない。

ただ一つ、どうしても受け入れられない物があった。それは臭いだ。


ジョニーは臭かった。

潰れた目のあたりがよく膿んでおり(目ヤニ?リンパ液?)、とにかく臭かったのだ。

どれぐらい臭いかというと、運動後の私の足といい勝負をするレベルで臭かった。


ごめん、嘘をついた。流石に私の足の臭いとなら、足の圧勝だ。

とは言えやはり臭いものは臭い。

だから私はジョニーと若干距離を置こうとしたのだが、何故かこいつは私に懐いた。

恐らく臭いもの同士仲良くしよう。とでも考えていたのかもしれない。


よく甘えるふりをして、足にガシガシごしごしと膿を擦り付けてきた物だ。

最初こそ膿の感触が気持ち悪かったが、慣れてくればどうという事はなかった。

寧ろにゅるにゅるして気持ちい……いや、何でもない。

問題は寝ている時だ。

寝ている私の顎に膿をモリモリと押し付けてきたのだ。

あれは流石にきつかった、足程ではないにしろ、強烈な異臭が鼻の近くの顎に押し付けられると、流石に臭くて敵わない。


だが私は耐え抜いた。人としてのプライドが、猫如きに敗れる事を許さなかったのだ。そして私は奴に完全勝利した。


奴が亡くなって早数年、昔の事を振り返りふと思う。


あれ?あいつ俺に懐いてたんじゃなくて、孫の手やティッシュ扱いしてただけじゃね?と。


私はジョニー勝った気でいたが、実は私の完全敗北だったのではないだろうか?

だとしたらとんだピエロもいい所だ。


やはり猫は恐ろしい。



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