『幸せ』な家庭は『狂ってる』
俺の嫁は狂ってる。娘に『しあわせ』を強要して。それで何が幸せだというのだ。アイツがアイツの『しあわせ』を押し付けることで幸が苦しんでいることに気付かないのだろうか。
そのせいで幸はいつしか自分を殺して生きるようになってしまった。表情や感情は乏しい。『死』に対する抵抗も欠如しているように感じる。
本来、止めねばならぬのは俺なのだが、アイツはそんなことをすればヒステリーを起こして俺の首を絞めてくるだろう。そうなれば幸にも迷惑がかかる。しかし――俺が止めねば。
嗚呼どうしたら良いのだろうか。知恵も勇気も無い俺が、唯一娘を守る為に出来る事……それはあの毒親から遠ざける事。そう簡単には事は進まないだろう。けれどやらねば。俺が守らないで誰が守るんだ。アイツのせいで幸は助けてくれる友達を持たない。
――離婚、それはアイツの両親が許さないだろうな。
だからとりあえずは、逃げる。
狂ってるこの家から逃げなければ。幸が自由に羽ばたけるような環境を整えるんだ。
「幸、バレないように荷物まとめて来い。逃げるぞ」
「えっ」
「この家から、逃げるんだ」
果たして雛鳥の逃亡の立役者に俺は成れるだろうか。いや、やるんだ。この歪で刺まみれの牢獄から飛び立つんだ。
さいわいなことり 東雲 彼方 @Kanata-S317
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