第3話 やっと会えたね
「ど、どういうことだよ! おい!!」
峯がわめいた。俺もさすがに冷静でいられなかった。
一体なにが起きている? 田中先生が殺された? 赤ちゃんと三上の死体はどこに消えた?
そしてもう一つの違和感はロッカーだ。左端の隅にポツンと立っていたはずなのに、並べられた中央の机の横まで移動していて、仰向けに倒れているのだ。扉は閉まっている。
「ロッカーがなんでこんなところに......」
川田が倒れたロッカーに歩み寄り、何気なく触れた瞬間「あつっ!!」と声を上げ手を引っ込めた。
「ど、どうした?」
「すごく熱かった」
川田は触れた手をさすっている。俺もロッカーに近づき、覚悟の上で触れてみると反射で手が引っ込んだ。
「なんでこんなに熱いんだ」
異様な熱さだった。一瞬太陽に当たりすぎたのが原因と考えたが、これほど熱くなるとは思えなかった。
峯も同じように触れ、同じ反応を示す。
俺は持ってきた雑巾を軍手代わりにしてロッカーをあけた。
「ひやぁぁぁぁ!!」
刹那、川田が驚きのあまりに後ろに吹っ飛んで尻もちをついた。
峯も「え?」とロッカーの中を覗きこむ。
その中には、骨が入っていた。それも全身のパーツが揃っているようだ。丁度ロッカーに収まっている。
「じ、人体模型?」
そう思っても仕方ないが、俺は峯に首を振った。
「本物だ。多分三上の骨だと思う」
「は!? 桃の骨だと!?」
俺は頷く。
「このロッカーの熱さからして、中で焼却されたんだ」
「先生がやったのか?」
だとしたら、証拠隠滅だろう。
「もしくは、田中先生を殺した犯人が燃やしたか」
犯人の場合は分からない。なぜ三上の死体を燃やした? こころが消えたのも多分犯人が連れ去ったのだろう。そもそも、こんな事が起きるということは、俺達の顛末を知っていたということにならないか? 犯人の目的は一体なんだ?
「だったら早く警察呼ぶぞ! いや、その前に先生か」
峯が勢いで教室を出るのを俺は引き止めた。
「ダメだ! まず掃除を終わらせてからだ! 机の血が田中先生じゃなくて三上と知られたら面倒だ」
峯は足を止め、くるりと再び向き直ると、「あー!クソっ!」と頭をくしゃくしゃと掻いた。
俺と峯の川田は最終下刻に近づくのを焦りながら、急いで血や羊水を綺麗にした。田中先生と思われる血はあえて拭き取らなかった。
「よし、綺麗になったな、じゃあさっさと先生を」
「まだダメだ! 三上の骨をなんとかしないとさすがにやばい」
ロッカーの中に三上の骨があると、さすがに話がややこしくなって、挙句の果てに俺達のやってきたことも無駄になりかねなかった。
「どうするの?」
川田が神妙な面持ちできいてくる。
「骨を3等分にして、3人で持って帰ろう」
「え!?」
「まじで!?」
2人が同時に目を見開かせた。
「うん。リュックにつめよう。早くしないと見回りの人が来てしまう」
俺達は各々のリュックに渋々骨を詰めていった。中の教科書は一旦全部外に出した。
峯が「この骨、後でどうするんだよ」とあばら骨を鞄に入れながら口にした。俺は「いつか各々海に行って、重りと骨を入れた袋を沈めてくれ」と答えた。
リュックに骨を入れていくが、誰も頭蓋骨を手にするものはいなかった。俺は仕方ないと諦め、三上の頭蓋骨は俺のリュックに収められた。
「よし、これで大丈夫なはずだ」
俺達は先生を呼ぶ前に窓から入ってきた痕跡を消すため雑巾で指紋を拭き取り、他になにか見落としはないかと3回家庭科室を細かく見て回った。
その後、峯がおばさんの先生を連れてくると、「キャッ!」と目と口を大きく開かせた。
それから何分後かして警察がきて、俺達は事情聴取を受けた。
俺達は家庭科室で田中先生に進路について相談をしていたと口裏を合わせた。俺達の進路は少し特殊なので、あっさりと信じてくれたようだった。
そして、俺達3人が帰ると申し、田中先生は少しここですることがあるから先に帰っててと言っていたことにした。そこで俺が忘れ物をして取りに帰った際に、田中先生が殺されていたという筋書きだ。
事情聴取が終わった時は、もう既に9時を回っていて家に帰ると母さんにドヤされた。何があったか嘘の説明をすると、鬼の顔は同情へと変わった。
それからしばらくして、警察から犯人と思われる人物が特定されたと連絡が入った。
俺は最初その名を聞いて耳を疑った。
三上 桃
包丁の柄の部分に三上 桃の指紋が付着していたという。他の指紋は確認されなかったらしい。それは、赤ちゃんをタオルで巻く際になんとなく俺が拭いたからだ。
それと包丁の血と地面をルミノール検査したところ、三上 桃のものと田中先生の血が検査結果にでてきたようだ。警察は包丁についていた三上の血を、何かの拍子で自分を傷つけてしまったと推測を立てていた。
その三上は今は行方不明となっていて、警察に追われているらしい。
俺はそんなはずはないと口にはしなかったもののそう思っていた。当然だ。三上には包丁を握らせていないし、こころを産むと即死んだのだ。いや、俺が殺してしまったといっても過言ではない。あれが狸寝入りで、俺達が雑巾を探している間に三上が包丁を持って田中先生を殺したなんて考えられないし、それだとロッカーの骨を説明できない。
俺はしばらく推理すると、こういう結論に至った。
犯人は俺達が雑巾を探しに行ってる間に、家庭科室に入り田中先生を包丁で殺した。廊下で雑巾をが全く見当たらなかったのは、恐らく犯人の仕業だ。
田中先生を殺した後、犯人はこころをまずどこか安全な所に置いた。それから犯人は三上の腕を切り落とした。包丁の柄の部分の自分の指紋を拭き取ると、代わりに三上の手で包丁を握らせ指紋をつけさした。その後、三上の死体と腕をロッカーに入れて燃やした。恐らくマッチかなんかを使ったのだろう。そして犯人はそのままこころを連れ去らってどこかに逃げた。犯人はここの生徒か学校先生のはずだ。
しかし、俺には犯人の動きが分かっても、その犯人を突き詰める推理力はなかった。
警察も捜査に苦戦しているようで、なかなか三上 桃の行方を掴むことはできないようだ。俺は一生三上が姿を現すことはないと知っている。
被害者の田中先生についても色々きかされた。俺は妻と5歳の娘がいることや、温厚で女子にも人気があったとそれだけ伝えた。
近日に田中先生の葬儀も行われた。斎場で俺は田中先生の奥さんと娘さんらしき泣き姿を見つけてしまうと、いたたまれなくなりその場を離れた。
そして、事件が過ぎてからも俺はずっと頭の隅で犯人とこころのことが忘れられないでいた。
それから15年が経った。
俺には妻と5歳の息子がいた。
日曜日のoff、つまり休日のお昼ご飯、息子がテレビをつけると「あっ! パパだ!」とはしゃいだ。
テレビには「満塁サヨナラを神の肩で抑えた」と見出しに、俺がインタビューを受けている。
その自分の姿を見て老けたなと思った。俺も33歳だ。
俺はあれ以降、無事プロ野球に入団し、それからは順風満帆な人生を送ってきた。24の時にアナウンサーの妻と出会い付き合い始め、26に結婚し、28歳で息子が誕生した。芸能ニュースで嫌というほど報道されたのを覚えている。
自分の下手なインタビューを見ていると、もぞかしくなり俺はチャンネルを変えた。息子が「あっ!」と残念そうにしたが、無視した。
たまたま変えたチャンネルはニュース番組だった。どうやら殺人事件が起きたらしい。
殺人事件を耳にすると、今でもあの嫌な事件が鮮明に蘇ってくる。高校を卒業してからは峯と川田とも会っていないし連絡もとっていない。そもそも俺たちはそんな関係ではない。
あの頃の真犯人もまだ捕まっていない。今頃あの赤ちゃんはどんな風に成長しているのだろうか、もしくは死んでしまったのか、と心の中で気にかけるのは今でも少なくない。
俺は思考を停止し、再びニュースに目を向けた。物騒だなと思いながら画面に被害者の名前がでてきた。
『峯 龍馬』
「ジャニーズ事務所に務めるタレントの峯 龍馬さんが昨夜自宅の廊下で殺されているのをマネージャーが発見しました」
俺は手から箸が滑り落ちた。「あ! パパ箸落とした!」と息子が無邪気そうにするが、まるで耳に入ってこなかった。妻もジャニーズの峯 龍馬とはテレビで関わりを持っていたので、「嘘......」と唖然としていた。
「現場には犯人のものと思われるメッセージのようなものが残されていました」
そのメッセージがテレビの画面に映し出される。
『1人目を殺した。後2人。こいつは偽物だったけど、ママを殺した1人だから復讐の対象だった。本物は最後のお楽しみ』
俺は震えが止まらなかった。恐怖から来たものかは分からない。それでも体に電流を流されたかのようにブルブル震えたのだ。
「ちょっとあなた大丈夫?」と妻が肩に手を添えてくるが、感覚はなかった。
やがて、震えは止まると頭の中でこう反芻した。
こころは生きていて、峯を殺した。
メッセージには峯 龍馬が偽物と記されていた。これは恐らく峯が父親ではなかったということだろう。
そこで、15年前の血液型の話をしたことを思い出した。俺はあの頃の記憶が鮮明なので、峯の血液型まで俺は覚えていた。B型と言っていた。偽物ということはこころはB型ではないということだ。
そして、どうやってそれを知ったかは分からないが、田中先生も偽物の1人だったのだ。それはこころの最後の文『本物は最後のお楽しみ』でわかった。既に本物が殺されていたらこんなことは書かないからだ。
つまり本物はどちらか2人。俺か川田だ。
俺は箸を拾わないでいると、妻が代わりに拾った。
「龍馬くんと高校一緒だったって言ってたわよね? 友達だったの?」
違う、友達だからこんなんになってるんじゃない。
しかし、そうとでも言っておかないと面倒だから俺は「ああ」と答えた。
「あんまり、気を悪くしないで。犯人もすぐ捕まると思う」
妻の慰めは俺の心に1ミリとも響かなかった。
その時、外で郵便屋が来たようで、ポストに物が入れられる音が家の中から聞こえてきた。
「あら、なにかしたら」
妻がそれを確かめに外を出た。すぐに戻ってくると息子が「見せて見せて!」と無邪気にはしゃいでいた。妻は息子を「後でね」と軽く流しては、それを見て訝しそうにしていた。
「なんだよそれ」
「なんかDVDのようなんだけど、なにかしたら」
妻が確かにディスクケースにはいった白いDVDを手にしていた。
「なんてかかれてあるんだ?」
「こころの誕生って書かれてあるわ」
心臓がドクンと大きく跳ねた。
俺はすぐさまそれを妻から強引に奪い取った。そして、ダッシュで2階の自分の部屋に閉じこもった。
「ちょっとあなた! なんなの! 説明して! もしかしてエッチなビデオとかじゃないでしょうね!」
ドア越しに妻の声が聞こえるが、耳に入ってこなかった。
俺は自分のノートパソコンを起動させ、側面にあるディスク挿入口に『こころの誕生』とかかれたDVDを入れた。
動画時間は約3時間もあった。これからなにが再生されるんだと心臓がドキドキいいながら、俺は矢印を再生ボタンに持っていきクリックした。
真っ暗だった。画面は動いているようだけど、何を映しているのかわからない。
少し経つと、暗闇の中に明るい横線が縦3つに並べられている光景が映し出された。
それがロッカーの隙間から家庭科室を録画されているのだと理解するのは数秒かかった。
画質は15年前のものなので少々悪い。
俺は心臓が高鳴るのを止めることは出来なった。
あの時、あの教室でもう1人いたんだ。ずっと俺たちをロッカーから覗いていたのだ。
そう思うと、背中がゾクッとした。
そして、俺は確信した。この撮影者が犯人だということを。犯人は入ってきたんじゃなくて元々いたんだ。
それから何もないまま2分が経過され、ドアが横にゆっくりと開かれた。家庭科室に入ってきたのは川田だった。
久しぶりにあのまだ高3にして小柄な川田を見たが、何故か懐かしさは感じられなかった。
川田は俺が思っていた通り、やはりあの時は告白されると思って来たのだろう、かなりおどおどしていて落ち着きがない。辺りをキョロキョロとするとこちらに近づいてきて、ロッカーの横に座った模様だった。僅かに黒い髪の毛が横線の隙間から見える。
それから3分後、再びドアが開かれた。立っていたのは峯だった。
数秒後、峯が口を開いた。
「俺を呼び出したのはお前か?」
女子じゃなかったのか不機嫌そうだ。
「ち、違うよ」
川田の小さな声はギリギリカメラのマイクを拾っていた。この時の川田の顔もなんとなく想像がついた。
「お前じゃないの? てかお前、確か全国模試一位の川田とかだったよな」
「う、うん」
「お前ももしかしてこの手紙で呼ばれたのか?」
峯は制服のポケットから紙の切れ端のような物を取り出して、川田に見せているようだった。カメラでは何が書かれているのか全く分からなかったが、予想はついた。
「うん、僕も同じの貰った」
「ちっ、なんだよ。女子じゃねーのかよ」
峯が舌打ちしながら真ん中の方へと向かっていく。このカメラでは死角で峯の姿は映し出されていない。
それから何も会話がないまま数分が経ち、俺が現れた。
それからは俺も知っていることだ。俺は動画の時間を2時間半の所までスキップした。
動画を再生した直後、俺は慌てて停止した。三上が炎の海に放り込まれたかのように苦悶の叫びをあげていたからだ。
俺は胸が痛みながらもう少し先、20分後にスキップした。動画が終わるまであと10分だ。
その場面は俺と峯と川田が丁度雑巾を探しに行こうと家庭科室から出たところだった。
俺は映像を目を凝らして息を呑みながら観ていた。
この後に事件が起きるんだ
そう思った直後、俺の心と連鎖したようにロッカーの扉が開かれた。
カメラが家庭科室全体を映していて、その中で田中先生がこころを抱えたままカメラを振り向いた。
田中先生は目を丸くした後「ま、丸山さん!? ど、どうして!?」
俺は今、この映像で映っている田中先生と同じ表情になっているに違いなかった。
丸山。そいつは3年生になってずっと三上と一緒にいたやつだ。いや、あの二人の仲良し度からして3年生になる前から関係があったかもしれない。
こいつが犯人だったのだ。田中先生を殺してこころをさらったのだ。
丸山は呆気に取られている田中先生を数秒撮ったあと、画面が乱れた。カメラを足元に置いたようで、田中先生の両足が映っている。
そのまま画面左から丸山の足が出てきたかと思うと、地面に血が飛び散り、田中先生が膝からバタンと倒れ、同時に包丁も落ちた。田中先生の腰から上だけが映っており、うなじが痛々しかった。こころがいないとなると丸山が抱いているのだろう。
丸山の足がこちらに近づいてきて、カメラを手にすると、そこで映像は終わった。
俺は半ば放心状態でいた。
丸山が犯人だったなんて想像もしてなかったからだ。
丸山はカメラを停止した後、家庭科室を閉め、三上をロッカーの中で焼却した後、こころを抱いて窓から逃げたのだ。
その時、丸山はどんな気分だったのだろうか。丸山と三上は親友関係だったはずだ。ロッカーから覗いていて、ただ平然と様子をカメラで撮っているとは考えられなかった。
そもそも丸山は何故カメラで撮るような真似をしたのか。家庭科室でみんなが来る前から待機していたのは、これから何が起きるか知っていたんだろうか。それがもし、三上から知らされていたという理由なら、三上自身このロッカーに親友の丸山がいたことを存知ていたのか。
そして、丸山は頼まれてそうしたのか。
それとも自分から内緒でそうしたのか。
俺は15年振りに事件について思考を巡らせていると、扉越しの妻の声で我に帰った。
「わたし、けんちゃん連れてお買い物行ってくるから」
「おー」
俺は適当に返事をする。
ワークチェアにもたれかかれ一呼吸をすると、動画の画面が光ったので思わず目をむける。
画面には大きな白い家が映っていた。
映像はまだ終わっていなかったのだ。
俺は身を乗り出し、パソコンの画面と至近距離でにらめっこした。
真昼間のようで、俺と同じくらい豪華な住宅が映し出されていた。
誰が住んでいるんだと思っていると、カメラがその家の高価な表札を映した。
『川田』
そう刻まれていた。
あいつ金持ちだったんだな。
表札の上にインターホンがあり、画面の下から軍手をはめた指がひゅいっと出てきて、それを押した。
ピンポーンとなり、やがてインターホンから「どちらさまですか?」と聞き覚えのある声がした。それが川田の声と分かると、川田にしてはやけにハキハキした声だなと思った。
そこでハッとなった。画質が妙に綺麗になっている。最近の技術だ。それと川田の声からして、これが最近録画されたものだと知った。
「お届けものがあります」
撮影者と思われる声が聞こえたきた。俺はそれが丸山だと思っていたが、丸山にしては声が高すぎた。それに若々しい。
俺はその時、心臓が大きくなった。そして徐々に動悸が激しくなってくる。
「やめろ、出るな。川田出るんじゃない」
俺は無意識にそう口にしていた。
しかし、俺の声は届くはずもなくインターホンの向こうで「はい」と川田が答えた。
撮影者は立派な門扉を通ると、扉の前で立ち止まった。
やめろやめろやめろやめろやめろ!
ドクドクドクと鼓動が自分にも聞こえてきて、激しさを増していく。
カメラに映し出される黒い扉が「はーい」という声と共に開かれた。
そこにはちょび髭のメガネでもうおっさんの川田がいたが、15年前の幼さは面影として少し残っていた。
川田は撮影者を見て「あ、あれ? お届けものは?」と不思議そうにした。
「お届けものは私です。愚か者」
川田は何を言っているのか分からないようで、目を細め顔を突き出し「はい?」と声にした束の間、川田の目が大きく開いた。
画面が少し下にずれると、出刃包丁が川田のお腹に刺さっていた。そこから溢れるように血がドバドバと垂れている。
「き、君は......」
声にならない言葉で断末魔を残し、川田はその場で倒れた。
撮影者が仰向けに倒れた川田を映し出す。すると、画面左から軍手をはめた左手が出てきて、紙の切れ端を川田の胸ポケットにいれた。
「こいつも偽物。あとは最後の一人。待っててね」
映像はそこで終わった。さっきみたいにまだ続いているのではと確かめたが、しっかり2時間58分48秒で静止されている。
俺は深呼吸を何度もした。
そして認めざるを得なかった。
こころは俺の子だ。
さっきの川田の家を映し始めた時から時間は過ぎていて、撮影者は丸山からこころへと変わっていたのだ。
そのこころが最後に口にした言葉「こいつも偽物。あとは最後の一人。待っててね」
あれでこころの父親が俺ということが分かった。
そして、あの紙切れ。俺には何がかかれているかは予想はついた。先程の峯が殺された報道でもあったメッセージと大差ないと思った。きっと復讐の対象は残り一人とかかれているに違いない。そして、それは俺だ。
俺も殺されるんだ。
そう悟った瞬間、心を読まれているかのように部屋のインターホンがなった。外のそれがなると、俺の部屋にも聞こえる仕組みだ。
俺は恐る恐る画面に映る正体を確かめた。しかし、そこには誰もいなくて、前方の家があるだけだった。
俺はもしかしたら妻が忘れ物をして取りに来たのではないかと思った。
俺は1階に降りて、玄関まで行った。
「紗栄子か?」
玄関扉越しにも聞こえる声で言ったが、返事は帰ってこない。
俺は鍵がしっかりと施錠されてあることを確認すると、逃げるように踵を返した。
すると、ガチャ、と鍵が開く音をした。
鍵を持っている? じゃあやっぱり妻?
俺は肩越しに扉を見つめていると、やがてゆっくりと開かれた。
そいつは妻ではなかった。息子でもない。
娘だった。
娘のこころは手に出刃包丁を持って既に血だらけだ。
こころは悪魔のような笑でこういった。
「やっと会えたね! パパ!」
ダレの子? 池田蕉陽 @haruya5370
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