前日譚一 到着

 歪んだ道を通り続ける。やがて、その歪みが徐々に元の形へと戻ろうとしているところで光が見えた。

 その光を抜けると、そこは中世にも似た家の壁がそびえていた。

 どうやらこの街の路地裏に繋がっていたらしい。


「さてと、無事着きましたね。正直、ここまで正確に場所にゲートを開けることができるとは思いませんでしたよ」


 そんな不安になるようの事をポツリと溢した男は、懐に手を入れ、何かが書かれて紙を取り出した。


「では、無事着いたことどすし今後の予定をお伝えしたいと思います」 


「それは良いのだけど。そのゲート閉めなくても良いの? まだ、中に人がいるなら閉じなくてもいいのだけど……」


「あぁ、そうでしたね。まぁ、仮に中で人がいたとしてもどちらか近い方の世界へ飛ばされるので問題はないでしょう。そもそも、そのような事にならないようこんな路地裏に出口を作ったわけですしね」


 そう笑いながら、男は穴に手を差しのべる。やがて、それは小さな穴へと変わっていき、やがて何もない壁だけが残った。


 これが事実であることについては、体験してしまったために嘘だとは言えない。

 だが、これがどういう原理で働いといるのかが全く検討がつかない。


 こんな技術があったのなら、私達が研究していたものの数十、下手したら百年先のことをなし得ていると言ってもいい。


「さて、それでは……おや? どうかされましたか?」


「いえ、、、いや、ここで一つ聞いておきたいのだけど、一体その技術はどうやって造られてるの? よかったら教えて欲しいのだけど……」


「ハハハ、そんなことですか。確かに教えたいのは山々ですがこれは企業秘密。さらに言ってしまえば、これは私が少々アレンジを加えた自信作ですのであまりお教えしたくはありませんね」


 当然といえば当然の返答だった。


 これだけの技術を手放しで話せるほど簡単ではないのだろう。


「そう、分かったわ。それじゃあ説明をお願いできるかしら」


「はい、分かりました」



 そこからは、資料も使った簡単な説明が繰り広げられた。


 一つ、今この世界は五つの勢力に別れて戦争を始めようとしている。


 一つ、私が属するチームは別世界から集められた様々な人で構成されている。


 一つ、この戦いで多くの世界の未来が決まる


 重要なのはこの三つであろう。もちろんここまでの説明は以前、会った時にも聞いた。


 その後は細かい様々な説明と、他にどんな人が来ているかなどを教えてくれた。



「へぇー、巨大ロボが実用化されている世界があるなんてね……」


「おやっ? 興味がおありで」


「それは一応、科学者ですかね」


 機会があったら一度会ってみたいものね。


「さて、それでは先ほどの説明にもありましたベルをお渡しします」


 渡されたベルは、ヘアゴムの飾りとして何らおかしくないようになっていた。


 常に体に付けなけばならないが、さすがにスーツに付けるのは不具合が出るかも知れなかったのでヘアゴムにしてもらった。


「では、あなたを雇い主の所まで案内します。そこで私の引率は終わりです」


「あら、そうだったの。私はてっきり最後までいるものだと思っていたわ」


「えぇ、まぁ、私の仕事は貴女方の勧誘と案内。ですが、一番にしないといけないことは記録を取ることですねで」


 記録。つまりは今まで培ってきたカンパニー全ての記録。


 ……どうしよう。戦争よりそっちの方が気になってしまうのだが。


 これ程の技術を持っているカンパニーの記録を知れば、何か解決の糸口が掴めると思えるのだが。


「ちなみにその記録というのは…………」


「教えることは出来ませんね」


 フゥ、そうよね。こんな世界を遊び半分でどうこう出来る組織の情報なんて、それこそ億の金額がかかっていてもおかしくないもの。


「さて、それではお話はここまでとして、早速新しきリーダー候補の一人へ会いに行きましょうか。そこまでの道のりは私、サトウが責任もってお送りしましょう」


 相変わらずの不健康そうな顔で、ニッと、サトウは笑った。

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