カセットテープ

@takeyamakouiti

第1話 カセットテープ

まだ携帯なんて無い頃。中学生だった自分に電話がかかってきました。


夏休み中の夕飯時で、たまたま電話を取った相手は中学の友人でした。


『今から借りているカセットテープを返しに家に行ってもいいかな?』


要約するとこんな内容だった。


(カセットテープなんて夏休み明けでいいのに何言ってるんだろ?)


昼間ならまだしも電車で小一時間はかかるのに、これから返しに来るという電話。


しかも外は雨だしどうしちゃったんだろうと不思議に思った。


どうしても返しに行きたいと言い張っている友人に対し、上記のことを理由に無理して返しに来なくてもいいよと電話を切り家族にも話をした。


次の日、自分宛に電話がかかってきました。それは前日に電話で話した友人が亡くなったという連絡でした。


昨日の四時ごろ交通事故にあい病院に運ばれ治療を受けたが間もなく亡くなったそうです。


しかし、自分が電話で話しをした時間はそれよりも遅い時間なのは確かだ。夕飯の最中だったから概ね七時くらいだったはず。


まじめな子だったから借りたものが気になっていたんだろうな。と、その時は考えた。


だが、布団の中に入って一人になった時に気になる事があった。


(あの時、家においでって言ったらどうなったんだろう・・・)


(というか死んだ人と話したし・・・)


(テープ持ってきたらどうしよう・・・)


(また電話きたらどうしよう・・・)




それより気になっているのは、二階にある自分の部屋を覗き込んでいる黒い影だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カセットテープ @takeyamakouiti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ