ゆっくりと自然に読み手を「エルフリーデ」にしてくれる

心情の推移や描写がとても丁寧なので、怒りや悲しみなどの激情が大袈裟に描かれていないのに、さざ波のように持っていかれていつの間にかアンネに気持ちを重ねてしまいます。
登場人物には、役割と個性がしっかりと与えられているので「誰だっけこの人?」となる事なくすんなり覚えられました。
説明口調で終わらせる事なく丁寧に仕上げる文章力、かつ中だるみさせない高い構成力を感じられるスマートで優しい物語です。
読み手を置いてきぼりにしない、寧ろ気付けばどっぷりと引き込まれていました。
ラストを早く読みたいような、いつまでもアンネとオスヴァルトのいる世界に浸っていたいようなこの複雑な気持ち…。