第3話

 夕陽が半分沈んだ。魔王は気絶していた。目が開いた。起き上がると周りを見た。隠居してから暮らしていた木の家があった。魔王は見知った山に居ることが分かった。立ち上がり家に入った。非常食を棚から出して食べまくり非常食をつまみにお酒を飲んだ。「うまいうまい」

 水を汲みに外出した。茜色の空は夜空に変わっていた。滝の水をその場で飲みまくった。「暗い。夜だ。火を灯そう」

 魔法で火を放とうとしたが出ず何回も行ったが火は起きなかった。自分の魔力を感じることも出来なかった。寝ぼけているのかと思い服を脱いで滝を浴びようとすると尻尾が無いことに気づいた。オカヤマは暗闇の中で山を駆け抜けた。町に着き診療所に向かった。寝ている医者を起こして診てもらった。

 「魔王様。尻尾が無ければ魔法が使えませんね」

 「そんな。どうしたら」

 「尻尾をくっつければいい。まだ切られた尻尾が存在するならそれが出来る。切断面を合わせればすぐにくっつくでしょう」

 オカヤマは診療所から魔王城に向かった。自分が隠居する前に部下だった魔人に尻尾の在りかを調べるよう頼んだあと城で眠った。早朝に現魔王の寝室に入った。「おはようタネガシマ」

 「おはようございますオカヤマさん。お久しぶりです」マッサージチェアで肩を叩かれまくっている現魔王タネガシマは手を挙げた。「話は聞きました。魔法が使えなくなったと」

 「うん。そうなんだ」

 「それもおそらく勇者に尻尾を切られたと」

 「うん」

 「あなたは過去の人間国との戦争で大変活躍しました。ほとんどオカヤマさんのおかげです。あなたのおかげで今この世界の7割を魔人国が支配しています。残りの2割が人間国。1割がモンスター国」

 「なるほど」

 「そのあなたが勇者にやられて尻尾を切られたというのは大変なことです」

 「はい」

 「なのでオカヤマさんには暗殺されて頂きますぅ」

 「やだよ」

 「嘘です。暗殺なんてしません。でも事故には気を付けてください」

 「タネガシマ…………」

 「これから歯磨きするので出て行ってください」

 「分かった」

 一週間後。尻尾の在りかが判明した。尻尾は勇者の家の押し入れに在る大量の割り箸をまとめる紐になっているということだった。魔王オカヤマは暗殺される前に尻尾を再生させようと人間国へ一人で旅に出かけた。一度目に人間国に向かったときより速く着くルートを知った。徒歩で移動し海の街に着いた。長い橋が巨大な丸い湖に直線で架かる。その途中に孤島が浮かんでいる。その日は嵐だった。豪雨。曇天。オカヤマは道具を何も持ってきていなかったので笑いながら雨に濡れて歩いた。オカヤマは3時間かけて片方の橋を渡り切り孤島海の街に到着した。孤島は堤防で囲まれている。ビルが建て並んでいる。皿回しの箸と皿のような形の建物が大小並ぶ。皿部分の天井全体は透明になっている。「あの建物のどれかはホテルだ。入ろう」

 お金は元部下の善意で頂いていた。

 身体はびしょ濡れだが風は生ぬるく風邪をひきそうにない。「巨大で丸い湖。孤島と島の両端に架かる橋。スマートだ」

 オカヤマは島を歩きホテルに宿泊した。翌朝も嵐だった。朝食はバイキングだった。サラダを食べまくっていると隣のおじさんがこちらを見ていた。

 「あの。すみません。魔王様ですか?」

 「そうですよ」

 「あ。握手してください」

 握手した。

 「サインください」

 他の人から頼まれた。オカヤマを中心に人だかりが出来た。

 「一緒に写真撮ってください」

 「私の悩みを聞いてください」

 「息子に祈りを捧げてください」

 頼まれたことを一つ一つこなしていった。

 おじさんがオカヤマのお尻を見る。「ところで魔王様。なんで尻尾を隠してるんですか?」

 「隠してるんじゃないんだ。尻尾切られちゃったんだ」

 「え? そうなんですか」

 「うん」おじさんからショートケーキを顔にぶつけられた。「なにするんですか!」

 「サプラ~イズ」

 「「「いぇ~い」」」

 先ほどまで頼んでいた魔人たちはオカヤマとハイタッチした。その後ホテルから出て近くで路上販売をしているお菓子を購入しようと財布を出した直後に隣の子供が財布を取って逃げていく。

 「まて!」オカヤマも全力で走ったが離されて見失い立ち止まった。近くに居た他人に近付く。「将来プロになるよ」

 再び歩き始め移動しながらお菓子を食べる。

 今は小雨だ。スキップしながら歩こう。彼女は遅刻した俺を許してくれるかな。

 オカヤマは便意を催したのである建物の中に入った。トイレに入ると先ほどの子供が財布からお札を抜いていた。同時に子供はオカヤマを見ていた。オカヤマは相手に近づいた。「返してくれ」

 股間を蹴られ前のめりに倒れた。子供の足音を聞きながら悶絶した。しばらくして起き上がり外に出ると子供は待っていた。「俺の名前はルドルフ。善人だ」

 ルドルフは取った財布を彼に渡した。財布の中身を確認したところを見届ける。「昼飯奢ってくれ。2日食べてない」

 「善人ルドルフ、分かった」2人はレストランで食事をする。

 ルドルフはパンを食べる。「なんで食事を奢ってくれたんだ?」

 「一人旅をしてて旅先での縁を大切にしてる」

 「そうか。なんで旅をしてるんだ?」

 「ルドルフはなんで財布を取ったんだ?」

 「最近両親がいなくなった。今日初めてこういうことをした。この孤島に来る観光客は多いし警戒心も皆無いから出来ると思った」

 「善人ルドルフ。財布を相手に返すのは予定事項だったのか? それでこれから毎回食事を恵んでもらうのか?」

 「善人っすよ。それと財布を返したのは思いつき」

 「なんで俺に財布を返したんだ」

 「トイレにオカヤマが来たとき俺に逃げ場は無かった。俺はそのとき捕まると思った。だが股間地獄蹴りが決まった。それでオカヤマは安全だとなんとなく思った」

 「なるほど」

 ルドルフは頼んだ食べ物を全て食べきった。「オカヤマはいつまでココに滞在するんだ?」

 「もう出て行くよ」

 「え! じゃあこれで奢りは終わりか!」

 「そりゃそうさ。俺目的があって旅をしてるから」

 「俺飢え死ぬよ?」

 「今日を一生懸命生きれば明日はやってくるさ」

 「そんな・・・・・・」

 2人は外に出た。

 「というわけで俺は行くよ。元気でな」オカヤマは人間国の方へと進む。

 「見送るよ」ルドルフは笑顔を作った。

 「・・・・・・そうか」

 2人は島の端まで来た。その間に雨と風が強くなった。

 「それじゃ俺は行くよ」オカヤマが手を振って橋を渡り始める。

 「じゃあな」

 「おう。ルドルフも達者でな」

 離れていくオカヤマに聞こえるよう堤防を越えるルドルフ。「じゃあな」

 「おいおい(笑)。危ないぞソコにいたら(笑)」

 波がルドルフをさらった。

 オカヤマは橋の欄干を握る。「うそぉ!」

 戻って堤防の前まで来て魚に変身する魔法を使ったが変身しなかった。「あああああああ」彼は走って助けを求めた。後日ルドルフの死体が見つかった。オカヤマは放心して人間国へ向かった。気づいたら山に来ていた。何も食べずに木を背にして念仏を唱えて数日を過ごす。夜になりフラフラさ迷い滝を見つけたので打たれたあと滝から出て倒れ起き上がり細い木を折り尖った石で木に『ルドルフ』と彫った。木を地面に差して3日3晩それに祈り続けた。夜が明け山から下りた。「ルドルフみたいな人を助けるために魔法はある。頑張ろう」

 人間国に向かい進んでいると平野に家が一つ在った。他には山と地平線のみ見える夜だったので家に泊めてもらうことにした。扉を叩くと老人が出た。

 「泊めてください」

 「名前はなんと言う」

 「オカヤマです」

 「入りなさい」

 「いいんですか」

 「旅人を泊めたくてココに家を建てたんだ」

 「ありがとうございます!」中に入った。

 「私の名前はテノフ。座りなさい」椅子を引く老人。「ちょうどスープを作っていた頃だ。飲ませてあげよう」

 オカヤマは座って15分ほど待つと濁った白色のスープが出てきた。スプーンを受け取りかき混ぜて飲む。「ドロドロのスープですね。骨の破片みたいのも入ってますし。何から作ったんですか?」

 正面に座りスープを飲むテノフ。「この平野によく現れる鳥だ。このあとはソレの肉を食べるんだが君はどうする? 眠いなら先に寝ていい」

 「食べます」

 鳥の丸焼きを2人で食べて酒を飲みテノフから平野に家を建てるまでの経緯を聴いた。

 「私の過去は話した」

 「オカヤマ君はどうなんだ。なんで旅をしてる?」

 「皆を助けたくて」

 そのあと魔人国創成伝説の話題になった。

 「オカヤマ君は悪魔ボロニャーの話を知ってるか?」

 「創成伝説の絵本はよく読んだけどそれは知りません」

 「ここらへん。といっても周りは平野だがここらではボロニャーの昔話が有名だ。ボロニャーは初めは敬の国の敬人だった。ボロニャーが敬王に使いを頼まれて惑星の地下に向かったときに愚者コロンと出会った。それを機に2人は仲良くなる。愚者コロンはボロニャーを惑わし反乱を起こさせた。ボロニャーは敬の国を追放される。敬人でなくなったボロニャーにコロンはエネルギーを与えた。そのエネルギーでボロニャーは地下人を不死にし自分の支配下に置いた。不死の者たちと共に敬の国を攻めようとしたがそれを事前に察した者がボロニャーを攻める前にボロニャーを葬った。その者が後に初代魔王になるという話なんだが」

 「おかしいな。全く読んだことないですね。今度読んでみます」

 それから少しして家の扉がノックされた。旅人エリャフ。宿泊者が2人になる。残っていた鳥の肉も無くなり3人は語らう。

 エリャフは未知の景色を見る旅をしていた。隠居後に旅行していたオカヤマの知っている場所も多々在り話しは盛り上がった。テノフは先に眠りに着き朝に起きると2人は1階で話していたのでミルクを飲ませた。2人は急激に眠くなり気を失ない目を覚ますと小さい電球一つが明かりの暗い小部屋に居て椅子に座っていた。身体は椅子と共に紐で縛られていた。

 「どどどどうなってんだ!」

 「落ち着けオカヤマ。テノフさーん。居たら返事してください」

 「おはよう」テノフが部屋に入ってきた。ナイフを持った手をブラブラさせる。

 「ちょうどよかった。テノフさんそのナイフで僕らの紐を切ってください」

 「それは出来ないなエリャフ君」

 「どうして」

 テノフは砥石でナイフを研ぐ。「私は宿泊者を殺め彼らの金品で生計を立ててるんだ。昨日食べた鳥を狩るのにもお金がいる」

 「そんな。許してください」

 「恨んでない。君たちはなにもしてない。全て私の都合だ」

 「そんな・・・・・・」

 エリャフの呟き。オカヤマの悲鳴。

 テノフはナイフを研ぎ終える。「今からするのは殺める前の私の趣味。嗜虐だ」

 テノフはエリャフの頬を軽く切った。

 「いだあああ!」

 「そうだろう」

 「やめてください!」

 「いや止めない」

 「助けてぇ!」

 「フッフッフ」

 オカヤマが止めるよう言うと彼も頬を軽く切られた。オカヤマはピクリともしない。肩を刺され堪える。

 「んふー。んふー。フッフッフ」テノフは興奮する。上から硝子の割れる音が聞こえた。女性の声も聞こえた。「別居中の女房だ! 窓を割ったのか!」

 丸テーブルにナイフを置いて部屋から駆け出た。走った。記憶した部屋を渡って階段を登る。リビングから玄関へ。散乱した硝子を跨いで扉を開けるとムスッとした女性が立っている。

 「遅いじゃない」

 「今豚を買っててな。餌をあげてたんだ」

 「けてー。・・・・・・かー」

 「奥から声が聞こえるわ」

 「豚だ!」

 「豚? 本当に? これが?」

 「本当だ!」

 「れかー・・・・・・すけてー」

 「ブヒィ! ブヒ! ブヒィ!」テノフは女性を押して家から離れさせていく。

 オカヤマとエリャフは助けを呼ぶのを止めた。

 「エリャフ。ナイフで縄を切ろう。テーブルの脚は一本だ。倒して落ちたナイフを拾って切るんだ」

 オカヤマが椅子ごと移動して机を倒して自身と椅子も倒した。エリャフは動く足首でナイフを蹴ってオカヤマの椅子の背に縛られている手に移した。2人は自由になって部屋を出る。前と左右に通路が在りどの通路にも幾つもの扉が存在した。左に走り2番目の扉を開く。前と左右に扉が在り部屋には衣服や旅道具が置いてある。通路に出る。

 「手分けして出口を探そう。見つけたら声で知らせる」

 テノフが銃を持って戻ってきた。安全装置を外しながら階段を下りて初めのドアを撃った。「お前ら悪いことしてないだろうなあああ。してたらお仕置きだぞッ」

 ホラー映画のシリアルキラーのようだと2人は思ったが相手の位置はおおよそ把握した。

 「左斜めに階段があるっぽいな。エリャフもそう思っただろう」オカヤマは前と左の扉を開けて進む。途中に大量の薬品が置かれた部屋があったので危なそうな液体の入った瓶を持って進んだ。2人は出会い共に階段へ進む。

 「ねんねしなよおおお♪ ああ♪ ねんねしなよおおお♪」叫ぶテノフが前の部屋に居ると分かった2人は扉の前で待機する。扉が開くとオカヤマがナイフで一突きした。死体を見た。2人が階段へ向かうと後ろでテノフが立ち上がり笑った。「俺は不死身だ」

 オカヤマが迎撃態勢を取る。

 老人はオカヤマの後ろを指差す。「おい。エリャフが逃げたぞ」

 「そんなわけないだろ」オカヤマはテノフを見た。エリャフがテノフをパンチした。テノフを押さえつけ銃を拝借する。テノフはナイフで刺され立たないが生きている。2人は階段へ向かった。上と下の2つの階段があった。上に行くと扉が在るが幾重にも鍵が掛かっていたので体当たりした。扉は頑丈だった。テノフの子守唄が聞こえたので下へ続く階段を下りた。古い扉が在り体当たりして中に入った。外の明かりで分かる部屋の形。奥のベッドに古く分厚い本が置いてあった。なんとなく開くと外から強い風が吹き本のページがパラパラめくれた。止まったページから3D映像みたく悪魔ボロニャーが現れた。

 「・・・・・・我は悪魔なり」

 「ボロニャー。あの老人の不死を解いてくれ」

 「無礼者よ。お前は誰だ」

 「オカヤマです。12代魔王」

 「そうでしたか。分かりました。今解きます」

 遠くでテノフの叫び声が聞こえた。

 「では私はこれで失礼します」ボロニャーは消えた。

 2人は上の階段を進む。途中に死体が在ったのでポケットから鍵を取り上の扉を開け地上に出た。

 「助かったよエリャフ」

 「こっちもおかげで生きられた」

 2人は握手し別れて旅を再開した。

 オカヤマは旅を続けているとカエルが他のカエルに虐められていたので助けた。するとカエルは着いてくるように言うので着いていくと鮮やかな赤色の湖に来た。カエルは着いてくるように言い湖に入った。善意だと思ったので着いていく。

 「息を吸ってみてください」

 言われた通りにする。「息が出来る!」

 カエルはにっこり笑った。水中に城が在った。中に入ると優しい笑顔の人魚達が居た。眼が黄色いのが印象に残った。カエルが理由を話すとオカヤマは彼女たちにもてなされた。城の中の大きな部屋に連れていかれた。

 「うぇーい」オカヤマはそこでハーレムを築いた。「ずっとここに居ようか・・・・・・ダメだ」

 皆が寝静まった頃にそっと部屋を出た。来た道を覚えておらずウロウロしていると腐った臭いのする部屋があったので開けると人骨の山が在った。

 「みぃたぁなぁ」

 後ろで声が聞こえた。見ずに駆け出し城外へ逃げた。人魚達は追ってこなかった。その後彼は旅を続けとある湖を小船で渡ることになった。船頭の女性にお金を渡す。

 「女性とは珍しいですね」

 「・・・・・・・」

 女性は帽子を深々と被っていて顔が見えない。オカヤマが船に乗ると女性は漕ぎ出した。湖の真ん中辺りまで来たとき女性は漕ぐのを止めた。

 「どうしたんですか?」

 「ウフフ」

 バチャバチャと音が聞こえた。水面を見ると人魚がいた。

 「ウフフ」

 「ウフフ」

 何人もいた。

 「うわああああああ!」

 櫓を持つ女性は帽子を取った。黄色い眼をしている。人魚達に船は転覆させられた。

 「うわあああああ! やだあ! 死にたくない!」

 水面で暴れるオカヤマを人魚達は掴んで引っ張って岸まで送った。

 「この前怖がらせたお詫びをしたくて」

 「・・・・・・」

 「じゃあね」

 人魚達は水中へと潜っていった。

 船頭だった女性が魔法でオカヤマの服を乾かし彼女も水中へ消えていった。

 「・・・・・・親切」オカヤマは人間国へ向かい進む。

 山を歩き谷を歩き続けて崖を歩いていると前方で立ち往生している3人がいた。彼らの目の前には大きな岩が在った。彼らと会話し仲良くなり一緒に別の道から行くことにした。

 「あなた達はどこに行くんですか? 身なりが旅人という風でもない」

 「俺達はチームで動くトレジャーハンターだ。この山岳に存在する洞窟には死体が在る。それを見つけに行くのさ」

 「死体を?」

 「死体ではない。その洞窟内の石旬がとても美しくそれに魅了されたある貴族がソコを死に場所に選んだ。自分の持っている金銀財宝と一緒に棺に納められそこに埋葬された。その棺の中の物を頂く」

 「いいのか? というかどこ情報?」

 「酔っ払った居酒屋のオヤジから聞いた」

 「有名なら誰かが棺を開けてるのではないでしょうか?」

 「開けられてないとオヤジは断言した」

 話ながら半日で洞窟に到着した。オカヤマは人間国へ向かっていることを伝えた。

 「いいからいいから」のノリで一緒に洞窟内を探索することになった。

 総勢4名が洞窟を進む。

 開けた場所に出た。大きな石旬が幾つも在り透き通った湖が広がっている。

 「綺麗だ・・・・・・」カウボーイホンダがうっとりする。

 「つめて!」水際で足をバタつかせるエイリアスキシジマ。

 「棺みたいのがあるぞ!」指差すホリデイヨネキ。

 高いところに棺は在った。皆は岩を登ってそこに行く。ホリデイヨネキが棺を開ける。金銀財宝が敷き詰められていた。

 「待て!」ホンダが手で皆を制止させる。「取り分を決めよう」

 ホンダはトランプをポケットから取り出しオカヤマに説明した。インディアンポーカーのようなことをする。1回のみ。3と4の8枚で行う。上がり順で取り分が決まる。初めの者に40。次の者に30。次は20。残りは10%の配当金が与えられる。4人の内の誰とでも戦ってよい。複数が同じ相手を指した場合は指した者同士でカードを見せあう。負けた者は配当金の低いところから埋まっていく。早抜け式で先に上がった者から配当金が高くなる。カードを見せあい数字が同じ場合は戦いを申し込んだ側の勝利。同じ相手を指名してる者同士が同じ数字の場合は指相撲で決める。

 4人はカードを額に当てて皆に見せる。オカヤマは笑った。3人共カードの数字は4だった。誰もなにも言わない。オカヤマは考えた。

 俺のカードが3なら皆俺を指名してる。けれどしないってことは自分が3だと考えてるからだ。ということは皆も俺と同じことを考えてる。俺のカードが3じゃないから俺を指名しない訳ではない。俺のカードが4でも指名した側が上がるんだから。それで俺を指名しないってことは俺が4で自分は3だと思ってるから。3と3なら指名できるが他の人達が4であることを知ってる。だから一緒に指名してはいけないから俺を指名しない。なら俺から指名したらいい。と皆も考えている。というか既に分かっている。ならなんで指名しない? なんで今日知り合ったばかりの俺にもお金が入ってくることになってるんだ?

 オカヤマはヨネキを指した。2人はカードを見せあいオカヤマは先に上がった。

 「じゃあ財宝を先に取っていいぞ」

 ヨネキに言われて棺の中の金を手に取ると光輝く財宝の奥からミイラの手が出てきてオカヤマの手首を握った。ミイラが起き上がりオカヤマを湖に投げ飛ばした。ミイラが湖に入ると同時にハンター3人は袋に財宝を入れていく。水中でミイラに攻められパニックになるオカヤマ。振り払い水面に上がり息をする。足首を掴まれ水の中へと引きずり込まれる。オカヤマはポケットから魔王となった者の証として渡されるメダルをミイラに見せた。ミイラは攻撃を止めて頭を下げた。オカヤマは湖から上がり息をする。ホリデイヨネキが財宝の入った袋を持って洞窟から去っていくところが見えた。深呼吸して立ち上がる。「命があってよかった」

 ミイラが湖から上がって魔王にひざまずく。

 「ほいやあ!」オカヤマはミイラの頭を叩いた。ミイラが成仏したので洞窟から出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

隠居魔王の成り行き勇者討伐 倒した勇者達が仲間になりたそうにこちらを見ている! @Kanoooo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ