ぼくと彼女
宮内
ボブカットの彼女
きみがいないと生きていけない体になってしまった。何が何だかわからないが、彼女が半径5メートルを以上離れると息が出来なくなってしまうのだ。窒息死は嫌だ。いや、どんな死に方だって嫌なのだが。
止むを得ずぼくはきみの後ろに張り付くようにして動く。きみは女子トイレのトイレの位置を選ばなければならなくなったし、ぼくは電車で痴漢と間違えられる。きみは嫌な顔一つせずぼくを許したが、それでも前途多難なことに変わりはなかった。思いもよらぬアクシデント。日常は安寧を失い、ぼくは普通に息を吸うのも困難になる。3度目の過呼吸を起こしたぼくの目の前で、きみがぱちんと手を叩いた。
「これで催眠は解けたよ。きみは自由だ。ごめんね。きみがいないと生きていけないと思ったんだ」
なんだって?試しに離れてみれば驚く程簡単に息が吸えた。はぁ。ぼくは吸ったばかりの息を吐く。せっかく解放されたのに、ぼくの体はまたきみに近づき、嗚咽するきみを抱きしめている。なんだ、ちっとも自由じゃないじゃないか。
ぼくと彼女 宮内 @miyauti
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