第5話 化け物①
「私は、この家には
そう言って、彼女は僕の目の前から走り去った。
はぁ……。なにかいけないことでも言ってしまったのだろうか……
だが、“僕とは関わりたくない”それは、結構深く心に刺さっている。
でも、だけど今度は、今度こそは、必ずあの子を守ってみせる。
それが僕にできる唯一の償いだから……
そして、僕はあの子に恋をしている。
償う相手に恋だなんておかしいかもしれない。
だけどあの日、あの時、彼女に出会った時から僕はあの子を守ると決めたんだ。
そう決めたんだから、追いかけるべきだ。
そう思い、部屋から出るとそこにはすごい形相の
「せつ様、咲良様が泣いておられましたが何かおっしゃいましたか?」
「あ、蒼。怖いって、お前のその顔でそれは、ダメだって。」
冷や汗を垂らしながら、少し後ろに引く。
「何をおっしゃったのですかと聞いているだけです。」
それでも、彼がすると怖すぎる……
「別に、
あれ……。蒼がため息ついて呆れてる……
「せつ様、そのような相手に言うと傷つくと分かっている話をわざわざその相手に言ってはなりません。」
「たとえ、咲良が知りたがっててもか?」
「いいですか、せつ様がその事を咲良様に言わなければ、咲良様の人生においての1つの悲しみはなかったことになる。もし、知りたがっていたのなら、オブラートに包むなどして伝える方が、負担は軽くなります。」
よく分からないけれど、咲良を傷つけてしまったのは確かだから、蒼の言う通りなのだろう。頷いておく。
「分かったのなら。早く咲良様を追いかけてください!」
「今からそうしようと思っていたところだ!蒼が呼び止めるからこうなったのだろう。」
『……?!』
直後にわずかだが悪寒を感じた。
同時に咲良の妖力も感じる……
行かなければっ!!
「せつ様、急いでっ!」
「あぁ、分かっている。あとのことは任せた。裕太郎さんに適当に誤魔化しといてくれっ……」
そう言って、僕は屋敷の塀を超えた。
───
はぁっ……
最悪だ……っ。
結局、私には楽しみにしていた許嫁なんて元々おらず、ましてやいい人だと思っていた裕太郎さんがクソ野郎だったなんて……
「……?!」
瞬間背筋がゾクッとする。
どうして、こんな日に……
ずっと下に向けていた顔を上げてキョロキョロと辺りを見まわす。
すると、目の前にボサボサ頭の一人の男がいた。
あぁ、やってしまったわね。
何も考えずに歩いていたから人通りの少ない路地に入り込んでしまっていたようだ。
こうやって、我こそはと有名な私を狙いにくる物の怪だ。
自信満々な奴が多い……
「安倍咲良だな。俺の物になれ。」
そして、本来の姿である
……あっぶな!いきなりね。
「危ないでしょう!他の人巻き込んだらどうするのよ。」
そう、言いながら私は周りに結界をはる。人通りが少ないと言っても、ポツポツと人は通っているみたいだからね。
「断るわ!私は、誰の手下にもなるつもりわないわ。あんたも右目を狙ってるんでしょう?私もこの右目のせいでいろんなやつに狙われるの。あげれるものならとっくに誰かにあげてるわ。」
叔父さんいわく、右目は傷などで使えなくなるとその右目を持っている私が死んでしまうらしい。
さすがに死ぬのは、嫌だ。
「お前が死んでも右目があればいい。俺の物にならなければ、死ぬか食われるかどっちかを選べ。」
物って……私をなんだと思っているのかしら。
同時にせつの顔を思い出す。あの人は、あの人となら、私は右目のことを気にすることなく暮らせるのかしら……と。
ブンブンと頭を振って、現実にもどってくる。今はそんな場合じゃなかったわ。
「どれも、選ばないわ。あんたは、私に負ける。それだけよ。」
そう言って、いつも持ち歩いている愛用の木刀「
ズシャッ
いい音がしたけれど、あまりダメージはなかったみたい……
すぐに私に向かって炎の玉を口から出してくる。
私は、それを避けながら
常世とは、物の怪達がすむ世界だ。私は、ここへの扉を自由に開けることが出来る。
場所とかは、選べないから今自分がいるこの世界の位置をそのまま向こうに持って行く感じなんだけど。
うーん、説明が難しいわね。
そうねぇ、私たちがいる
今回は、現世で言うと砂漠みたいなところだ。
ちなみに叔父さんの家からは、常世の都市へと行けます。
「なっ……。」
その事を知らない輪入道が驚いている。そのまま私は、輪入道を七星剣で扉の向こうに叩きとばす。
「じゃぁねっ!そっちは暑そうだから気をつけて〜。」
「なぜ、そんなことが出来るんだ?!現世から常世へと行くには、正式な扉を使わなければ無理なはずだ!お前は今、自分で開けただろう?!その、
「これは、私自身の力よ。知らなかったの?」
そう、右目がなくたっても私は退魔師界隈のであの安倍晴明を凌ぐほどの退魔師だと言われているのだ。半端ない妖力を持っている。
えっへん、凄いでしよ!
常世へと送ることは退魔師としては、どうかと私も思うけれど、退魔されこの世界からいなくなるよりもずっといいはずだと思ってる。
送ったあとにどうなるかまで、私は知らないけどね。
「反則だ!こんなの有り得るはずがない!」
いえいえ、有り得ますからっ!
扉の向こうからこっちへ出てこようとしているが私が結界をはっているので戻っては来れない。
「化け物がっ!絶対に戻ってきて、お前を食べてやる!」
「はいはい、戻ってこれたならまた、勝負してあげるわ。」
きっと、あいつが戻って来ることはないだろう。それほどまでにこことは、遠いところだから。
扉を閉めた後で、私は輪入道が最後に言っていた言葉を思い出す。
“化け物”か……
物の怪にそんなことを言われるなんて心外だわね。自嘲気味に笑いながら、そう考える。
でも、輪入道が言っていることは間違ってはいない。
私は退魔師からも物の怪からも、“化け物”と呼ばれている。金色の目と私自身が持っている半端ない妖力のせいで……
退魔師なのに夫は物の怪です ( ˶˙Θ˙˶ฅ)キュウリ! @ymsa-aihr
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