前半はまさに学園ドラマ。
主人公たちが楽しそうにTRPGなんかをやっている描写はほっこりしました。賑やかで、穏やかで、平和で、悩みなんて何もなさそうな彼ら。
中盤になってくると、実は彼らは彼らなりにリアルな悩みを抱えていました。
主人公は両親の喧嘩が絶えず、その友人も夢を否定され、上位の成績を維持するようプレッシャーをかけられ、家族を事故で失い……などの超シリアスな展開に。
前半までの平和さは一体どこへ?
さらに後半になってから本番の異世界転生を果たしますが、これもチートなんて何もなしにハードモード全開。
さらに友人は無残にも殺されてしまうし……辛すぎるこの展開。
そんな温度差で風邪引きそうな作品ですが、不思議とページを進む手が止められない。
個性豊かなキャラクターの裏に隠された悩み、そして文章の巧妙さがきっと読者を離さないでしょう。
前半・中盤・後半にかけての作風がガラリと変わるところは見所です!
ただのオタクの生態を描いたライトノベルと思うなかれ……
長い! とにかく日常が長い!
何かを匂わせるプロローグから一転、続くのは主人公と仲間達の掘り下げ。
その文量は、様々な事情とコンプレックスを抱える登場人物たちに感情移入させるには十分過ぎるほどだ。
もしかしたら、ここで読むのを止めてしまう人もいるかも知れないがそれは非常にもったいないと言えよう。
何故なら、五章から大きく動く事になる本作は、ここからが作者の腕の見せ所と言っても良い。
緩から急へ。
静から動へ。
引き寄せられるように一気に読まされてしまう圧倒的な描写力と筆力。
物語が始まるのはココからだ。