まず、読んで思うのは「すばる」とか「文藝」に載っていそうってことでした。
舞城王太郎とか川上弘美とかが書いていそうなテーマだな、と。
もしくは、初期の小川洋子とか本谷有希子の短編集にもありそうで、著者の読書遍歴が読みながら気になりました。笑
骨を抜かれた男、という突拍子のない設定を不自然なく表現できる地に足のついた文章は見事の一言です。
更に、骨を抜かれるという意味についての考察が本文でしっかりと成されていて、とくに骨を抜いた女性の語りは不思議な世界観をリアルにする力がありました。
「骨抜き男」を見つめる冷ややかな潔癖女も、彼と関わることで徐々に骨を柔らかくさせていった結果のラストシーンだと考えると見事でした。
改めて自分って何を考えて生きているのだろう?と、心の深淵から奥底を覗き見るような、『骨抜き』という言葉から展開されていく人の本性や登場人物達の人間模様は、とても繊細で文学的。
お気に入りのフレーズや文の運びを見つけられて、今の私は機嫌が良い。
決して派手ではないけれど、ほんのりとファンタジーがかった哀れな彼と潔癖な彼女の攻防の様子は、とてもリアルで頷ける。
ファンタジーがかったと書いたが、決してファンタジーではない。ある意味、普通にあり得ることだと思う。
骨抜き男を煙たがりながらも結局世話を焼いていく過程は、もちろん興味本位や成り行きもあるだろうが、そうすることで彼女自身も自分と向き合って、来たる骨粗鬆症を未然に防ごうとしているのかもしれない。
早く病院に行け!なんて無粋なツッコミはせずに、まったりとこの物語を堪能してほしい。