補習6 ファーストミッション(コンピュータウイルスとセキュリティ2)

ハヤト「『ファーストミッション』では、俺のENA加入、初めての任務と怒涛の展開でした……先生!本名が明かされて、完全体となったからって、自分にうっとりしてないでください!!」


ククリ「あーら、ごめんなさい。最初から名前が出てる主人公さんにはこの気持ちなんてわからないわよね」


ハヤト「なんだか……すみませんでした。でも、今回の話、この小説にしては珍しくアクションシーン多いし、セキュリティに絡むとこって無くないですか?」


ククリ「ラストエピソードだけに頑張って盛り上げたのね。そうね……唯一ありそうなのは、トモエがアメノムラクモで暴走ロボットのコンピュータウイルスを駆除してるシーンくらいかな」


ハヤト「ククリさんのワクチンプログラムが利用されたシーンですね。」


ククリ「そう、私の作ったワクチンプログラムで、ね。私がいる本部の方は小説では描かれていないから、何をやってるかが見えにくいけれど、現実世界のセキュリティソフトのウィルス定義ファイルとかマルウェア削除ツールを作ったと考えてもらえればいいわ。ダウンロードしたことくらいはあるでしょ」


ハヤト「小説では、アメノムラクモの散布するナノマシンで、対象の情報を本部に送信してそれを元に作成されてたみたいですけど、現実世界だとどうなんですかね?」


ククリ「基本的には同じはず。パソコンにインストールされたセキュリティソフトがウイルスの疑いのあるファイルを、自動でセキュリティソフトの開発元に送って、開発元がそれを解析して作成してるの。『ウイルスバスターズ』でアナタが端末からマザーコンピュータに解析させるシーンがあったけれど、あのイメージが近いかもしれない」


ハヤト「解析って、プログラムコードを確認するんですよね、なんだか凄そうです」


ククリ「しかも、1日数十万から100万を超えるマルウェアが作られてるとかいう噂もある状況だから、開発元も処理をこなすために、解析からウィルス定義作成まで自動化して対応しているらしいわね」


ハヤト「何だか、プログラム対プログラムの戦い、みたいで面白いですね」


ククリ「そこだけ捉えるとそうかも。でもね、セキュリティソフトの開発元さんのおかげでネットワークの平和は守られてるんだから、感謝しないと。だから、ENAでの担当者である私にも感謝なさい!」


ハヤト「ハ、ハイ……しかし、1日100万って恐ろしい数な……」


ククリ「最近はマルウェアを作成するツールや作り方の動画がネットで公開されてて、誰でも作れる状況になってるから無理もない。ちょっと前にも小学3年生がウイルスを作ったとかニュースになってたくらい。それが世界的に、だからね」


ハヤト「俺でもつくれちゃうのか……」


ククリ「そういう『やってみた』っていう軽いノリで作られたものもあるわね、画面にメッセージを表示するだけとか。それでも、日本では不正指令電磁的記録作成罪(コンピューターウイルス作成罪)という、れっきとした犯罪になるんだってこと、アナタは覚えておいたほうがいいかな」


ハヤト「はい……、って作らないですよ!」


ククリ「私の前で、不用意な発言をするからよ」


ハヤト「……以後気を付けます」


ククリ「わかればよろしい。まあ、画面にメッセージを表示するだけなら被害としては可愛いほうだけど」


ハヤト「小説みたいに、重作業用ロボットが工事用現場で暴れる、みたいな被害ではないですからね。俺殺られるかも!って思いましたもん、アレ。あ、停電とか列車動かないとかもありましたね、前にサイバーテロの回で。これも、程度によっては命に関わりそうですね。目的がテロってのが大きいでしょうけど」


ククリ「いい機会だから、他のマルウェアの被害もあげると、ニュースでもよく取沙汰になるけど、感染したコンピュータから情報を盗む、流出させるっていうのもあるのよ。クレジットカードや口座の情報、認証の情報、個人情報、人に知られてしまったら大変。」


ハヤト「マルウェア作者の目的がコンピュータに保存された『情報』ということですね。サイバーテロと関係しなくはないから、そのうちこの作品にも出てきそうだ。もしかして俺も狙われるのかも!?」


ククリ「ちなみに、この手のマルウェアで、デスクトップのスクリーンショットを流出させるっていうのもあったりする」


ハヤト「そ、それはやばい……俺世間的に抹殺されるじゃないですか!!!」


ククリ「ゲームで好みの女性キャラにセーラー服やスクール水着を着せてマイルーム設定してるだけならいいけど、プレイヤー名が自分の本名で、キャラクター名にミキとか実名をつけてるというのはもうアウトね、それだけでスリーアウト」


ハヤト「どこでそれおおおおおおおおお」


ククリ「落ち着くんだ秋津君、これは和光さんと隊長の会話で知った情報だから、マルウェアとかではない。流出はしてない」


ハヤト「いや、それ、もう第三者に情報が渡ってるってことですよね(どこまでいってるんだ?!)……しかし怖いな。そんなのもあるんですね……」


ククリ「マルウェアの1種、その名もスパイウェア。これはパソコンの所有者に気づかれないように感染して、気づかれないうちに個人情報等を収集して外部に送信してしまう」


ハヤト「気づかれないようにか……最後のスクナちゃんみたいなイメージですかね、あれはびっくりした」


ククリ「(ジロリ)スクナに対して変な言い方しないで」


ハヤト「すみません、ごめんなさい、もう言いません(……命の危険を感じた)」


ククリ「仕方ない、そろそろ終わりにしないとだから、許してあげる。さて、前回はマルウェア(ウイルスとワーム)の説明とマルウェアに対する対応方法、今回はセキュリティソフトウェア開発元とウイルス制作者との仁義なき戦い、ついでにマルウェア(スパイウェア)の説明、と2回にわたりお送りしてきました」


ハヤト「行き当たりばったりなイメージでしたけど、こう見るとそれなりに各回テーマがあるんですね」


ククリ「そうなの、でも、もう終わり。まだまだ話したりないのに。私とっても悲しい……」


ハヤト「稲田さん……」


ククリ「というわけで、また私の容赦ない指導を受ける秋津君の姿が見たい方は、本小説の応援、よろしくお願いします」


ハヤト「さらりと酷いこと言わないでくださいよ……では、皆さんまた続きがあれば、そのときにお会いしましょう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ポイント・オブ・ノーリターン 英知ケイ @hkey

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ