ルベルは旅に出る。いなくなってしまったパパを探す為に。大好きなパパと再び暮らせるようになる為に。彼女に愛を注いでくれる、たくさんの仲間と共に──
主人公は10歳の女の子ルベル。彼女が探しているパパとは、彼女の実父で元暗殺者という異色の経歴の持ち主です。彼は監獄島という場所にいるらしいのですが、ルベルのもとに帰ってくる気配は一向にありません。
ルベルは少女ではありますが、その小さな体に秘めているのは不屈の精神と大人顔負けのガッツです。実年齢よりもかなりしっかりしており、頭の回転も早い彼女は、パパに会う為に入念に計画を立てて強引に旅を開始します。もちろん周囲の大人は彼女を一人で行かせるわけにはいきませんから、賢者の青年が巻き込まれつつも旅路に同行することに。
特筆すべきはルベルの健気さ。パパが大好きな彼女の強い想いが周囲を感化し、旅を続けるうちに彼女に絆された仲間が増えていきます。
種族や性格の違う仲間達が仲良く旅をするシーンはとても楽しそうで、自分も一緒になってこのメンバーと旅をしたい気持ちになること間違いなし。そして、皆がルベルの気持ちに寄り添って彼女の力になろうとしてくれる優しさに胸を打たれます。
また、ルベルの父ロッシェが彼女のもとへ帰らない理由もとても切なく…そこには暗殺者として育てられた彼の壮絶な過去、そして妻との悲恋が隠されていました。
この物語はルベルの旅ではあるものの、父であるロッシェの心の旅でもありました。
夫婦の愛。仲間の愛。親子の愛。旅の果てに見つけた様々な「愛」に触れた時、読者も涙せずにはいられません。
楽しい仲間達との掛け合い、切ない悲恋、そして心あたたまる愛情の物語がお好きな人におすすめしたい、とても素敵な作品です。
ひとつの、たったひとつだけの、ささやかで何よりも重い想いが、わずか一〇才の少女をひたむきに動かす物語。
彼女は『絶対に』と言ったことを『絶対に』やり遂げる。
こんなに気持ちが強くて頑固でまっすぐな人に、リアルだろうが物語の中だろうがワタシは会ったことがありません。
誇る自作にすらいません。
「あ、この娘にはかなわないだろうな」と、彼女のまなざしと凛としすぎた笑顔に説得されてしまうわけです。
保護者をいい遣わされた賢者も。
護衛につけられた灼虎も。
道中出逢ったウサギお兄さんも。
旅の最中の鱗属のお姉さんも。
王室から世界を見たくて飛び出した彼女も。
みんなみんな、たった一〇才の少女のまなざしに胸打たれ、託し、知らぬ間に手を取りあって危険を承知で前へ前へ、前へ。
動かないと思われた女王様も、空想生物だと思われていた生物さえも、たった一〇才の少女は動かすことができるのか──いや、『動かすところを見てみたい』と知らぬ間に思っているのです。
ルベルちゃんは『絶対に』泣かない。
ルベルちゃんは『絶対に』諦めない。
ルベルちゃんは『絶対に』離さない。
惰性が本気になって、本気の目線がひとつに集約されたとき、あなたはどこを向いていられると思いますか?
ルベルちゃんのまなざしを、真正面から見ることができますか?
ルベルちゃんと共に、さぁ、旅をしてみてきてください。
強く想う心が気持ちが、一体何を動かせるのか。
これは奇跡の物語ではありません。
たったひとつの、想う心の物語です。
ぶん殴ってでも、首ねっこふん掴まえてでも、絶対にもう離れたくない。
ルベルちゃんの想いと親子の想いを、是非とも最後の一文字まで、ご堪能いただきたいです。
ずいぶん前に携帯小説が流行っていた時代に、一目惚れしたのがハトリ様のこの作品でした。
それから私の心はずっとエレナーゼという世界を捉えて離しません。
パパに会いに行く。
ただその願いを叶えるために、彼女は準備をして、周囲の人を巻き込みつつ行動に出ます。
どんなに絶望的な条件でも彼女は決して諦めません。
旅の果てに、彼女は父親に会うことができるのか。
読み進めていくうちに、気がつくと自分も巻き込まれた人達と一緒に見守りたくなっています。
手に汗握るラストは目が離せません!
結末は、ぜひあなたの目で確かめてみてください。
とってもとっても大好きな作品です。
この作品を皆様におすすめする理由は、主に以下の三点です。
・シンプルかつ深みのあるストーリー
・温かく、魅力的な登場人物
・きめ細かな世界設定
◆シンプルかつ深みのあるストーリー
父親に会いたい。どうしても会いたい。どんなことをしてでも会いたい。
10歳の少女ルベルのその強い気持ちが、会う人会う人の心を動かしていきます。
ルベルの思いが持つパワーには、とにかく圧倒されました。
おそらく最後には、ルベルとともに旅した登場人物たちだけでなく、この作品を読んでいる読者の心すらも動かしているのではないでしょうか。
強い思いはあらゆる障壁を乗り越える力がある――そう思わされた物語でした。
◆温かく、魅力的な登場人物
個性豊かな登場人物も、本作の特長だと思います。
旅の途中で会う人物たちは、少女ルベルのひたむきな挑戦を自身の人生に照らし合わせ、共感し、協力していきます。
性格こそ一人一人違えど、彼らはとても純粋で、格好よく、限りなく温かかったです。
本作品は啓発本ではありませんが、登場人物の言動を通して勉強になったことが多くありました。
◆きめ細かな世界設定
本作は作者さんが自作されていたTRPGの世界設定を使用して作られています。
その緻密な設定に裏付けされた生きた描写は、読む人の五感を刺激していくと思います。
きっと読みながら、この世界を実際に見て、肌で感じてみたいと思うようになるはずです。
10歳の少女ルベルと学者のセロアらが旅をしていく中で、色んな人たちと出会い様々なことを学ぶファンタジー小説です。
ゲーム風ファンタジー小説として発表されていますが、終始和やかな雰囲気でお話が進むことが最大の特徴です。それでいながら人間を始め、魔族・獣人など、ファンタジー小説には欠かせないキャラも数多く登場します。しかも個性的なキャラばかりなので、人種や種族が異なるルベルたちと仲良くする場面もポイントだと思います。
特にルベルたちと魔族たちとの会話が、まるで昔からの友達だったと思わせるほど親密な雰囲気となっています。
同時に作者さまの作品に対する思いや世界観・文章力の素晴らしさなども、本作でしっかりと感じ取ることが出来ます。ほんわかした作風でありながら、RPGファンタジーの世界観が描かれている本作……自信を持っておすすめします!