エピローグ
また今年も夏が来た。お盆のこの時期は特に蒸し暑く、辟易してしまう。
蝉達は正念場と言わんばかりに声を上げ、入道雲が立ち上る。夏というのは本当に賑やかなものだ。
「お墓参りまで来てもらって、ありがとうね」
「ううん、いいのよ。」
七瀬の母さんと墓参りの帰りにばったり会って、そのまま僕の家でお茶することになった。
母親たちの会話を耳にしながら、麦茶を注いでテーブルに運ぶ。
「そういえばケンちゃん、隣町の高校の福祉科に進んだんでしょ?」
「まあ、はい」
「やりたいこと見つけたんだよね〜」
「ちょっと母さんやめてよ」
照れくさくなり、椅子に座りながら母さんを小突いた。
やりたいこと、と言っても明確に何の職種に就きたいと決めているわけではない。ただ、少しでも誰かに寄り添える人間になりたいと思った。その苦しみを全て理解することは出来なくても、生きる手助けがしたい。そう思わせてくれたのは七瀬だ。
「ケンちゃん、頑張ってね」
「はい、ありがとうございます」
その場に和やかな空気が流れた時、ふと窓際に吊るしてある風鈴が鳴った。
「なっちゃんもこっちに遊びに来てるのかな」
「案外、近くにいるかもしれないよ」
窓の外を見ると、庭に咲いた向日葵が風に揺れていた。
向日葵が枯れるまで 望月葵 @fullmoon
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