第2話 遂に来た日
梶との約束から時はあっという間に流れた。
早朝2時
「おう来たか。」
梶の家に着くやいなや、梶が声を掛けてきた。
「おはようございます。」
義之は、車のエンジンを止め挨拶をし、トランクを開け釣道具を乗せる用意を始める。
「義之、エサは途中で買っていくけど、集魚材は持ってきたか?」
「集魚材?」
梶の言葉に疑問系で返す義之。
「まぁあっても無くてもいいけど、魚を寄せるためのエサや。」
と簡単に説明をする梶。
「ないなら、エサと一緒に買えばいいからその時に教えたるわ!」
と梶は笑う。
今回、この二人が向かうところは集魚材の使用が許可されているが、場所によっては禁止されているところもあるので、事前に渡船屋さんなどに確認をしておくとあとあと面倒な事にならずに済む。
「そういったことも含めて釣りは面白いのだ。」
と梶は教えてくれた。
釣道具を車に乗せて出発。
途中、コンビニで、朝とお昼用のおにぎりなどを購入し、車で2時間かけて釣具屋さんに到着した。
「お前は集魚材とオキアミを買わなあかんなぁ。」
店に入るなり、常連さんの如くスタスタと奥に進む梶。
「あった。あった。とりあえずこの集魚材を使っとけばいいやろ!」
梶に勧められるままに、集魚材を手にとり、レジに進む。
「オキアミ9キロ予約してた、梶です。会計は6キロは俺で、3キロはコイツに」
と、話を進める梶。
「オキアミは事前に予約して解凍してくれる店があるから、そんなことも頭に入れておくといいぞ。今回予約したオキアミは、サシも取れるタイプだからあとで、エサ箱もってこいよ。」
「サシ?」
梶の言葉にまた疑問をかかげる義之。
「針につけるエサのことや。サシ用で売ってるけど今回は別に買わなくていい。」
梶は、いつもの如く、簡単に説明してくれた。
会計を終えた二人は外に出て、釣具屋さんに設置されている、撒きエサを練るブースで撒きエサを作っていくことにした。
釣具屋さんの横には、左官屋さんがセメント練るのによく使う、トロ舟とシャベルが無料で貸してもらえる。
「まずは俺がやるから見とけ!あとエサ箱貸しや。」
お手本に梶が、撒きエサを練る。
釣具屋さんに解凍してもらったオキアミを袋からトロ舟に出す。
「まずは、サシエを取るんや。」
「まぁこんなもんか!」とエサ箱に二人分サシエを入れる梶。
「まずは、オキアミをカットしていくんやけど、このカット具合は、行く釣り場とか、オキアミのサイズとかで変える感じやな。そこから考えてオキアミをカットするかしないか、カットサイズはどうするかを考える。今日行く釣り場は魚のサイズも底まで大きくないし、オキアミはLサイズやで、イメージとしては1/3にカットする感じやな。この辺は経験や。」
笑いながら説明をしてくれる梶。
先端の平たいシャベルの先を利用し、サクサクをオキアミをカットする。
カットが出来たら、集魚材を上から1袋分振りかける。
「綺麗に混ぜるコツは、オキアミを覆い隠すように集魚材をいれてから、満遍なく混ぜると綺麗に混ざるぞ。」
さりげないコツなんだろうが、勉強になる。
「よしっ完成や、あとは、バッカンに入れて終わりや。義之もやってみろ。」
「わかった」と返事をし、トロ舟にオキアミを入れ、カットし、集魚材を入れ混ぜる。
「こんな感じでいいかなぁ?」
梶にチェックをしてもらう義之。
「ええんちゃうか!」
適当な返事で返す梶。
混ぜ終えた撒きエサをバッカンに移し、車のトランクに乗せた二人は、目的の渡船場へと車を走らせた。
釣具屋さんから1時間ほどで、目的の渡船乗り場に到着した二人。
時間は5時30分。
「出船は6時だから、タバコでも吸いながら準備するか。」
梶はそう言い車からおりてタバコに火をつける。
辺りには、同じく釣り客と思われる人が沢山居た。
チーム名と、本人の名前が入ったライフジャケットを着た人も結構いる。
「あんなライフジャケットかっこいいなぁ。」
ぽつっと溢す義之。
そんな義之に気が付いた梶は、バシバシと義之の背中をたたき「釣りうまくなってからやわ。」と笑う。
装備の準備はこんな感じだ。
防寒ジャケットを着る。
ヒップガードを着ける。
ライフジャケットを着る。
あとは、帽子にサングラス。手袋をつけて準備完了だ。
「義之、ライフジャケットの股通し付けたか?」
梶に聞かれた〈股通し〉とは、海に落ちたさいに、ライフジャケットが脱げないように股の下から通す紐のことだ。
「もちろんですよ。さすがにボートとは乗ったことあるんで、それぐらいは知ってました。」
と笑い返す義之に対し、「OK」と梶は返す。
「渡船料はいつ払うんです?」
「場所によって違うけど、受付してその場で払うところもあるし、終わってから払う所もある。ここは終わってから払うところやで、帰りに払う感じや。」
渡船料金の精算は、予約のさいに確認することをお勧めします。
「お前が着替えてる間に受付はしてきたから、船に道具を乗せるぞ。」
梶に言われ、後を追う義之。
「結構重いやろ」と梶は笑いスタスタと歩いていく。
確かに、竿に道具ケースにクーラーにエサと、重量は嵩む。
義之の道具類すべてを合わせると約20キロぐらいになるだろう。
渡船で釣り行く時は、コンパクトにまとめて行くのが基本になる。手荷物が沢山だと、運ぶのが大変な上、他の同船者にも迷惑がかかるので注意が必要だ。
「車の鍵かけてきたか?」
「バッチリです!」
「もう船が出る時間や。海に落ちるなよ。」
とニヤニヤしながら梶は言う。
ドドドッっと船にエンジンがかかり、船が動き出す。
「今日乗る磯は、ここから20分ぐらいで着くからな。降りるのは3番目やで覚えとき。」
と梶は教えてくれた。
船が走り出した時から、義之のワクワク度は最高潮に達していた。
「どんな世界が待っているんだろう。」
周りの乗客もガヤガヤと楽しそうに話をしているのが聞こえてくる。
上り行く朝日に照らされながら、磯へと船は進む。
~恋を忘れ海に魅かれた者~ 珠洲樹義 @yoshiyukisan
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