夏の夜。
突然の失恋。――なぜ今日、「この日」だったのか。
呆然として帰宅する主人公・真紘くんを呼び止めたのは、近所に住む幼馴染の穂高くん。大切な大切な親友。一年のうち、たった一度しか来ない「この日」とはこの穂高くんにとって・また真紘くんにとっても重要な、ある特別な日だったのです。
本心とは裏腹に、初めてとった違う行動。彼を想ってついた嘘。傷ついて、修復して。誰にも邪魔されない、ふたりの少年の友情がとても心地よいです。
でも、一年後……その先の五年後、もっともっと先の十年後……二人の関係とは。これは読み手の数だけ無限に想像と可能性が膨らむはずです。でも、十七歳の今年はまだ……親友同士の、特別な日なのでした。
ステキな物語をありがとうございました。
前半での彼女とのシーンと後半での友達とのシーン。短いお話の中で二つに分けられた場面には、それぞれ別の良さがあるように感じました。
「正解にたどり着いたら、二度と恋愛なんてできない気がする」
彼女の心をいくら考えてみても正解なんてわからない主人公が吐露したこの想いには、突き刺さるものがあります。移ろいやすい女心に振り回される少年の葛藤がうまく表現できています。
対して後半のパートでは、友情が恋の傷を癒していくこと、恋のために蔑ろにしていた友情が自分にとって大切だったことを主人公が実感するという、前のパートに対する回答がわかりやすく提示されました。
穂高は主人公に対して友情以上のものを感じているのでは…と匂わせ、主人公もそれを察しているとすら思わせる描写でしたが、それも含めて青春のアンバランスさを強調する作品になっていると思います。
甘々なラブコメよりこういったややビターなもののほうが好きなので、読んでみてよかったです。ありがとうございました。