不幸が結晶のような美しい一瞬を放つ

素朴な少女はいかにして手首を切るか?少しずつ堕ちて行く生活の中で、リストカットの傷は生々しさよりもむしろ切実さを持つ。不幸な境遇の彼女達は、そこから滲み出した結晶のような美しさを見せた。中盤〜ラストシーンの場面のなんともいわれぬ透明さが素晴らしい。特に、最後の一文は彼女の未来を指し示すとともに、妙なおかしさがあってとても印象に残った。ただ、序盤〜中盤の少女の生活の描写がやや平坦。そこの描写にリアリティを持たせることができれば、少女が落ちて行く様はもっと身に迫り、ラストシーンの美しさはより透明さを増すだろう。