第5話 神に背く者

 その後、その家の周りで数人が病院に運ばれた。

 皆、認知症か精神錯乱、記憶障害だった。


 僕は怖かった。


 でも、身の回りに起きた異常な出来事が何なのか知りたかった。僕は隆一君の前に立っていた。


「君は一体誰?何のためにここにいるの?」


 手も足も震えていたと思う。でも勇気を出して聞いた。


「私は神に背く者ですよ」


「神に背く者?」


「そう、悪魔です」


「悪魔が何故ここに?」


「それは、食事をするためです」


「食事って」


 僕はその時思い出した。黒い巨大な影が噛みついていたのを。


「見ていたんでしょう?私の食事を」


 僕は頷いた。


「私は神に背く者。しかし、現世に存在を許されているんです。それはね。私の趣向と神の意志が何故か合致しているからなんですよ」


「それはどういう意味なの?」


「私はゴミが好物なんですよ。人の心に巣くう悪の心。神に背く背徳の精神。そんな心のゴミを好んでいただいているんです。ふふふ」


 不気味に笑う隆一君だった。悪の心を食べるなんて信じられない。


「私が怖いですか」


 僕は頷いた。


「ご安心ください。君の心が善良である限り興味が無い。でも、背徳の精神に満ちた時は」


「その時は」


「美味しくいただきますよ。うふふふ」


 笑い声を残しながら竜一君は消えた。


 それからすぐにその家は取り壊され、その後は何も起きなくなった。

  

 しかし、竜一君はどこか僕の知らない街で、誰かの心を食べているのだろう。


 神に背く背徳の精神を。


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その家には悪魔がいる 暗黒星雲 @darknebula

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