眠れない街

弓月 天

第1話

疲れているのに、眠れない。 疲れているのは、心だけなのだろうか。

平凡な日々に、楽しさを見出すことができなくなったのは、いつからだろうか。


そんな毎日に、鬱屈している。


それでも投げ出すことができないのは、ぼくの中の固定概念が、邪魔をするからか。


どこからか、声が聞こえる。

「眠れない夜は旅に出よう」って、どこかの曲の歌詞みたいに。

だから、両親の目を盗んで、布団から抜け出した。


外に出ると、中学生くらいの、大人びた目をした少年が立っていた。


「やあ、迎えに来たよ。」って、嬉しそうに。


「君は誰?」と尋ねると、

「おれが君にとってのスーパーヒーローになるか、不審者になるか、あるいは、ただの一夜限りの友となるかは、君次第、かな。」

と返答した。


月明かりの下を歩く。影はふたつ。客観的に見れば、ひとり。突き当たりで曲がる。そのまま、まっすぐと。ネオンなんて、今のぼくの気持ちには合わないから。


ぼくが君に語る。

「毎日が、どうしようもないんだ。何をしても満たされなくて。

この人生でぼくは、何を、、、成し遂げられるんだろうか。」

君が、ぼくに言う。丁寧に。

「そんなこと、おれに聞いたって、答えなんか出ないでしょう?」


そして君は、歌うように。嬉しそうに、こう言ったんだ。


「眠れない夜は旅に出よう こっそり布団から抜け出してさ 何も話さなくていいけどね ひとつだけ、約束して欲しい


夜明けまでには、帰るんだよ?」


君のその不敵な笑みは、ぼくを安心させた。


そしてぼくらは語り合う。


ぼくが君に話す。

「知りたくなかった事実って、いくつかあってさ。人間の、裏の顔とか。ぼくは真実を知るたびに、幻滅してた。でも今考えたら、そんなものに幻滅して、誰のためになるんだろうね。」

そして君はまた、丁寧に返答してくれるんだ。

「それは、君がその子を信頼していたんじゃないのかな?その子の何かに、期待していたんじゃないか?


君は言葉にこだわり過ぎだ。もっと、、、もっと、楽観的に生きても、よかったと思うけど?」

ぼくは何も、言い返せない。




あ、、、れ、、、?知らない街まで、来てしまった。ここからではとても、夜明けまでには家に戻れない。


「それでもいいや。」

それでもいい。

ぼくは本当は、望んでいたのかもしれない。

特に悔いとかはない。

あ、でも。

ひとつだけ、ある。


あの本の結末、気になるかな。




突然影が消えて

楽になった、、、のかな。


心が軽くなったのは


全てを失ったからかな。



日が、昇る。




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眠れない街 弓月 天 @ten_46

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