第41話 本物の君の気持ち

 私を見つめたショウの瞳に映るのは、ユウキじゃなくて、詐欺メイクのせいでユウの顔。

 ショウは大きなため息をつくと、私を突然抱きしめた。

「わっ」

 抱きしめられると思わなかったから、私は声が上がってしまったけれど。そんなことお構いなしに、ショウは私を抱きしめると、話し始めた。

「……子供の頃からずっと一緒だったから、いつのまにか傍にいるのが当たり前になってた。ずっとこのまま……友達として一緒にいるんだって思ってた。俺の部屋にきて、お気に入りのクッション抱えながら、ポテチつまみながら一緒にモンハンするみたいなのが……なんとなくずっと続くんだと思ってた」

 考えながら、話しているようで、ぽつりぽつりと話すショウの言葉は、きっと、本心なのだと思う。


 私が急にオシャレして、戸惑ったこと。

 服装も代わってしばらくして、急に自分が親友だと思ってる相手は、中身はあの頃と同じでも、俺と全然体格も違うし。普通の女の子だと気がついたことを話があちこちに脱線しながらショウは話してくれた。



「彼女ができたら……今まで通り会えなくなるなんて考えたことなかった。いろいろ考えたけど、上手く自分の気持ちがまとまんなくて。そんなときに、ハルキとの祭りを断ったこと知って。連絡してもつながんないし。なんかあったのかもって思ったら彼女の誘い断ってた」

 ショウはいつも優しかった。口では嫌そうにえーっといっても、絶対待っててくれるやつなのだ。

 だから好きになったんだけど、今日ばかりは、その無駄にやさしいところが恨めしい。


 そう思って、ショウの話を相槌も入れることなく聞いていたのだけど……

「告白されて、逃げるように走り去ったユウキを今追いかけなかったら、今日捕まえられなかったら終わるって思ったら。俺彼女いるのに……お前のこと追いかけてた……」

 待って、今のセリフは完全に自分に都合のいいように解釈してしまいそうだ。

 ショウの話を黙って最後まで聞こうと思っていたのに、私は思わず口をはさんでしまった。

「何言ってんのよ、それじゃまるで……」

 だって、それじゃぁ、まるでショウが私のことを好きだから追いかけてみたいじゃんか。




「そうだよ。好きだよ!」




 ずっと、ずっとショウに言ってほしかった言葉を本物の私が手に入れた瞬間だった。

 でも、そんなこと言われるだなんて考えたことなんか一度もなかったから、嬉しいとか以前に……

「嘘……でしょ」

 ってことが私の口から出てしまった。

「嘘じゃないから、こっちは悩んでたんだよ。一人としか付き合えないし。でも、俺彼女いたから。今更、ユウキのことが気になっても。彼女できてたことも相談してたし。彼女のことも好きだったし。言えるわけないって思ったのに……両方お前ってなんなんだよそれ。どんな落ちだよコレ。その顔いったいどうなってんだよ。俺、彼女に浮気を懺悔してるのか、親友に告ってんのかわかんねーよ」

 そういって、ショウは困った顔で笑って私にこう言ったのだ。



「幼馴染が今更好きだって気がついたけど、その幼馴染と彼女が同一人物だった俺は結局どうなんの?」

「そんなの、決まってる。なんの問題もないじゃん。だって、両方私なんだもん」

 私はそういって、ショウに抱きついた。



 ずっと叶わないと思ってた、私じゃショウのヒロインになれないとずっと思ってた。



 その後、鼻緒が切れていたからショウにおんぶしてもらって帰るはめになった。

 こんなところに一人できたら、危ないだろうとか……ショウは私をたしなめたけれど。

 私はそれどころではなかった。

 だって、だって嘘をつかなくても私が彼のヒロインになれたのだから。


 リサ姉には真っ先に報告した。私が帰った後、どうなったのか心配していたらしくて、よかったと何度も言われた。

 ユウのスマホは解約することになってハルキはお断りすることとなった。




 ショウは私のことが好きなのかって不安だったけれど。おんぶしてもらって帰る帰り道に……私はショウに私のことを好きかと聞いてみた。

「好きだよ」

 平然とショウはそう言ったけど、ショウの耳が赤くなったのを私は見逃さなかった。


 

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嘘の私が本物の君についたウソ 四宮あか @xoxo817

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