ごふんかんげきじょう
あきのななぐさ
それは、どういう意味ですか?
「ちがうよ! しんそのれいじょーだっていったでしょ! おにいちゃん!」
「ごめん……」
これをビール片手に見ると、一日の終わりを感じる。
二人がパジャマに着替えて、楓が風呂からあがるまでの約五分間の寸劇。
愛娘の雫と、兄の守の二人劇。
五歳と六歳とはいえ、守より雫の方が言葉をたくさん知っている。
まあ、この年齢ではそれが一般的だろう。
それにしても、雫。それは深窓の令嬢なんじゃないか? 真祖の令嬢だと、ちょっと意味が違ってくる。まあ、
いや、雫の場合ストライクだ。
楓に似て、雫は可愛らしいが攻撃的。深窓の令嬢よりも真祖の令嬢の方が面白いかもしれない。
「でね、しずくがたすけにくるからね。ちゃんとおにいちゃんはまってるんだよ」
って、守が令嬢?
「ああ、ゆうしゃさま。ぼく……じゃなかった。わたし? ねえ、しずく……」
「もう、おにいちゃんしんじらんない! そんなこともできないの? そんなんだから、まんねんひらしゃいんだっていわれるんだよ!」
おい、ちょっとまて?
なんでそこで万年平社員なんて言葉が出る? しかもその怒っている感じ……。
なんだかとっても見覚えがあるぞ……。
それ、俺に言ってるのか? なあ、そうなのか雫?
「よくわかんないけど、ごめん……」
ああ、パパはとってもよくわかるぞその気持ち。
「もう、おにいちゃんはしょうがないなぁ。いい? 『おほほ』ってつけないとダメじゃない!」
「わかった。おほほ?」
「うん、おほほ」
「おほほ」
そこか?
守が聞きたかったのはそこなのか? 守もなんではっきり違うと言わない?
『おほほ』でいいのか? パパは『とほほ』に聞こえるぞ?
「おほほ、ゆうしゃさま、おほほ?」
「もう! おにいちゃん! しっかりして! そんなやすげっきゅう。しずく、こじゅーとうをたおせないよ!
ちょっとまて! なんで小姑? 倒す? なんで、安月給が出てくる?
「もういいよ! ボスとたたかう。こじゅーとうはやっつけたぞ! はやくすがたをあらわせ! まおう、おにばーば!」
しょぼいな、小姑。
まあ、何にせよ、やっぱりラスボスは鬼婆か……。俺、何も聞いてないからな。
「わっはっは! よくきたな、ゆうしゃ!」
忙しいな、守……。文句言われても、よくやってる。えらいぞ。
「…………なんか、ちがうきがする。おにいちゃん! ちょっとそこにすわって!」
おいおい、いきなり説教か? 守は何も悪くないだろ?
「いい、いきなりよばれてでるボスなんて、やすっぽいよ? かんがえてよ」
「……。わかんないよ」
「もう! げんかんあけて、いきなりこわいのがいたらやでしょ?」
「うん」
「だから、げんかんあけるのは、こわくないほうがいい。パパみたいに」
「そっか、パパか。でも、パパはいいの?」
「そんなのダメ! じゃあ、よっぱらいーでいいよ! しずくきらいだし」
えっと……。
「あらあら、楽しそうね。私も嫌いかな。酔っ払い」
なんというか、色々ごめんなさい!
ごふんかんげきじょう あきのななぐさ @akinonanagusa
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