真相
「いやぁ〜流石だね〜。これだけの説明で理解したのはジョブズ、君が初めてだ。さぁ、もう一杯もう一杯」
「それは光栄だ。それと、この電球の発明の時なんですがね、どうして糸を使おうと?」
「ふっ、あれかい。いや〜あれはだね〜、…………」
人類史上最高の発明家と、人類史を今まさに変えていく近代最高の発明家の談義は両者共に非常に有意義なもので、ジョブズを夢中にさせるに十分なものだった。故にジョブズは忘れていたのだ、ここは自分の夢の中であってそれに夢中になるはずがないことを。
「ところでジョブズ、死因は?」
「……………………えっ!?」
「ん?」
「え?」
「なんだい、分からなっかたのか。ここは死後の世界だよ。多分な」
「どういうことです?私が死んだと?いや、そんな筈はない。ここは私の夢の中だったはずだ」
「あ〜〜〜知らないパターンね。そういう時もあるんだよなぁ。ともかくジョブズ、ここは死後の世界だ。残念だけどな」
「うるさい!そんなことは信じられない!私は戻る、絶対にだ!今日だって起きたら大事な会議がある!ちょっと変わってて、長めの夢だ!そもそもなんの証拠があるというのか!科学者としてそんな非科学的なことを信じられるものか!」
「ちっ、たまに知らない奴に教えるとこうなるんだ。特に科学者連中は頭が固くて、固くて本当に面倒くさい」
ジョブズは久々に動揺し、焦っていた。自分がアップル社から追い出された時でさえもう少し落ち着いていた。それ故、人類最高峰のその頭脳はいつも通りの働きは出来ていなかった。
「私は死なない!絶対、絶対に生きて帰る。そしてアップル社に戻る!」
ジョブズは額を思い切り壁に打ち付け、ビール瓶を割りそれで自らを切りつけ血を流し、な感じるはずない痛みを感じ、それでも無我夢中で傷を増やしていった。
「やめたまえ。全く、実に無意味だ。それも、おいトーマス。君が論理性に欠ける説明をしたからだろう。まず物事というのは順を追って確実に他者に伝えなくてはならない。その際、誤解を与えるようなことは後に回して一番理解しやすくかつ……………」
「あ〜、名探偵さん。そろそろバリツ解いてやらねぇと、ジョブズの奴もう一回死んじまう」
「ホームズ。もうやめた方がいいぞ。腕が変な方向いてる」
「おっと。これは失礼を。怪我はないかね?いや、これは怪我だらけだったな。とりあえず医療箱を持ってこようかな」
「おい、待ってくれ。私はジョブズ、スティーブ・ジョブズという者だ。あなたはまさか……ホームズか?」
「はは、ご名答だ。私こそが稀代の名探偵、シャーロック・ホームズだ。君は現代の革命児と言われているそうだが、観察力も充分にあるようだね」
———ホームズが仲間になった———
「ちょっと待ってくれ。いや、待って下さい」
「いやぁ私に敬語はいいよ。なにせ私は実際に存在する人間ではないのだからね。いや、そもそも死後の世界である以上ここにいる者は存在しないのではないか。しかし、実際こうして喋り意識ある者としてここにいる。というならば存在して……」
「全くだ。ホームズに敬語はいらないぞ」
「ちょ、そうじゃなく。いやそれも重要だけど、とりあえず待って。ここが死後の世界ってどういうことです?それに、どうやって来た?何故分かった?それに戻れるのか?」
「まぁそう急くな。事態は既に起こってしまっている。逆に言うと焦っても仕方がないということ。とりあえずはその傷を治すことが第一だ」
「僕もホームズの親友として、この世界に早く来た先輩としてそう思うぞ」
「って訳よ。まぁ俺自身分からないこともあるけど、とりあえず話しは後にしようぜ。電球だって、蓄音機だってゆっくり研究に研究を重ねて発明したんだしよ!」
「はぁ、分かりました。じゃあ一つだけ聞かせて下さい。さっきからずっと隣で喋ってる人って誰です?」
「失礼な。ワトスンだよ。ホームズの親友兼助手、ワ・ト・ス・ンだよ」
「「あ、いたんだ」」
「おぉぉおおおーーい!」
———ワトスンが仲間になった———
ドリーム・ワールド 永風 @cafuuu
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