花火(二人前)

ヤンバル

花火(二人前)

「田代もキレ過ぎだよなー」


 ガムテープで縛られた腕を空しく動かす。

 いや、動いてないんだけどね。


「なあ、ごめんて」


 隣に座っている瀬田に話しかける。瀬田も俺と同じように両手両足を椅子に縛り付けられている。その椅子は教室の床に溶接されていて動かない。

 やりすぎだ田代。


「ごめん」


 瀬田は何も言わない。瀬田は口をガムテープで塞がれている。俺には無いオプションだ。


「ほんと、ごめん、まじで」


 瀬田は何も言わない。目線すらくれない。俺に横顔を見せつけたまま、正面を見つめている。

 首はフリーなんだから、こっち向けよ。

 誰も居ない教室に男子生徒が二人と時限爆弾が一つ。爆弾はデジタルに表示された数字が0を迎えると爆発するやつ。


「瀬田、ほんとごめん。もうやらない!まじで!」


 つか、どうせ死ぬし。


「瀬田!」


 瀬田は何も言わない。目線すらくれない。


「ごめんて!」


 瀬田の白い肌に赤みがさす。やばい、まだ怒ってる。

 仮に口を塞がれてなくても瀬田は口を開かない気がする。デジタル表示が正しいのなら俺たちの命は残り10秒だ。


「喧嘩したまま死ぬとか嫌じゃん」


 瀬田の顔がどんどん赤くなる。


「・・・本当にごめん、」


 瀬田の”その椅子”は溶接されていた。俺のは違う。

 俺はその気になれば椅子ごと逃げれる。よくやった田代。


 あと5秒。


 どうせ結ばれないのだ。せめて一緒に死のうよ、瀬田。


「瀬田、本当にごめん」


 瀬田は何も言わない。


 あと1秒。

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花火(二人前) ヤンバル @yanbaru9

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