和の色にあふれた繊細な筆致と、丁寧に織りあげられた世界観が魅力の、和風異世界ファンタジー。主従ものが好きな方も必読です。
詠姫と呼ばれる優しい少女と、彼女を守る付き人の少年。彼らが仕える場所で起きた凄惨な事件は、二人を巻き込みながら国を揺るがす勢力争いへと発展していきます。
未来を憂い、自分たちがなすべきことを探るうちに、二人ははるか過去に纏わる哀しい伝承を知っていくことに。
語彙豊富で美しい表現に彩られた物語は和風の雰囲気を醸しつつ、架空世界の歴史を丁寧に編み上げていきます。
人の心と伝承の重さ、未来を切り拓く願いの強さと、若さに宿る希望と。
時につらさを越えつつも、絆を深める二人の姿を応援せずにはいられません。
和風ファンタジーが好きな方、歴史ものが好きな方、一途な恋愛ものをお探しの方、ぜひご一読ください。
本作を語るにあたって、色彩の豊さ、鮮やかさを外すことはできない。
衣服に対する造詣の深さからくる、人物がまとう伝統的なかさねの色目の美しさ。
豊かな色彩感覚からくる、舞台の隅々にわたる様々な色彩表現。
時に明るい昼の世界、時に濡れたような漆黒。春の青葉。冬の白と黒。
やがて巧みに、緻密に語られる世界観に引き込まれるにつれ、空気にすら色を感じる。
それぞれの情景描写が混然一体となり、強烈な鮮やかをもって読み手を物語に引き込む。そうなれば、もう一気に読み進めずにはいられない。
これこそが潮風凛の世界。
そうなるともう止まらない。
綿密におられたストーリーと魅力的な登場人物たち。
彼らが織りなすしっとりとした蠱惑的なこの物語はあなたをたやすく掴み、
そして離さないだろう。