第2話 ~出会い~

 「──息抜きして来いって言ったって・・・」

私は、一度テンションが上ったあと、少し頭が冷え、

何をすれば良いのか、考えながら街へでかけた。

「そういえば、最近、新しいカフェが出来たって、優香が言ってたなぁ。

 今日、優香、予定あいてるかな・・・」

優香とは、私の小学校からの友人で、矢田優香(やだ ゆうか)の事。

電話をかけてみる──が、応答はない。

それもそのはず、今日も優香は仕事があると言い、

昨日の飲み会にも参加していなかった。

「やっぱり、忙しいんだなぁ・・・」

結局、一人でカフェに行くことになった。


 「──あっ、優香が言ってたカフェってここかな?」

街へ出てから、5分ほど歩いて、見つけたカフェは、

優香が送ってきていた店名と同じ名前。

「きっとここだよね!」

そういって、中に入っていった。

中は案外いい雰囲気だ。

店員さんに、パンケーキを頼む。

──少し待ったら、美味しそうなパンケーキが来た。

これは是非写真を取らねば!!

──はっ! 駄目だ駄目だ!

こんな恥ずかしいとこ、とても人に見せられない・・・

私はそっとパンケーキを口に運ぶ。

!!これは!!

「おいしぃぃ~! ・・・はっ!」

つい私は大声を上げてしまっていた。

周りの人の迷惑にならないよう、小さく頭を下げ、もう一度頬張る。

あぁぁ・・・、やっぱり美味しい・・・。


 「──はぁぁ、美味しかった・・・」

私は会計を支払いに行く。

「パクっとパンケーキが一点で、千二百円です」

レジで、イケメンな店員さんが金額を出す。

──それにしても、何処かで見たことが有るような・・・

「じゃあ、一万円から。 あ、あと・・・」

店員さんは、一万円を受け取った後、こちらを見た。

「なんですか?」

店員さんが問う。

「あ、あの・・・、どこかで、私とあったことありませんか?」

さすがに、知ってる人じゃなかったときのことを考えると、

声が震えてしまう。

「え・・・」

店員さんが戸惑ったような表情を見せる。

「あ・・・、やっぱり、知りませんよね。すいません・・・」

私が帰ろうとすると、店員さんが呼び止めてきた。

「あの!」

その声に、私は振り向く。

「もしかして・・・、明日香か? あの、都立第三小の。」

「そうです!明日香!須藤明日香!」

やっぱり、どこかで会ってたんだ!

「俺のこと、分かるか? 都立第三小で、お前とずっと同じクラスだった・・・」

「もしかして・・・、佐嘉田悠希(さかた ゆうき)?」

「そう!佐嘉田!やっぱ覚えててくれたんだな!」

「覚えてるも何も、ずっとクラスが一緒じゃあねぇ・・・。」

まぁ、ずっとクラスが一緒だと、覚えていないわけがない。

「え~、佐嘉田ここで働いてたんだ~。」

「まぁ、もともとカフェとかが好きだしな。

・・・ここだと、他のお客さんの邪魔になるし、

外で話さないか?」


 「──いやぁ、それにしても、あの佐嘉田が、

こんなところで働いてたなんてね~。」

「どんだけそれ言うんだよ? ・・・てか、お前、仕事は?」

「あ、今日は休み。」

「そっか。」

「うん。」

ここで私達の会話は途切れてしまう。

何話せばいいの?!

「・・・じゃあ、俺、そろそろ仕事戻るわ。」

「あ、うん・・・」

なんでだろう、佐嘉田と離れるのが、少し嫌なのは・・・。

「ね、ねぇ!」

呼び止めると、佐嘉田は振り向いて、なんだ?というような顔をする。

「佐嘉田の連絡先とかちょうだいよ・・・。」

そういうと、佐嘉田はふっと微笑んで、懐から一枚の紙を取り出し、

私に渡す。

「俺の名刺だ。 メールアドレスとか電話番号とか、全部書いてるから、

 それみとけ。」

「あ、うん、ありがと!」

その言葉を聞き終わると、佐嘉田はまた店の中に戻っていった。

佐嘉田が渡してくれた名刺は、なぜかホッとするような、

そんな感覚だった。

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辛い時でも上を向け 黒鳥 -Kurodori- @kurodori39

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