第5話

…フミオは立っていた。

たった一人で。だれもいない、静かな海。

…手には…

手には、リボンのついた、麦わら帽子。

「ああ…!」

フミオは空を見上げた。

海の上の、大きな入道雲。

フミオはその雲の向こう側に、大きな声で呼びかけた。

「おおい、お前!僕の弟‼︎

また今度、次は、次はみんなで!

お父さんと、お母さんと、待ってるからなぁ!」

……キューイキューイ……

入道雲の向こう側から、イルカたちの鳴き声と、あの子の翼のきらめきが届いたような気がして、フミオはすっきりと微笑んだ。

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七月のイルカ 青羽根 @seiuaohane

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